ステージの床下から、せりあがってくる『機械』の姿を見て
ボクチンは、思わず息をのみこむ
縦横に、はりめぐらされたコードやパイプが、あちこちからケムリをはき、火花をちらす
点在する計器類は常に、その針を左右にゆらし
その姿は、まるで生き物の内臓のようにみえる
とりわけ目をひくのが、その中心部だ
チベット仏教の仏具「マニ車」のような
円柱状の物体が3つ、縦にかさなり
それぞれ独立して、別方向に回転している

その表面には、どのような規則によるものかは分からないが、なにか幾何学的な
模様のレリーフが、うすく光り輝いている
そして、その下にあるコンソール部分は、荘厳な意匠をあしらったパイプオルガンのような形状をしている

そのオルガンの前に置かれたイスに、静かに座る女・・・
あれが・・・
ニジさん・・・か?
女は、漆黒のドレスに身を包み その背中は微動だにしない
「カナさん!!」
部長が叫び声をあげる
それをきかっけにするように、女は髪をふりみだし
まるで、ピアニストが演奏するように
『機械の』作動キーの鍵盤を叩き始めた
『機械』の内部を
幾重ものプログラムが
膨大なエネルギーがかけめぐり
そして・・・
発動した!!
眼には見えない
だが
悲しみを 怒りを 憎悪を孕んだ
因果の波動が、ゆっくりと機械から放射されていく
波動は、ひろがり
身動きしない観客たちをのみこんでいく
「カナさん!!」
「やめろーーーーーーっ!!」
部長の声が むなしく響くが
とまらない!!
『機械』から放射された、あらゆる感情の波動を受けた
観客たちは、高圧電流に感電したようにビクリ!と体をのけぞらせ
いきなり
変異をはじめた
そう・・・
キノコ人間に!!
みるみる
ステージから、ボクチン達に向かって
何十、何百、何千という人間たちが、その姿を
おぞましいキノコ人間にかえていく
ばかな・・・・力を手に入れるための機械じゃ、なかったのか!?
そして
そのキノコ人間化の波は、どんどんボクチン達の方へせまってきた
「ぶ・・・部長!!」
「ど、どど どうしたら!?」
ボクチンは その恐ろしい光景を見せつけられ、恐怖のあまり部長にすがりついた
「部長 がんばってね」
なんさんが冷静に言うと
それをうけ、部長は一歩まえにでる
「まかせて・・・みんな、ぼくから あまり離れないようにね」
と言うと
部長は、右手をゆっくりとさしだし
ぽつりと小さく 言った
「ペイントブラック」
ブウウウウウウウン!

部長のスタンド「ペイントブラック」が現れる
ランプの目をらんらんと輝かせている
「ノーカラー エニーモア!!」
部長の叫びと共に
スタンドは、手に持っていた 大きな「筆」を
凄まじいスピードで、振りまわし始めた
「ウウウウバッシャアアアアーーーーーッ!!」
部長のスタンドの能力は、あらゆる種類の感情を生み出し
対象にぬりつけるというものだが
もはや
「ぬりつける」を超え
「はなっ」ていた
たちまち、部長本人とボクチンらを包み込む バリヤのように
スタンドが発するエネルギーが展開した
『機械』から発する エネルギーの波動と
部長が発するエネルギーのバリヤーが、ぶつかりあう!
「うおおおおおおおっっ!!」
スタンドだけでなく
部長 本人も雄たけびをあげ、能力を放ち続ける
キノコ人間化の波は、ボクチンたちを包み込んだが
完全にせき止められた
それを見て、ごりっぺは つぶやく
「お嬢さんが、生み出し『機械』が増幅した感情のエネルギー・・・マガツヒ・・・」
「ペイントブラックが生み出す、感情のエネルギーをぶつけることによって」
「中和した・・・」
「だが、これは想定の内」
「これで、厄介なペイントブラックの身動きを封じることができた」
「本番は・・・ここからだ」
「次の・・・これは・・・どう対処する?」
『機械』が放つ まがまがしい感情のエネルギーの暴風雨が
M王町武道館を完全に包みこんだ時
ごりっぺは、ステージ中央に置いてある マイクスタンドへ向かい
マイクを手に取ると
ボリュームを最大にして、叫んだ
「さあ、起きろ!!」
「虐げられた者たちよ!!」
「君たちが憎んだ、力 持てる者たちを叩き潰せ!!」
「ゆけっ!!」
ホール中のすべての
人・人・人が立ち上がる
その姿は・・・あの
あのおぞましいキノコ人間であった
M王武道館メインホールに集まった
ほぼ、すべて人が変態を終え
「ウウウウウウウウウウ!!」
「オオオオオオオオオオ!!」
およそ・・・
一万人の
あらたに生まれたキノコ人間が
いっせいに雄たけびをあげ
ボクチンたちに殺到してきたのだった!
つづく
次回 絶対絶命の窮地に!
「一万人のキノコ人間VSチーム「なんと」」の巻き
お楽しみに!