「永遠も半ばを過ぎて」 中島らも | 「非現屋」

「永遠も半ばを過ぎて」 中島らも

希代の美文小説 written by 睡眠薬

 残念ながら、本書の著者である中島らも氏は2004年の
7月26日に亡くなった。その理由が、「酔っ払った挙句に、
階段から落ちて脳挫傷」とはまぁ、酒豪、ジャンキー作家の
面目躍如。「よし。酒飲み代表、よくやった」と、不謹慎にも
思ってしまった。

 そんな彼の小説にはいくつかの共通点がある。オモロイ
サブキャラクター、いかしたセリフ、そして、怪しいテーマ
である。日本推理作家協会賞を受賞した「ガダラの豚」は
魔術がテーマだったし、吉川栄治新人文学賞の「今夜、す
べてのバーで」はアルコール依存症の主人公を入院させ
た。

 本書のテーマはズバリ、詐欺。仕掛けるのは写植屋、詐
欺師、編集者。誰もが2流の冴えないやつら。タネは小説、
なんでも、幽霊が書いたらしい―――。


つまり、その、お前は詐欺師なんだな
「ああ、そうだよ。免許証てのは持ってないがね。」
 ―――相川真(波多野善二の質問に答えて)

 うだつのあがらない写植屋、波多野善二が過ごしていた
のは、相方の電子写植機、「一休」に向かいあう退屈な毎日。
彼の運命を変えたのは、詐欺という一大ショーの仕掛け人
3人のうちの一人、相川真。

 冴えない写植屋を訪ねてきたのは、これまたやっぱり冴
えない詐欺師。相川が何で波多野のトコロに転がり込んで
きたのかは後々分かる。まずは、二人の掛け合い漫才のご
ときやり取りを楽しもう。

 医師協の大先生がたを騙すまでが前半のクライマックス
だ。舞台は医師協のプレゼン大会で、演目は年史。中島ら
ものでたらめの虫が乗り移ったように、相川は軽快にしゃ
べるしゃべるしゃべる。この手のキャラを描かせて、著者
の右に出る作家はいないだろう。

あんなものは相川さん、“うんこ召し上がれ”ですわ
 ―――宇井美咲

 実は、カバー裏の寸評に書かれている「幽霊が書いた小
説」は物語の前半、初めて波多野が睡眠薬でぶっ飛んだ時
にはもう登場する。ただし、文字通り意味がない。
これにペイシェンス・ワースという意味が加わったときに、
本当に物語が始まる。

 そこに加えられるアツイセリフという名のスパイス。
奇才中島らもの仕掛ける一大詐欺戯曲をぜひ堪能あれ。