「突破者 それから」 宮崎学
怪しいお金の稼ぎ方
いわゆる出会い系というやつでバイトしてたことがある。
きっかけは、普通の求人誌だ。業者も馬鹿ではないから、
「出会い系サイト、人員募集」とは書かない。あくまでPC
を使った入力とか、統計作業とかそんなことを書くのだ。
僕はその「入力作業、時給1200円」にひっかかったって
わけだ。
実際やってたのは簡単に言うと、さくら。女の子になり
すまして同じ内容のメールを大量送信して、効率しだい
ではボーナスが出る。実入りは悪くなかった。ただ、こう
いった方法でお金を稼ぐのはイヤなエネルギーを使うモ
ンで、結局僕は一ヶ月足らずでやめてしまった。
「999億円あるでよ」
―――“黒詐欺”S(偽造の預金証書を見せながら)
今日紹介する「突破者 それから」はそんなビジネス
の1万倍はスケールのでかい話だ。時はバブルの真っ
只中、神保町の猫の額みたいな土地に、坪1000万か
らの値段がつき、さらにあがっていく。地上げという名の
ポーカーに、国中の怪しいやつらが熱狂していた。
本書の素晴らしい特徴として、地上げの現場のことが
分かるというものがある。バブルの時代に散々騒がれた
地上げだが、その実態は?と聞かれて答えられる人は
少ないんじゃないだろうか?どんなプレイヤーがいて、ど
んな金額が、どんな風にばら撒かれたのか?
著者の宮崎学氏は、その現場の正にど真ん中にいた。
そんな彼が証言する現場は、何千万という札束が飛び交
い、あちらこちらに怪しい話の乱れ飛ぶ魑魅魍魎の世界。
それでもそこに関わるプレイヤー達―――たとえば筋金
入りの黒詐欺Sや、10億円損した鹿島―――は不思議
な魅力に満ち溢れている。
結局、私はこんな紙っぺらを得るために
5億円近い金をばら撒いたのだ。
―――本文第2章、「過疎地の饗宴」より
もうひとつの見所は、京都ヤクザの息子である宮崎氏
の、その交渉術である。時に脅し、時には金を使い篭絡
する。かと思えば一転、根気強く相手の話をじっと聞い
たりする。その裏で相手の弱点を探り続ける。
怪しいやつら相手にどこまでも金を稼ぎまくる宮崎氏。
読んでるうちにこちらまでエネルギーにあふれてきそうだ。
いわゆる出会い系というやつでバイトしてたことがある。
きっかけは、普通の求人誌だ。業者も馬鹿ではないから、
「出会い系サイト、人員募集」とは書かない。あくまでPC
を使った入力とか、統計作業とかそんなことを書くのだ。
僕はその「入力作業、時給1200円」にひっかかったって
わけだ。
実際やってたのは簡単に言うと、さくら。女の子になり
すまして同じ内容のメールを大量送信して、効率しだい
ではボーナスが出る。実入りは悪くなかった。ただ、こう
いった方法でお金を稼ぐのはイヤなエネルギーを使うモ
ンで、結局僕は一ヶ月足らずでやめてしまった。
「999億円あるでよ」
―――“黒詐欺”S(偽造の預金証書を見せながら)
今日紹介する「突破者 それから」はそんなビジネス
の1万倍はスケールのでかい話だ。時はバブルの真っ
只中、神保町の猫の額みたいな土地に、坪1000万か
らの値段がつき、さらにあがっていく。地上げという名の
ポーカーに、国中の怪しいやつらが熱狂していた。
本書の素晴らしい特徴として、地上げの現場のことが
分かるというものがある。バブルの時代に散々騒がれた
地上げだが、その実態は?と聞かれて答えられる人は
少ないんじゃないだろうか?どんなプレイヤーがいて、ど
んな金額が、どんな風にばら撒かれたのか?
著者の宮崎学氏は、その現場の正にど真ん中にいた。
そんな彼が証言する現場は、何千万という札束が飛び交
い、あちらこちらに怪しい話の乱れ飛ぶ魑魅魍魎の世界。
それでもそこに関わるプレイヤー達―――たとえば筋金
入りの黒詐欺Sや、10億円損した鹿島―――は不思議
な魅力に満ち溢れている。
結局、私はこんな紙っぺらを得るために
5億円近い金をばら撒いたのだ。
―――本文第2章、「過疎地の饗宴」より
もうひとつの見所は、京都ヤクザの息子である宮崎氏
の、その交渉術である。時に脅し、時には金を使い篭絡
する。かと思えば一転、根気強く相手の話をじっと聞い
たりする。その裏で相手の弱点を探り続ける。
怪しいやつら相手にどこまでも金を稼ぎまくる宮崎氏。
読んでるうちにこちらまでエネルギーにあふれてきそうだ。
「永遠も半ばを過ぎて」 中島らも
希代の美文小説 written by 睡眠薬
残念ながら、本書の著者である中島らも氏は2004年の
7月26日に亡くなった。その理由が、「酔っ払った挙句に、
階段から落ちて脳挫傷」とはまぁ、酒豪、ジャンキー作家の
面目躍如。「よし。酒飲み代表、よくやった」と、不謹慎にも
思ってしまった。
そんな彼の小説にはいくつかの共通点がある。オモロイ
サブキャラクター、いかしたセリフ、そして、怪しいテーマ
である。日本推理作家協会賞を受賞した「ガダラの豚」は
魔術がテーマだったし、吉川栄治新人文学賞の「今夜、す
べてのバーで」はアルコール依存症の主人公を入院させ
た。
本書のテーマはズバリ、詐欺。仕掛けるのは写植屋、詐
欺師、編集者。誰もが2流の冴えないやつら。タネは小説、
なんでも、幽霊が書いたらしい―――。
つまり、その、お前は詐欺師なんだな
「ああ、そうだよ。免許証てのは持ってないがね。」
―――相川真(波多野善二の質問に答えて)
うだつのあがらない写植屋、波多野善二が過ごしていた
のは、相方の電子写植機、「一休」に向かいあう退屈な毎日。
彼の運命を変えたのは、詐欺という一大ショーの仕掛け人
3人のうちの一人、相川真。
冴えない写植屋を訪ねてきたのは、これまたやっぱり冴
えない詐欺師。相川が何で波多野のトコロに転がり込んで
きたのかは後々分かる。まずは、二人の掛け合い漫才のご
ときやり取りを楽しもう。
医師協の大先生がたを騙すまでが前半のクライマックス
だ。舞台は医師協のプレゼン大会で、演目は年史。中島ら
ものでたらめの虫が乗り移ったように、相川は軽快にしゃ
べるしゃべるしゃべる。この手のキャラを描かせて、著者
の右に出る作家はいないだろう。
あんなものは相川さん、“うんこ召し上がれ”ですわ
―――宇井美咲
実は、カバー裏の寸評に書かれている「幽霊が書いた小
説」は物語の前半、初めて波多野が睡眠薬でぶっ飛んだ時
にはもう登場する。ただし、文字通り意味がない。
これにペイシェンス・ワースという意味が加わったときに、
本当に物語が始まる。
そこに加えられるアツイセリフという名のスパイス。
奇才中島らもの仕掛ける一大詐欺戯曲をぜひ堪能あれ。
残念ながら、本書の著者である中島らも氏は2004年の
7月26日に亡くなった。その理由が、「酔っ払った挙句に、
階段から落ちて脳挫傷」とはまぁ、酒豪、ジャンキー作家の
面目躍如。「よし。酒飲み代表、よくやった」と、不謹慎にも
思ってしまった。
そんな彼の小説にはいくつかの共通点がある。オモロイ
サブキャラクター、いかしたセリフ、そして、怪しいテーマ
である。日本推理作家協会賞を受賞した「ガダラの豚」は
魔術がテーマだったし、吉川栄治新人文学賞の「今夜、す
べてのバーで」はアルコール依存症の主人公を入院させ
た。
本書のテーマはズバリ、詐欺。仕掛けるのは写植屋、詐
欺師、編集者。誰もが2流の冴えないやつら。タネは小説、
なんでも、幽霊が書いたらしい―――。
つまり、その、お前は詐欺師なんだな
「ああ、そうだよ。免許証てのは持ってないがね。」
―――相川真(波多野善二の質問に答えて)
うだつのあがらない写植屋、波多野善二が過ごしていた
のは、相方の電子写植機、「一休」に向かいあう退屈な毎日。
彼の運命を変えたのは、詐欺という一大ショーの仕掛け人
3人のうちの一人、相川真。
冴えない写植屋を訪ねてきたのは、これまたやっぱり冴
えない詐欺師。相川が何で波多野のトコロに転がり込んで
きたのかは後々分かる。まずは、二人の掛け合い漫才のご
ときやり取りを楽しもう。
医師協の大先生がたを騙すまでが前半のクライマックス
だ。舞台は医師協のプレゼン大会で、演目は年史。中島ら
ものでたらめの虫が乗り移ったように、相川は軽快にしゃ
べるしゃべるしゃべる。この手のキャラを描かせて、著者
の右に出る作家はいないだろう。
あんなものは相川さん、“うんこ召し上がれ”ですわ
―――宇井美咲
実は、カバー裏の寸評に書かれている「幽霊が書いた小
説」は物語の前半、初めて波多野が睡眠薬でぶっ飛んだ時
にはもう登場する。ただし、文字通り意味がない。
これにペイシェンス・ワースという意味が加わったときに、
本当に物語が始まる。
そこに加えられるアツイセリフという名のスパイス。
奇才中島らもの仕掛ける一大詐欺戯曲をぜひ堪能あれ。
「スピード」 石丸元章
ようこそ、一線のその先の世界へ。
中学生の頃、保健の授業が好きだった。退屈であくびの
出る事ばっかりのカリキュラムのなかで、唯一、若い盛り
の僕らの大好きなこと(セックス、ドラッグ、アルコール)
について教えてくれる授業だったから。
それでも、そこには常に「一線」が存在していた。先生
が僕らに「酒を飲んで感想文を書いて来い」とは絶対言わ
なかったし、コンドームなんて、持ってるだけで説教もの。
ましてや、ドラッグの売ってるトコロなんて論外だった。
結局、僕らは保健で得た知識のうち、どんなことも知っ
てるけど知らなかった。「一線」のその内側で僕らにでき
た事は、日に日に想像を膨らますことだけだったんだ。
スピード!!スピード!!スピード!!
書いてる本人がブッ壊れた最大の理由!
―――本文より
本書「スピード」の著者、元ラジオDJ石丸元章は、保健
の授業が頑なに守ったその「一線」を軽々と超えて、ドラ
ッグの世界を垣間見せてくれる。違法性とか、精神、肉体
への影響とかそんなこと関係なしに、結局ドラッグをどうや
ればいいのか?そして続ければ、どうなるかを教えてくれる。
それには、ドラッグの種類、値段、入手法の他、その効用
がジャンキーの視点で、その時のエピソードを絡めながら、
書かれている。時にはクラブでサラリーマンをぼこぼこに
し、時にはオーバードラッグで内臓をジャブジャブ洗いた
いと苦しむ。
シンナーからトルエン。マリファナ、ハシシ経由で最終
的には覚せい剤へ。著者は結局、取材どころか本当のジャ
ンキーになってしまって、彼を含めた相棒ギター男、知り
合ったボンボンのサイコビリーらとともに3人はそれぞれ
の破滅を迎えてしまう。
「もう2度としません」なんて、
悟りきった顔で言いたくないな。
―――筆者あとがきより
ドラッグがどれだけ楽しいか、そして、手を出したらど
うなるのか?この本はそれをリアルに教えてくれる。
さぁ、本当の授業の始まりだ。
中学生の頃、保健の授業が好きだった。退屈であくびの
出る事ばっかりのカリキュラムのなかで、唯一、若い盛り
の僕らの大好きなこと(セックス、ドラッグ、アルコール)
について教えてくれる授業だったから。
それでも、そこには常に「一線」が存在していた。先生
が僕らに「酒を飲んで感想文を書いて来い」とは絶対言わ
なかったし、コンドームなんて、持ってるだけで説教もの。
ましてや、ドラッグの売ってるトコロなんて論外だった。
結局、僕らは保健で得た知識のうち、どんなことも知っ
てるけど知らなかった。「一線」のその内側で僕らにでき
た事は、日に日に想像を膨らますことだけだったんだ。
スピード!!スピード!!スピード!!
書いてる本人がブッ壊れた最大の理由!
―――本文より
本書「スピード」の著者、元ラジオDJ石丸元章は、保健
の授業が頑なに守ったその「一線」を軽々と超えて、ドラ
ッグの世界を垣間見せてくれる。違法性とか、精神、肉体
への影響とかそんなこと関係なしに、結局ドラッグをどうや
ればいいのか?そして続ければ、どうなるかを教えてくれる。
それには、ドラッグの種類、値段、入手法の他、その効用
がジャンキーの視点で、その時のエピソードを絡めながら、
書かれている。時にはクラブでサラリーマンをぼこぼこに
し、時にはオーバードラッグで内臓をジャブジャブ洗いた
いと苦しむ。
シンナーからトルエン。マリファナ、ハシシ経由で最終
的には覚せい剤へ。著者は結局、取材どころか本当のジャ
ンキーになってしまって、彼を含めた相棒ギター男、知り
合ったボンボンのサイコビリーらとともに3人はそれぞれ
の破滅を迎えてしまう。
「もう2度としません」なんて、
悟りきった顔で言いたくないな。
―――筆者あとがきより
ドラッグがどれだけ楽しいか、そして、手を出したらど
うなるのか?この本はそれをリアルに教えてくれる。
さぁ、本当の授業の始まりだ。
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