どこにいても、できるだけいい音を音楽を聴きたくなってしまう、というのはオーディオにはまっている人間の悲しい性です。これまで私は、イヤホンで音が良さそうなら結構買ってきました。例えば、Air Pods Pro。これが高音質かどうかは議論が分かれますが、便利だし、空間オーディオは結構良い感じでした。ただ、音の細かさや、気持ちよさとは無縁の感じです。
昨年発売されたEAH AZ-80、その前身のAZ-60も所有しており、結構音が良いのでよく使っていました。AZ-80はかなり音が向上しており、日本のメーカーを誇りに思った物です。しかし、それでも聞いたときに気持ちが良いかというと全く気持ちは良くないのです。
実は、息子に買ってあげた Edifier StaxSpirit S3というヘッドホンの音が極めて気持ちが良いのです。
ただ、ノイズキャンセリングが無く、外出先のうるさい喫茶店などではちょっとイマイチでした。
仕方ないので、量販店で試聴したときに音が似ていたB&O H95を購入。
こんな感じに、最近は使って居ました。
ただ、さすがに大きいですし、スタバなどで使うにしてもちょっと恥ずかしい。かっこいい兄ちゃんならさまになるでしょうが、私は禿げかけたごま塩です。自分で考えてもかっこ良くはないです。
ワイヤレスイヤホンで、StaxSpirit S3やH95みたいな、解像感が高く、空間性もある程度感じられ、しかも低域のしまりが良く軽々と出てくる感じの音はないだろうかと、ネット上でいろいろ調べてみました。
そこで購入したのが、Devialet Gemini IIです。あの卵形スピーカーと薄型プリメインのDevialetがなんとイヤホンを作っていたのです。
このイヤホン、ほんとに聞いていて楽しいです。ベース、ギター、それぞれの音が生き生きと鳴るのです。しかも低域は量感がありながら、軽々出て締まっています。
なんで気持ちが良いんだろう。どこが違うんだろうと思って、AZ-80と比べてみました。
まず、この2機種、音の感じはよく似ています。ニュートラルで色づけは無い感じです。例えば、Sonyのノイキャン付イヤホンなどはとにかくボンつく低域と解像感が少ない高域、ドンシャリ系の音で派手に聞こえるのですが、この2つのイヤホンはそんなことはありません。
音は似ているのですが、AZ-80ではあんまり気持ちよさは感じません。
例えばこちらのふれあい。なつかしいですねえ。
Gemini IIで聞く、この曲の冒頭のアコースティックギターのアルペジオが気持ちいい。頭の中をマッサージされる感じです。
2分25秒過ぎのビブラホンもうっとりです。ボーカルの発音の細部もなんとなく分かる感じです。
一方のAZ-80はどうでしょうか。これだけ聞けばハッキリといい音です。何が文句があるの、というレベルです。冒頭のギターも良い感じ。ただ、マッサージ感には乏しいのです。もう一回聞きたくなるかというとそれは希薄です。なんでだろうか。
繰り返し両者を聞き比べてみると、明確に違うのは音の立ち上がりです。Gemini IIは、ギターの弦がピックではじかれる瞬間が明確に分かります。一方のAZ-80はその部分が曖昧です。もう一つは低域のしまりです。AZ-80はわずかに緩めです。1分30秒過ぎからベースが入ってきますが、これのメロディーラインがGemini IIでは明確に追えますし、定位がハッキリしています。Gemini IIで聞くビブラホンは、マレットで、プレートを叩いた瞬間がわかるので、きちんとそこで鳴っている感じになりますが、AZ-80では叩いた瞬間が曖昧なので、他の音に埋もれがちになります。
これらの差は僅かと言えばわずかですが、神は細部に宿る、のです。オーディオの多くの違いは非常に僅かな違いなのですが、脳が音を認識するときには微妙な差を聞き分けて、というか感じ分けて認識しているので、この細部の違いが認知の上では決定的な差を生んでしまいます。
GEMINI IIで聞く、音楽は、一つ一つの楽器が分離して、それぞれの音が明確にその楽器の個性を醸し出し、気持ちよく混ざり合う感じで、それが脳みそをマッサージされている感を生み出しているんだと思います。一方のAZ-80はその点がわずかにおよばず、そのためにマッサージ感が希薄なのだと思います。
GEMINI IIは 6.4万円、一方のAZ-80は3.6万円。差額は2.8万円。私は無理をしてもGEMINI II買った方がはるかに、というレベルで幸せになれると思います。この差はスピーカーオーディオで言えば、おそらく数十万から下手をすれば数百万円程度の差だと思います。それぐらい少なくとも私にはこの2者にはうめがたい差があるように感じます。だって、AZ-80で音が気持ちいいなんで感じたこと一度も無いんですもの。