ここのところ、とある部下に組織の作り方やマネジメントについて教える機会を持つようにしている。というのは半分嘘で、厳密には、自分が勉強したこととか見聞きした話とか経験したことを冷めないうちにアウトプットすることで自分の学習の一環としている。(昔からこういうスタイルが自分にとっては最も学習効率がいい、この手のブログ書いてるのも同じ理由)
で、以前まったく別の業界の人(管理者ではなく現役の営業マン)と飲みながら話した仕事の話がとても興味深く、脚色なく聞いた話そのまんまがマネジメントにおける典型的で美しいケーススタディみたいな内容だったので、後日そのまま部下への課題として出してみた。
で、提出されたものもそれっぽかったので無修正でそのまま掲載する。
課題
この事例について説明して
------
元支社長:A
- グイグイ現場と直接コミュニケーション取るタイプ
- 感情盛り上げてやるタイプ
- 即断即決で色々決めてどんどん話進める
- 人を乗せるのが上手、盛り上げ上手というタイプ
現支社長:B
- 現場とはほとんど直接コミュニケーションとらない
- いわゆるガチガチの組織マネジメントをするタイプ
- 直下の部下(ここでは、支店長)とのコミュニケーションは密にとり
- 基本的な目標管理をしっかりやるタイプ
入れ替え人事の結果、何が起きたか。
- AとBの入れ替え以外の体制変更はなかったにもかかわらず、Bになってから支社全体の業績がめちゃくちゃ上がった。Aの時代は低迷、停滞だった。
- Bになってから現場の仕事のモチベーションがすごく上がった。
- Bになってから、支店長の動きが激変した。ちょっとした会話も、以前はたわいもない世間話がメインだったものが、あの案件どうなった?今月の数字はどう?というような話がメインになった。
- Bになってから、支店長の現場状況の理解度が格段にあがった。感覚としては、以前は2~3割くらいしか把握してなかったように見えたが、最近は8割以上把握できている。
- Aの時代は、支店をまたいだ交流があった。調子のでないある支店のスタッフを、調子のよい別の支店のスタッフにあてがって情報交換する、などをやっていた。それは好評だったが、それがBになってなくなったことに対してちょっとした喪失感があり、残念に思っている。ただ、業績は上がったし仕事へのモチベーションも上がっている。つまり、無駄な仕事だったことが分かった。
回答
支社長Aの課題
Aは支店長への権限・責任・業務委譲ができていなかった。Aは一見良い人そうで一緒に働くと楽しそうに感じるが、支店長に与えるべき裁量を与えずに自ら動いてしまっている。
それが支店長の責任意識を阻害し、現場理解を低くしている。結果、それがスタッフの支店長に対する2、3割程度しか現場把握していないという所感につながっている。
>・グイグイ現場と直接コミュニケーション取るタイプ
コミュニケーションコストを高めている。スタッフからすると支店長と支社長とで船頭多くして状態。ただ支社長が直接盛り上げてくれるというところでモチベーションだけは高く、効率はしかし悪いので成果は出ないという状況を生んでいる。
支店長目線でも自分の仕事範囲に侵入されており、やりにくい。というか自分の仕事・責任の範囲が曖昧な状態になっている。
>・感情盛り上げてやるタイプ
感情は起伏やリズム、移り変わりとムラのあるものなのでこれをエンジンにするのは不安定。
>・Aの時代は、支店をまたいだ交流があった...つまり、無駄な仕事だった
Aはコミュニケーションを無駄に生みたがる傾向にある。
手段が目的化しており、この場合における「支店をまたいだ交流」は、「調子の出ないスタッフの調子を上げる」という目的を達成はしていたかもしれないが「全体の業績を上げる」という本来の目的のために他にもっと効率の良いやり方があったという事。
なぜ支社長Bは成果を出せるか
Bは組織をきちんと機能させたので成果が出せた。
Bは必要最低限のコミュニケーションを直下の支店長と取り、目標管理などをしっかり行った。
そのため、支店長、以下スタッフが自律してそれぞれの力を100%無駄なく発揮できる環境を構築できていた。
支店長Aはどうするべきか
組織論や集団心理に関する知識をつけるべき。
人柄に関しては魅力的に見えるが、その人柄の良さにあぐらを欠いて具体的なマネジメントの方法論などに関する研鑽に欠ける。
この寓話から得る教訓
大きな組織になるほどに個々人が無駄なく力を発揮できる仕組みや方法論などシステマチックな部分がきちんと整備されているかどうかの影響が大きいということが分かる。
自分も組織論・集団心理などの科学的な部分はチームが大きくなる前に知識として入れていきたい。
------
※耳が痛い
関連記事:責任の所在を明らかにする、その人に裁量と権限をもたせる
最後に、自分の補足
なぜ現場の「モチベーション」に変化があったのか?については回答内で触れられてなかったので。
ここからは想像でしかないけど、話をそのまま文字通り受け取るのであればAとBの時代で「モチベーション」の示す方向にそもそもちょっとした差があって、
A時代にあった「モチベーション」: 職場が楽しい
B時代に生まれた「モチベーション」: 仕事に集中できている
という感じで、すなわち「前と比較してモチベーションが上がった」のではなく、「仕事に対する純粋なモチベーションが芽生え、それが維持されている」ということなのだろうと思われる
※これ系のスタンスは自分のなかではとてもはっきりしているのでついでに書く
意義のありそうな仕事を任されていて、自分がやるべきことがはっきりしてて、それに集中できる環境があって、よい成果が出せて、それがちゃんと評価されるような仕組みがあるのなら、どんな内容だって仕事は充実したものになるしやってて自然と楽しくもなるだろう、少なくとも「自分以外の要因でモチベーションが下がる要因が1つもない」といえる状態であろう、だからその状況を生み出して維持しよう、というのが「個人のモチベーション管理」なるもののほぼ全てを表すものとしてよいという考えであって、「モチベーション」なるものについて何か手を打たないといけない状況なら↑のどこに問題があるか考えてみてはいかがだろうか
中でもとりわけ多く発生しがちで対処が難しいのが「仕事に集中できている=余計な阻害要因がない」の状態を維持することで、たとえば上司部下とか同僚との人間関係が不安だとか、お客さんに怒られたのが尾を引いてるとか、あっちの事業部はこうだとか前の会社ではどうだったのにとかみたいな情報による刺激とか、仕事内容関係ないところも含めてとにかく阻害要因なんてのは日常の中にゴロゴロ転がってるので、上司はとにかくそれを取り除くことに集中する、というのが比較的手堅く近道といえるアプローチだろう
逆にそれらに全く該当しない問題はそもそも「モチベーション」ではないところの課題として扱えば良い(モチベーションの問題ではない問題をモチベーションの問題として取り扱うと悲劇しか生まれないので気をつけよう)
※長くなったので今度やっぱり別の記事でまとめよう
