先日、ストリーミングオーディオをはじめようとしている方へのブログを書きました。今回はさらにその先を書いてみたいと思います。
先のブログでも述べましたが、ストリーミングオーディオにとって自宅のネットワーク環境は非常に重要で、アナログオーディオで言えばアームとカートリッジに、CDプレーヤーで言えばCDドライブに該当する様な物だと思います。
だとすれば、CDプレーヤーでは変更が難しい、ピックアップ、ドライブなどの音の本当の入り口の質を、ネットワークオーディオでは幾らでも高品質化でき、ある一定以上の工夫をすると、明確にCDプレーヤーの音を超えてきます。今日はROONの導入についての説明も加えつつ、さらに高音質を目指すには、と言う事を私の我が家での経験を中心にまとめていきたいと思います。
ネットワークの構成と導入順序について
第一段階として目指すべきネットワーク構成
ネットワークオーディオを高音質化しようと考えて、ネットワーク環境を構築する場合に、まず目指すべき構成は下図の通りです。この図を目指す、と言うのは昨年、TOP WINGさんが、オーディオ器機としては5万5千円という本当に安価な値段で(それまでのオーディオ用ルーターは70万円以上していました)3つのポートを持ったオーディオ用ルーター、DATA ISO BOXを発売してくださって以降に可能になりました。多くの方はまずはこの形を目指し、その後はオーディオ用高品質ネットワークスイッチの導入、さらなる光絶縁の導入と進むと良いと思います。
まずはこの図を目指しましょう。できれば図のように光アイソレーターを導入すべきですが、予算的に難しければ、Audio用ネットワークスイッチもかねたDATA ISO BOXを導入するだけでも大きく音が変わると思います。
上記の様な形にした場合、何が有利なのかを多少説明しようと思います。まず、オーディオ用ルータであるDATA ISO BOXなどのルーターを使う事で、オーディオ用ネットワークは家庭内ネットワークから別セグメントとしいて分割され、見えなくなります。
多くのネットワーク機器は常にネットワークに信号を出しており、これがオーディオ信号と混ざった形でオーディオ器機に届くというのが家庭用ルーターに直接繋いだ場合です。
一方で、家庭用から分離されたオーディオ用ネットワークにはそういった余計な信号は届きません。このことが大きな効果をもたらします。
また、ルーターは受け取った信号をバッファに貯めて、再成形して送り出しています。ここの品質が高いと、信号に含まれるジッター成分が低減し、次のステップでのデータの受け渡しがスムーズになり、機器負荷が減ります。それがさらにジッターを減らし、さらに機器負荷が減る、という状態になります。
ですから、まずは5万円台のオーディオ用ルータDATA ISO BOXの導入が、第一段階としてはベストな選択となります。次に上図に示した光アイソレータを導入します。私のおすすめはSilentPower社のLAN iPurifierProですが、予算が合わなければ、10GTekのメディアコンバーターを2つ購入し、間を光ケーブルで接続するだけでもかなり改善します。
次のステップはオーディオ用ネットワークスイッチの導入
上記の次のステップとしては、幾つかの選択肢がありますが、最も効果的なのは、高品質なオーディオ用ネットワークスイッチの導入です。現状での私のおすすめは、DELA S100/2です。ただ、これだけで15万円以上しますので、考えてしまいますが、この機器の良い点は、SFPポートが2個ある事、12Vの外部電源供給である事、です。また、ネットワーク用スイッチの老舗として我が家では、この一つ前の機種を長年使ってきましたが、導入当初その音質向上には本当に驚かされました。
予算に余裕があるなら、各社から様々な機種が出ていますから、是非自宅試聴させてもらい、気に入った機器を導入しましょう。多くの場合音質の向上は大きな物が有ると思います。
すでにハイエンド機器をお使いの方であれば、回り道せずに一気にハイエンド機器のDELA S1に行くというのは十分にあり得る選択肢です。
正直なところ、ネットワークプレーヤーよりもネットワーク環境の方が音に対する影響は大きいと感じます。前のブログでも述べましたが、ネットワークプレーヤーにとってのネットワーク機器は、CDプレーヤーのCDドライブそのものに相当しますし、アナログプレーヤーのカートリッジとアームに相当する非常に重要な機器なのです。これが悪ければ後がどんなに良くても音は良くならないというのが実感です。ですから一気にDELA S1に行き、プレーヤーは中級機の方が、高級プレーヤーに中級ネットワークスイッチよりも音がいい可能性が高いと思います。
ネットワークスイッチはルーターと同様、データのバッファリング、再構築、などかなり深い部分でデータの再成形を行っています。ですから、ここの性能が良いという事はネットワーク全体の信号の品質を左右してしまいます。
上図が次に目指すべき形です。このオーディオ用ルーターに直結している光アイソレーターはこの場所以外でも良いと思います。試聴しながら、最適な位置を探して下さい。
この形になると、オーディオ用ルーターと、オーディオ用ネットワークスイッチの両方で物理層レベルで信号の再成形が行われるため信号自体はかなり高品質になっています。ですから、それを受け取ったオーディオ器機は、データ受診時の負荷が非常に小さくなるため、結果的にジッターが低減し音質が向上します。
ROONを導入する
一般的には、ここまででかなり音質が向上しているはずです。さて、この先はどうしたら良いのでしょうか。まず思いつくのはROONの導入です。ROONは一般的には非常に高音質に寄与します。しかし、究極的にデータの質を追求した我が家ではその効果は限定的になってしまいましたし、また、結構お金も掛かります。昨年までは絶対にRoonにした方が音が良いと言えたのですが、TOP WINGさんのDATA ISO BOXで気軽にオーディオ専用LAN環境が整えられる今の状況だと、うーん、絶対に必要じゃ無いかもしれない、と思っています。
とはいうものの私のLAN環境はかなりとんがっているので、一般的にはRoonはかなり音質が向上するといって良いと思います。ただ、下手に導入すると音が悪くなる、と言う事も十分にあり得ます
では順を追って解説します
ROONの機器構成
図は、オーディオ用ネットワークにRoon を導入する際の最も一般的な構成図です。
Roonは、Roon Serverと言うアプリケーションが動作するパソコンや専用機器が必要です。この機器をRoon Coreと呼びます。Roon Coreの役割は音楽データをインターネットやNAS内から読み込んで、バッファリングし、それをRAAT(Roon Advanced Audio Transport)というプロトコルに従ってプレーヤーであるRoon Bridgeに供給する事にあります。
RAATの技術詳細は公開されていませんが、ある程度の事は事実として判っています。
Roonでは、Roon Bridgeからの要求に従ってRoon Coreが必要なデータを送信します。と言うか、Roon Coreは常にRoon Bridgeの状態を監視しており、Roon Bridgeがデータが必要な時にその要求通りにRoon Coreがデータを送るのです。Roon Coreはかなり深いバッファ(10秒程度と考えられています)を持っており、プレーヤー側のクロックのずれやバッファの動作状況を監視して、常にデータ送信量を微調整しながら、プレーヤー(Roon Bridge側)に最適なタイミングでPCMやDSDのデータパケット構造を一切変更する事無く送り出します。こうすることで、プレーヤーは動作負荷の変動が極めて少なくなり、そのためジッターが減少し、理想的なクロックでの動作が可能になる、と言う理屈です。
この点が通常のDLNAやAirPlay、Chromcastなどとは根本的に異なる点です。Roonでのデータ送信はあくまで、再生側が理想的に処理できる量だけ送られる、のです。RAAT以外のプロトコル、例えばDLNAなどでは「この曲を再生したい」と一端要求を出すと、後は粛々とデータが再生器機に送られるだけです。仕組みは、私たちがファイルデータをダウンロードする際の仕組みと何ら変わりません。クロックのずれの監視などは勿論ないですし、サーバーから、プレーヤーに送られる単位時間のデータ量はネットワーク環境に左右されてしまい、コントロール不可能です。一方のRAATは、再生器機側が、今が一番受け取りやすい、と言うタイミングでデータがRoon Coreから逐次的に送られるのです。そのため、Roon Coreでは通常のNASなどに積まれているDNLAサーバーなどとは比較にならないぐらいの作業量が発生します。そのためRoon Coreはある程度高いCPU性能を必要とします。
ただ、考えなければならないのは、Roonの利点は理想的なネットワーク環境では限定的になってしまう可能性がある、と言う事です。我が家ではすでにRoon経由でもRoonを経由しなくても以前ほど音質面でRoonの優位性を感じなくなってしまいました。適切な光絶縁、Clockの導入、SFPの導入、ルーター、メディアコンバーターなどの電源の工夫でネットワークの品質が向上したため、RAATでなくても安定した転送がなされているのだと思います。
Roon Coreは何を使えば良いのか
もし、あなたが非常にコンピュータに詳しいなら、自作、というてもあるでしょう。例えば、インテルが出している小型PC、NUCと言う器機であれば、10cm角ぐらいの大きさで、かなり高性能なRoon Coreとすることができます。普通のネットワーク再生よりはかなり音は良くなります。
以下のブログは内容的には大分古くなってしまいましたが、今でもある程度は通用します。ので参考にしてみてください。今はRoon Optimized Core Kit(ROCKと省略されます)の導入ももっと簡単になっています。
もし、ただRoonを試してみたい、と言うなら、あなたの手持ちのパソコンにRoon Serverと言うアプリケーションをインストールすれば、あなたのパソコンがRoon Coreとして機能してくれるようになります。ただし、通常は上記のNUCにRoon専用環境をインストールした場合に比べて音質はかなり劣ります。しかし、Roonの便利さを体感するには十分です。
音質をより良くしたい、と考えるなら、はじめからRoon Server専用機を購入するのが早道です。実はオーディオ器機として売られているRoon Severは極めて限られており、最も安価な物はSilent Angel 社のZ1C、24万円です。
実は、Roon社純正の安価なRoon Core専用機、Nucleus Oneと言う機器があるのですが、日本から、Roon Asiaをとおして購入可能なようです。
ただ、サポートがほぼ無いと思われることと、Nucleus Oneはもしかすると音質的には、NUC+ROCKと同等かも知れませんので、NUC+ROCKを御自身で組める方には不要と思われます。
ですので、私のおすすめは、どうせRoonを導入するなら、一気にSilent Angel Z1Cを導入、です。Z1Cには50Ωの10MHz外部マスタークロック入力があるので、ここに外部マスターを繋ぐとかなり音質が向上しますし、12VのDC電源駆動なので、将来的にリニア電源などを奢れば音質は大きく向上します。
Silent Angel Z1Cの次に安価なのは、Roon社のNucleus TITAN、及び Ediscreation HAYDN2で、Nucleus TITANは、Roon Asiaから、5945 シンガポールドルで購入可能です。現在シンガポールドルは何と、120円!(高!!)になってしまっていますから、70万円強、HAYDN2が88万円(いつの間に、、、、はじめのHAYDNは70万円台だったのに)と一気にハードルが高くなってしまいます(泣)。
さらにこの上は、一気に価格が上がり、Ediscreation BACH 300万円、さらに気が狂ったかのような値段のTAIKO AUDIO Extreme server 640万2000円(この2000円って、削れないのって感じです)、TAIDO AUDIO Olympus Server XDMI 1757万8000円(うーん、この8000円もなに、って感じです)という化け物商品があります。確かに私もExtreme Serverの音は聴いて仰天しましたが、ネットワーク環境を整備した今の音と、あのとき聞いた音では今の方がいい気もしますから、ここにお金をかけるならネットワークにお金をかけましょうという感じです。
Roonの利点は、ネットワーク経由でのデータ受け渡しを工夫し、再生器機側の負荷を最小化する事にありますから、ネットワーク環境が非常に優れていると高額なRoon Coreの効果が価格に見合わない可能性が十分にあり得ます。ですから、ここにお金をかけるのは最後の最後で良いと思います。
という訳で、現実解としてはSilent Angel Z1C一択、と言う気がします。
Roon Coreは必ず直接オーディオ用スイッチに繋ぐこと
時々、Roon CoreをPCでノイズ源になるからか別室に設置しWifi経由で動かしていると言う方がYouTubeなどで音が悪いと発信されているのを拝見します。
Roon CoreをWifi接続するのは音質的に最も行ってはいけない事です。
Roon CoreをWifi上に置いてしまうとROON COREのネットワークの監視機能がWifiの揺らぎを通して見ることになってしまい、結果として正常なタイミングでのデータの送り出し動作が困難になります。もしRoonを始めるなら試しにRoon CoreをWifi接続して試してみても良いかもしれません。普通にオーディオ用スイッチに直接つないだ場合との変化の大きさに驚かれるかもしれません。
Roon対応のストリーミングプレーヤーを導入する
実は、現状ではほとんどのストリーミングプレーヤーがRoonに対応していると言っても過言ではありません。中にはSforzato LACERTAやSforzatoの機器群のように結局Roonに対応できずに終わってしまった機器もありますが、それは非常に特殊な例です。
Denon/Marantzの現行機種はネットワークプレーヤー機能があれば、エントリー機からハイエンドまでほぼ全てRoonに対応していますし、BluesoundやWiiMも安価なエントリー機から全てRoon対応です。
また、実はiPhoneもRoon Bridgeとして動作可能で、例えば我が家ではiPhoneとポータブルDACアンプの組み合わせで、Roon経由で楽しんでいますが、単純にQobuz経由で再生するよりも音は良くなります。
もし、あなたが良いDACをお持ちなら、イチオシは、Bluesound NODE NANOです。我が家には普通のNODEや、WiiM Ultra、ZEN Streamなどもありますが、電源を工夫したときのデジタル出力での音質は価格にかかわらず、Bluesound Node Nanoが最も優れていると感じました。ネットワーク環境をある程度整えた上で、さらに電源を奢ったBluesound Node Nanoの音を超えるのは実は余り簡単なことではありません。おそらくEversolo DMP-A8レベルの器機を導入しなければ明らかな向上とは感じないはずです。
もし、DACは余り良い物を持っておらず、プレーヤーのアナログ出力を使いたい、と言う事であれば、DENON DNP-2000NE、は良い選択だと思います。
素のままでも音は素直で非常に良いですし、アクセサリーの使用で一段上の音が得られます。
もう少し値段を下げて、と言う事であればアナログ出力に関してはWiiM Ultraをおすすめします。サブシステムでしか聴いていませんが、値段に比べてはるかにいい音でした。
ネットワークをさらにブラッシュアップする
さて、オーディオ用ルーターを導入し、オーディオ用LAN環境をセグメント分割して構築し、オーディオ用ネットワークスイッチの導入、ホーム環境との間の光絶縁まで行って、次はどうしたら良いのでしょうか。
SFPポートをネットワーク内に介在させる
次のステップとしては、ノイズ源となり得る場所とオーディオ用ネットワークスイッチの間を光絶縁していきます。まず、NASとの間、そして、Roon環境であれば、Roon Coreとの間に光絶縁を導入します。というか、SFPポートを挟むと言った方が正確です。何故なら、経験上、場合によってはDAC(Direct Attache Cable)で繋いだ方が音が良いからです。
下図は我が家のネットワークの概念図です。我が家のオーディオ用スイッチはDELA S1ですので、SFPポートが4つあります。現状ではほとんどの機器がSFPポート経由で接続されています。
我が家での光絶縁は、現状、オーディオ環境とホームネットワークの間と、ネットワークスイッチとプレーヤー(DMP-A10)との間に限られています。これは試聴を繰り返して、DACケーブルを使った方が私が求める、鮮度の高い音、に近いと感じたからです。
上の図で、普通の矢印は通常のLANケーブル、太い双方向の矢印はSFP経由のDACケーブル、もしくはSFPポート経由の光ケーブルです。
上図で、オーディオ用スイッチとRoon Coreとの間は、わざわざメディアコンバーターを噛ませてまで、SFPポート経由としています。非常に不思議なのですが、Audio用スイッチとRoon Coreを普通にRJ45規格のLANケーブルで結ぶよりもこの方が明らかに音が良いのです。SFPポートでのクロックの扱い、RJ45とのデータ揺らぎの分布の違いが影響するとはChatくんの意見なのですが、私はイマイチ納得できずにいます。この方が音が良く感じるのは今の所なぞです。
メディアコンバータ、光絶縁装置、オーディオ用ルーター、オーディオ用スイッチの電源をできる限りグレードアップする
下図は、我が家のネットワークで電源を電池+バルクキャパシタ+小型リポバッテリー、もしくはTAISアダプターを使用している場所を電池マークで示しています。
AC電源の機器以外はほぼ全てリチウム系大出力バッテリ-+バルクキャパシタ+小型リポバッテリ-、もしくはTAISアダプターを使用しています。
実は、これらの機器の電源電圧を可能な限り一定にする事は恐ろしいほど効果的です。音が全く変わってしまいます。そもそもネットワーク機器で音質が劣化する大きな原因は、信号の品質による負荷変動が不規則に生じ、それが器機内のジッターを生じることにあると私は考えています。実際、TOP WING製のSilent Fidelity SFPが消費電力を少なくして音を良くしたり、DACケーブルが何故か音が良かったりするのは必要電力(電流)の変化幅が少なく、それによる機器内部のノイズの発生が抑えられているからだと考えられます。ここに強力な電源を持ってくると、器機内の電圧変動が最小化され、結果として器機内のノイズも最小化されるのでは無いかと思うのです。実際には、バッテリー使用は火災の危険と隣り合わせなので、おすすめしかねますが、HYPSOSを導入する、と言うのは次善の策でしょうし、もし、TAISアダプターが市販されたら是非試してみて欲しいと思います。
今回は導入、と言うか改善の順番と工夫を述べてきました。長くなったので、この辺で終わりたいと思います。






