責任の所在を明らかにする、その人に裁量と権限をもたせる | 五反田ではたらく取締役のアメブロ

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ナイル株式会社という会社の取締役です。Webに関わる仕事と経営に関わる仕事をしています。

これだけ見ると誰がどう聞いても「そんなん当たり前だろ」ってなるコレ。

長くやってて規模もあってしっかりしてる会社はそのへんはっきりした仕組みがあるんだろうけど、成熟してない会社でこれをしっかり成り立たせてそれを維持するのは色んな理由で工夫が必要だったり大変だったりする。

例えば、色んな会社でよくありそうなこういう感じの体制。


※縦列は実務におけるユニットで、業績等に関わる成果目標と、実務における指示命令系統を担う。横列が各人の配属部署として、主にヒューマンマネジメントを担う。

 


縦横列で意思決定なりマネジメントが発生するこの組織体系。自分も2年くらい前に似たような体制でやってたことあるけど、どうするのが正解なのかよく分からんてなったことも結構あった。



この体制の一長一短。

  • 期待したいメリットは主にプロジェクトの機動力とヒューマンマネジメントの妥当性の共存。
  • 想定されるデメリットは主にコミュニケーションの煩雑化とダブルスタンダード問題。


この体制におけるこのデメリットがなんの対処もされず放置されている状態であると、デメリットがそのままデメリットである上に、メリットがほとんど享受できずむしろ逆効果にすらなり得てしまい、全く旨味がない体制になる。

なので、それを起こさないためのルールが必要となる。


この縦横2列体制でルールが曖昧だと、例えば、こんなことがおこる。例がイメージしやすいように具体的に時系列で書いてみる。

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プロジェクト(縦)内で議論を進め、合意が取れ、プロジェクトリーダーの責任のもと決定されたものごとがあり、それを実現するための仕様を決め、スケジュールを立て、いざ開発という状況にあった。

その後、それらの決定事項に対して、開発メンバーが、開発部(横)のマネージャーから「そのアプローチでは良くない。やり方を変えるべきだ。そもそも今からやろうとしていること自体を根本から見直す必要があるかもしれない。あとから変えるのでは遅いから、すぐに見直し案を発議しなさい。」と言われた。

そのメンバーは、「上司の指示だから無視するわけにはいけないけど、今さらそんなこと言われてもなぁ、、」と困惑しながらも、「上司の○○さんからこういう風に言われたのだが、どう思うか。」とプロジェクトメンバー全員に相談した。

プロジェクトリーダーは、「いや、もう既に仕様も決めたしスケジュールも立てたしこのまま進めないと間に合わない」と言った。

しかし他のメンバーから「でもその○○さんの言っていることはその通りだ。確かにあとから変更するのは難しいので、スケジュールを変更してでもいま見直すべきだと思う。」という意見があがった。

プロジェクトリーダーは自分が所属するマーケティング部においてはメンバーであるため、マネージャーの意向を尊重し、メンバーの意見も考慮しつつ、不本意ながら「では、改めてミーティングを開いて、この件について議論しなおそう」とした

結果、異議をとなえた上司からのアドバイスをもとに仕様とスケジュールを変更し、その流れで開発を進めた。その結果として、スケジュールは2週間ほど遅れたもののなんとかギリギリで想定していた目標を達成することができた。

 

-- [ ここまで ] --


こんな感じ。


で、達成したのになにが問題なのか、というと、たぶん色々問題がある。

むしろ、なまじ達成したぶん、問題が問題であると認識されづらく、なおさら厄介に思える。しかも、関係者はおそらく全員「よりよい結果を出すために」という意思のもと行動したはずで、誰にも悪意はなかった、という点がより一層このへんの良し悪しの判断をややこしくしそうだ。


結論から言うと、こうした出来事からは十中八九、悪い結果が生まれる。いくらかパターンはありそうだが極端な感じでいえば大きくこのような感じに分けられるだろう。


[結果1]
1.良さそうな意見であれば、誰でも決定事項に対してあとから異議を唱えても良い、という誤解が定着する
2.リーダーの意思決定が効力を失い、プロジェクトに関わる最終意思決定者が誰なのか、次第に曖昧になる
3.プロジェクト内で失敗が発生したときに、プロジェクトリーダーを含め誰も責任を負おうとしなくなる
4.むしろ、全体的に他責や批判などプロジェクトにとって建設的でない感情や姿勢が生まれる
5.メンバー間の関係が悪化し、コミュニケションがちぐはぐになり、チームのパフォーマンスが低下する
6.それを改善するためにプロジェクト外からマネージャーがなんらか介入するなど無駄なコストが生まれる
7.関係者を増やすことはこの場合の解決策にはあたらず、組織全体で更にパフォーマンスが低下する

[結果2]
1.プロジェクトリーダーから「あとから言われるのはこまるから、最初から言ってほしい」と要望が入る
2.開発部のマネージャーから「であれば、プロジェクトから情報共有をこまめにしてほしい」と逆に要望が入る
3.「各部署のマネージャーに、プロジェクトの決定事項やその背景、進捗状況についてこまめに共有し、問題があれば事前に介入してもらう」というルールの需要が生まれる
4.それにより、ミーティングの数と報連相などのコミュニケーション量が増える
5.プロジェクトの速度が落ちる
6.1人1人が処理しなくてはならない情報量と対応しなければならないコミュニケーションが肥大化する
7.マネージャーが扱う情報が増えて判断の精度や速度が下がるのでコストに見合う分クオリティが上がるわけでもない

8.全体の生産性が落ちる

[結果3]
1.結果1と結果2の合わせ技でものすごいグチャグチャになる。


※書いてみて思ったがおそらく結果3が一番多いのではないかと考える。


これは縦横2列体制の例を挙げたが、多階層化された組織においても同じようなことはおこる。

目標は達成したが代償としてこのような状況が生まれる、はおそらくどんなフェーズであっても総合的にコスパが見合わないだろう。


したがって、こういうのを個別のコミュニケーションの失敗事例とするのではなく、こういうことが誰に悪意があるわけでもなく起こり得てしまい、かつそれを誰も「良くない」とはっきり言えないない状況にある、という課題と捉えるべきだ。


この図のケースで必要なルールは例えば

  • プロジェクトリーダーをプロジェクトにおける最高責任者とする(※1)
  • プロジェクトリーダーがプロジェクトにおける最終意思決定権を持つ(※2)
  • プロジェクトメンバーはプロジェクトリーダーの意思決定に従う

※1:予算、目標等については既に承認済みの計画があり、それらをもとに与えられた条件下においてプロジェクトを遂行する最高権限を与える、という意味を含む 長い

※2:他への協力要請やメンバーへの意思決定権限の委譲もリーダーの権限に含まれる



このくらいだろう。

 

(横軸のマネージャーが何を役割&責任として負っていて、個々人にどのように関わるべきか、各メンバーへのプロジェクトに関わる指示の範囲をどう限定するか、などもはっきりさせておく必要がある。これがはっきりせず「部署全体の○○を向上させてくれ」みたいな曖昧な役割だとやっぱり同じようなことがおこる)

 

ただし、実際このようなことはルールとして決まっているのにそういうことが生まれることもある。すなわちルールの制定だけでは不十分であり、前提として

  • 意思決定者(=責任者)は1人
  • 意思決定者はその決定事項とその結果に対する責任を負う
  • 責任を持たない者は意思決定は責任者に委ねる
  • 意思決定を従来の責任者以外が行うなら、その決定事項については意思決定を行った人間が責任を持つ
  • 責任者が決定したことには従う


みたいな原則が共通認識であることが必要で、それがないと

  • 責任は持たないけど自分が決める
  • 責任は持たないけど指示はする
  • 責任は持たないけど好き勝手に口は出す
  • その結果失敗しても自分には責任ないので知ったこっちゃない
  • 良くないとおもった決定事項は異議を唱えることができ、納得するまで履行しなくてよい

 

みたいなことが許容されてしまい、収集がつかなくなるため(結果1)だ。あるいは、それを収集つけるために本来不要なコストを払う必要がでてくるため(結果2)だ。

なぜみんなが好き勝手言い出すことで収集がつかなくなるかというと、それは「各々の価値判断基準で各々が物事の良し悪しを判断して行動して良い」ことになるから。

それではチームとして良いコラボレーションを生むどころか、無駄なコミュニケーションや不要な軋轢、責任者が曖昧な意思決定を生み出し、不本意な決定事項に対する反発や否定、失敗に対する他責思考を生むことになる。


このへんをルールだの秩序だのはっきりせず曖昧にしていることがベンチャーとして求められる「自由な議論」「主体的な関わり」「自己責任意識の醸成」に繋がるんだ、下手なルールは自由闊達な議論を阻害するんだ、という声もありそう(というか自分も昔そう思ってた)だが、

たぶん全く逆で、そういうのが健全に醸成されるのを阻害しないためにこそ、そういうルールとか秩序をはっきりさせることが必要なんだろうなと最近考えるようになった。もっといえば、下手な秩序でも無秩序よりははるかに勝る、と思ってたりする。

 

 

※追記:そういうのが顕著に出たみたいなケーススタディを得たので別記事でまとめた
権限・責任・仕事を然るべき人に委譲する


秩序とかルールよりも自由度、曖昧さを優先していいのは、おそらく「イノベーション」とか「立ち上げ」みたく、何が正解なのかすら曖昧な状況で、手早くサイクルを回していくとかなんかあったらすぐ変更できる柔軟性が必要とかとにかくアイデアの総量やそのバリエーションが重要だったりするとか、なケースで、かつ組織が平面のコミュニケーションで完結できる規模(1対5~8人くらいまで?)である場合だろう。

立ち上がり一定の規模になり、目指すものが価値の向上、業容の拡大、みたいなフェーズに入ったらそのままではうまくいかない。(少人数のときは上手くできたのに人数増えたら壁にあたった、みたいなのの1つの大きな要因かと思う)
 

縦横2列とか縦型3階層とかみたく複雑、多階層化した組織でいろいろ曖昧な状態を維持してるのは思った以上に損失が大きいと思うので、そのへんしっかりするといいと思いました。