クリンケンブルグとグリーソン --- 窒化と浸炭 昭和の話。 | Driving On the Earth - Part2

Driving On the Earth - Part2

Driving On the Earth-Part2
今まで続けてきたDriving On the Earth の更新ができなくなり、Part2にて、再スタートです。
2台の車と3台のバイク、そしてレンタカーで将来の地球環境を考えながら地球を旅していこうと思う技術者です。 

 今はFFが多いからあまり知られていないが、FRのデフの部分のスパイラルベベルギヤは、日本国内では米国グリーソンのカッターで歯切りされていた。むかしのMTを乗っておられた方なら知っているだろうが、アクセルのonーoffを極端に繰り返すとコン・コンとリアのデフから結構音が出たものだ。要は遊びが大きいのだ。同時に噛み合いの問題もある。

 

 同時にハイパワー車、DOHCとかターボだと、デフの歯の損傷が結構見られたものだ。そこで、日本に導入されたのが、クリンケンブルグと言う欧州のメーカーの歯切り技術を求めて、MMMCが、確かスイスで技術研修を行い導入されたはずである。自分は、大型2700Kw級のギアのグリーソンのベルギアの鳴きで苦労した経験があり、大型のものもある日本の企業が導入しようとしていた。だが、一番の問題は、変動トルクによる歯面の損傷、表面加工技術が大きく影響したものだ。日本の場合は、浸炭、欧州は窒化処理、この違いもあり、ギアの勉強知識も表面的だが身に着けたのは20代だった。

 

 窒化は、処理後に熱の掛け方が少ないから、処理後に、そのまま使える。これに対して浸炭は、処理の仕方からひずみが出てしまう。その為研磨する事になる。窒化処理は鏡面は硬いが金属表面部分であることから、万が一表面に傷が付いたりすると、窒化部が剥離し、一気にダメージにつながる。これに対して浸炭は奥まで硬くなることから、表面剥離と言うようなことが起こりにくい。まあ、雑に扱えるが、洗練さにかけると言った処か?

 

 これと同じで、今では様々な表面処理が、エンジンに使われ最近の傾向は、DLCであり、それも幾つかの種類があって、添加剤のレスポンスが異なる事から、色々テストをしてみたがコストが高く、最終特殊な処方がどちらにも有効なのを確認した上で、研究はとん挫した。最近は、CrN処理が燃料ポンプなどに使われ、これ自体は、高価だが、400℃辺りまで使える事から、プランジャーには適しているようだ。これに対しDLCは、200℃程度までなら十分対応可能で、まして摩擦係数が低いので高速で動くインジェクターのスピンドルやSCVに使われ、それに合わせて添加剤も工夫してきた。

 

 多くのメーカーは、問題対処に表面加工や加工精度他で対処してそこで終わる事が多い。だが、自分は機械側で苦労したことを経験に機能性を燃料・潤滑油に与える事を学んだからこそ、他にできないものが作れている。今は、その多くの経験に感謝しながら、金属皮膜と油膜のシナジズムを確立したい。とは言え、それは、大学や企業の研究室に任せ、実用上、ここまでできると言う部分がせいぜいだろうか。やりたいことは山ほど。優先順位を付けなければ何もできない。もっと時間があればなあ!もっと勉強していればと思う今日この頃。若い方には、好きな分野だけでなく、せめて基礎は身に着けてほしいと思う。