ボウゼンと立ちつくす、ボクチンの背中をバンッ!!と
叩いたのは、たまねぎさんだった
「ドクロッチー しっかりしないと!」
「これからがドクロッチの見せ場じゃない!」
「で、でも ど、どうしたら?」
「キノコ人間が多すぎて、とてもステージまで・・・」
ボクチンは動揺して、声を震わせる
「だいじょーーーぶっ!」
「そういう時のために、なんちゃんが とっておきを連れてきてくれたんだから!」
そういうと、たまねぎさんは、左手に抱えていたものを
ボクチンの目の前にかざしてみせた
「とり・・・かご の カナリヤ? えーと・・・これ?」
「そう!」
「この子はね「妖怪語り部」のメンバーのなかで、一番すごい力をもっているの!」
「むかし、その力を狙って悪い組織が、この子を捕まえようとしたから」
「修行時代のなんちゃんが保護して、悪い奴に見つからないように姿を変えて、かくまったのよ」
ボクチンは、たまねぎさんが何を言っているのか よくわからず
「ハ、ハア・・・」と うなづくしかなかった
たまねぎさんは、かまわず 鳥かごをボクチンにもたせて
「いい?」
「いまから、カナリヤさんに出てきてもらうから、そしたらドクロッチは」
「カナリヤさんの背中に乗せてもらって、ステージまで飛ぶのよ!」
「ハ・・・ハア?」
もう、なにがなんだかわからない
この握りこぶしより小さな 可愛い小鳥に・・・乗る?
たまねぎさんは、やはりボクチンに構わず
鳥かごのふたをあけ
カナリヤがびっくりしないよう、ゆっくりと手を入れる
すると、カナリヤはピョン!とたまねぎさんの指にとまる
「この子の本当の名前は『メリッサ』っていうんだけど」
「いろいろな呼び名で呼ばれてきたの」
そ~っと 鳥かごからカナリヤをだしながら
たまねぎさんは、つづける
「世界中で、いろんな名前で呼ばれているんだけど」
「日本では、こう 呼ばれているの」
たまねぎさんの、高くかかげた指から カナリヤが羽ばたき 飛び立つのと同時に
たまねぎさんは言った
「火の鳥!!」
小さな黄色のカナリヤは、飛び立つとともに光を発した
その光は、とてもやさしく 温かさを感じるものであった
暗く、殺気が渦をまくようだった武道館ホールの中に
まるで、優しい太陽が昇るように感じた
光の中・・・カナリヤはゆっくりと、その姿をかえていく
光がおさまり
ボクチンの前に優雅に降り立った、その姿は
やわらかく光り輝く 美しい翼をもった
大きな
とても大きな
見たこともない鳥であった
瞳は海のように深い青色で
きよらかな笑みを浮かべているような印象を与える
「そ・・・そんな 火の・・・火の鳥だなんて・・・」
その美しい鳥の出現を見て
一万人のキノコ人間は、いっせいにこちらに注目し、向きを変えた
「ドクロッチ、いそいで!」
と たまねぎさんに背中を押され
ボクチンは、姿勢をさげて待っていてくれている
メリッサの背に乗った
たまねぎさんは、なんさんに渡されたホウキを
まるで、堺まさあき扮する孫悟空 のようにぶううううん!!と回転させると
「部長やなんちゃん、ミコシさんのことは、私に任せて!」
「指一本たりとも キノコに触れさせやしないから!」
「ドクロッチ!がんばるのよ!!」
その声を待っていたかのように
メリッサは、ボクチンを乗せて飛び立った

美しい翼がおこす風が
羽音が
あたたかい体温が
ほほをくすぐる、羽毛が
ボクチンをやさしく包み込む
ボクチンは
なんさんが魔法で天井にあけた、あの穴から
ともに飛び立って
メリッサの羽の一枚になって、どこまでも飛んでいきたい
そんな気分になった
だが、それもつかの間のこと
ボクチンたちは、あっという間にキノコ人間の頭上をこえ
ステージに
機械がうごめく
そう、奴が待ち受ける
あの闘いのステージに
舞い降りたのであった
つづく
いよいよ ごりっぺ対ドクロの戦いが始まる!
ドクロは、主人公としての由縁を見せつけまくる! のか!?
次回
「残酷な天使のテーゼ」の巻き
お楽しみに!
注・・・次回のタイトルはデタラメです