ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
銀行の審査部にいた時、常務会での決裁が必要な案件がありました。融資する金額が大きかったので、手続き上役員の決裁が必要だったのです。
最初にその案件を上司に上げる際には「何か突っ込まれないだろうか?」と少し緊張しましたが、その融資案件は驚くくらいあっさりと承認されました。
なぜなら、その融資先は某自治体が株主となっている先。したがって、当時の審査基準からすると、最終的に貸したお金が返済できなくなる恐れはないと判断されるので、審査担当がいろいろと説明しなくても、決裁をもらえたという訳です。
支店にいた時、取引先の融資案件に対して、「この資料を作ってくれ」「この数字の根拠をもっと具体的に示せ」といろいろ注文を受けた身からすると、「なんだかなぁ」と感じた記憶があります。
銀行の立場からすると、中小企業に1,000万円融資する際は、「この融資は本当に返済できるのか?」と心配になりますが、国や大きな自治体が深く関与している融資先は、「最終的にはこの融資は返済してもらえる」ので、無担保で10億円貸しても大丈夫という判断になるのです。
いわば既存の常識から判断すれば、「国が借入金を棒引きにすることはない」ので、問題なしという結論が導かれているという訳です。
これは20年以上前に私が経験したもの。このため、今でもその常識を基準にして融資の審査が行われているかどうかは分かりません。
ただ、「これまでは大丈夫だった」という実績や経験に基づいて、「これからも大丈夫だろう」という判断を下して行動するケースは実際多いのではないでしょうか。
ある地方の建設業者さんは、同業他社が施工工事を下請けに任せるのが常識だった中、あえて新卒採用に力を入れて、自社で設計から工事までを一貫して行う体制を15年以上かけて構築されました。
新卒採用を始めた当初は、「どうして、そんなコストと手間がかかることをやるのか」と白い目で見られたそうです。しかしながら、その社長さんは15年前から「これからは若手の働き手が少なくなる」という未来が見えていたので、先行投資として新卒採用と人材育成に注力されたのです。
その結果、15年前の常識に基づいて下請け中心の施工をベースに仕事を続けていた他社が、下請け先の高齢化に伴う人材不足で仕事があっても施工できずに苦労する中、自前で設計から工事までできる強みを伸ばして、業績をぐんぐん伸ばされました。
人口減少や高齢化の進行などはかなり確実性の高い未来図です。このため、自治体の中にも財政が厳しくなっているところもあれば、日本の国自体も、右肩上がりの高度成長がなかなか見通せない状況になっています。
このため、「過去の常識→現在の行動」につなげるのではなく、「予想される未来→現在の行動」につなげることがますます大切になってきます。
特に働き手など人の問題は徐々に変化していって、「気がつくと5年前と大きく変わっていた」というケースがあります。
そして、過去の常識がどうであれ、将来の姿を決めるのは、現在の「感情→思考→行動」です。
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ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
最近改めて感じるのは、本質を突き詰めることの大切さです。
弊社がやっている「社長専任の社外チーム」の中でも、毎月会社の状況に応じて、様々な経営課題の解決に取り組んでいます。
日々起きる問題はたくさんありますが、その原因を掘り下げていくと、たいてい3つぐらいの根本原因にぶち当たります。
また、問題から生じるトラブル等を解決するには、より高い視点に立って、どうすればベストなのかを決めるメタ認知力が必要です。
もぐら叩きのように、出てくる問題をその場限りで対応しているだけでは、仕事をやった気にはなりますが、何の解決にもなりません。
そのため、一見すると、かえって遠回りにように思えても、本質を突き詰めることのほうが、後から振り返ってみると、大きな改善につながります。
「社長専任の社外チーム」を作る際に、社長の心意気を言葉にすることから始めているのも、本質的なことを最初に突き詰めた方が経営改革を進めやすいからです。
経営改革は一筋縄ではいきません。時には一時的に業績が悪くなったり、時には改革に反発する社員が退職したり、といったことが起こります。
それでも社長がブレずに改革を進めるためには、
自分の本質的な価値観につながる心意気を言葉として自覚する
↓
迷ったり、悩んだりした時にそこに立ち返って判断する
ことが欠かせないからです。
目的に対する共通理解がなく、その場しのぎの対応に終始するのは成長が止まる会社、目的に対する共通理解を基に、一石二鳥以上の対応を実行するのが成長し続ける会社。
一見すると、回り道しているように見えても、本質的な部分を先に固めることが、長期的には効率性が高いやり方になります。
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ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
つるかめ算や植木算。
算数の問題として一度は目にした人も多いのではないでしょうか。
つるかめ算で言えば、「つるとかめの頭の数が合計50で、足の数が合計156本の時、つるとかめはそれぞれいくつですか?」みたいな感じです。
算数の文章問題として、中学受験などでも出題されます。
かくいう私も中学受験を経験したのですが、あえなく全敗!この手の算数の問題はよく分からず苦手としていました。
そして、中学生になって数学で「方程式」なるものを学びました。すると、中学受験の時にはよく分からなかった算数の問題は大方方程式で解けることが分かりました。
例えば、先の問題。
つるをX羽、かめをY匹とすれば
X+Y=50
2X+4Y=156
という連立方程式を立てれば、たちまち
X=22
Y=28
という答えが導き出せることが分かったのです。
その時、私が感じたのは
「あの苦労した時間は何だったのか」
「もっと早く方程式を教えてほしかった」
ということ。
つるかめ算と方程式を比べれば、方程式の方がより抽象度が高いと言えます。このため、より多くの人に分かりやすくするために、小学校ではつるかめ算を教え、方程式を教えるのは中学生になってから、と決まっているのかもしれません。
しかしながら、人によっては、より抽象度の高い事象の方が理解しやすいということがあります。
実際、私はつるかめ算はいま一つピンと来なかったのですが、方程式はかなりしっくりきました。そして、小学校の時に持っていた算数に対する苦手意識は、数学になってからはなくなったのです。
具体的なやり方やノウハウを相手がいま一つ理解しづらい時に、同じような具体的な事例を使って説明するのではなく、一段抽象度を上げた言葉で説明することで、理解が深まることもあります。
実は自分を突き動かす原動力である心意気も、言葉にすると、抽象度が高いと言えます。
私の場合で言えば
・ワクワクする心意気:自然体
・モヤモヤする心意気:強要
です。
例えば、自然体という言葉でも、人によって解釈が異なります。
肩の力が抜けてリラックスする状態を自然体と感じる人もいれば、生き生きと積極的に活動している状態が自分にとっては自然体と捉える人もいます。
私にとっての自然体は、自分の好きな時に好きなことが自由にできることです。
このように、抽象度の高い言葉の場合、その意味が伝わりづらいという問題があります。
しかしながら、心意気を言葉にする上で大切なのは自分がしっくりと腹落ちできれば良いということです。
抽象度の高い言葉の下には、いろいろな要素が含まれています。そして、そのいろいろな要素を紐付けして自覚する上で、自分に最適な言葉を採用するのです。
言い換えれば、看板のようなもの。その看板を見て、たくさんのことが自然と浮かんでくればOKという訳です。
数学の問題は方程式を立てれば回答が出るように、自分の心意気が分かっていれば、
迷った時や悩んだ時に心意気に立ち戻って考えてみる
↓
価値判断の基準がハッキリするので、自分なりの仮説が立てられる
↓
決断して、行動できる
という流れが生まれます。
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