「きみなき世界」

背中合わせの暗闇は、息づかいだけでも聞こえてくるけど、まったくきみがいなくなった世界
では、言い訳すらできないよ。去年の今頃、ぼくはきみなき世界の入り口にいた。そう実感し
ながらドアを開けた。あっという間に物語は終わり、きみのいない途方もない時間を救ってく
れた人がいた。その人もまた、去っていった。

「ANNIVERSARY」

記念日である。サラダの日ではない。これはラジオ番組から生まれた曲だ。放送中に夫婦では
ない一緒にいるカップルからの電話を受けるコーナーがあった。大半がラブホテルだの彼の部屋
からだの、まことにふざけたやつらばかりからだったが、その中に2週間後に結婚するというやつ
が登場した。それならどこから電話してきても許す。その二人に、そして今一緒に過ごしている
カップルのためにと2週間で作った曲がこれだ。うれしがって結婚式で使うとバカをみるぞ。と思っ
ていたら、いとこが使った。

「破れた恋の繕い方教えます」

できれば忘れ方のほうがありがたいのだが、もう一度だけ彼を振り向かせる恋の魔力なんて
与えられるより、もっといい男を見つけた方が、よくないか?人のことより自分の心配をしろと
いわれそうだな。。。コンサートでも幻想的な振り付けがとてもいい曲で、砂の惑星とかぶって
いる部分はあるが、大好きな曲ではある。

「14番目の月」

明日、満月をむかえる。こぼれ落ちそうな実が熟したいい女達。夜空を照らし、誰からも愛される。
まぶしいくらいに輝いていて、それでいて穏やかなのはきっと、いい太陽に照らされてるからなん
だろうね。ネットには14番目の月がいっぱい、いるような気がする。

「ハルジョオン・ヒメジョオン」

向こう岸を、歩いているのは確かに君だった。影だけでよくわからないが、確かに君だ。なんだ
そんなとこにいたのか。もっと近くにいると思っていたのに、言葉だけ寄り添ってきても、君自身
があんなに遠くにいたんじゃ、なにも聞こえないのと同じだよ。あと数時間で落ちる夕日を少しで
も追いかけたいのは判るけど、ハルジョオンに埋もれて前が見えないかもね。日没は思ったより
も早くて、時間に騙されたような気がした。そういうぼくは、古い腕時計の時間を少しも巻き戻す
ことはしなかった。

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「ベルベットイースター」

ピアノの音がとても素敵な曲。イースターの日曜日。雪の積もった道をまだ眠っている君を迎え
にいく。かじかんだ手を暖めてくれる暖炉に火を入れるのもぼくならば、暖かい紅茶を入れるの
もまた、ぼくの役目。曇りガラスの向こうに幸せがあるのなら、きみとぼくの名前を書いた跡から
そっと覗いてみよう。みんなが急ぎ足で通り過ぎていくのなら、もうすぐ教会の鐘が鳴る時間だ
ってことだよ。

「やさしさに包まれたなら」

実はこっそりとカメラを持ち込んでいた。コンサート会場入り口の厳しいチェックをくぐり抜けて、
ドキドキしながら、チャンスを伺っていた。もちろんフラッシュは、たけない。照明が最高に明る
くなったところを狙いたい。そして、ステージが白一色に染まるようなこの曲が始まったとき、
そっとカメラを握りしめた。と、天使のかっこうをしたガキがわんさかとステージに出てきた。か
わいい演出だが、今度は前の方の席のおばさま達が一斉に立ち上がり、我が子の写真撮影
をはじめた。ぼくはとっさに壁際を前に進み、「ようこ~~」と、まるで自分の子供がでているか
のように叫びながら写真を撮った。しめしめ。帰って現像した写真は知らないガキばかり写って
いて、ユーミンはどこにもいなかった。

「トランキライザー」

浅い眠りがずっと続いていた。起きていると君のことを考え、夢の中で君に会おうとするから、
深い眠りはなんだか「今」に帰ってこれなくなりそうで、浅い眠りの中にいた。苦いコーヒーを
飲んだ後、トランキライザーを半分。反対方向のベクトルの落ち着く先は、いつも浅い眠りだっ
た。白いシーツをぼんやり眺めていると思ったら、突然の暗闇がやってくる。繰り返している
うちに、こんなところで立ち止まっているうちに、君がほんとうにいなくなり、世界は灰色に染
まった。これでやっと、苦いコーヒーをやめてトランキライザーはひとつにできる。

「天国のドア」

だからぁ、ドアをみつけたって鍵がなきゃ入れない。ノブに手をかけてガチャガチャすることは
いままで何度もあったけど、鍵がない。呼び鈴を鳴らしても返事だけ。のぞき窓もないなんて
一体、どうしろと言うんだ。つまりそれは、もうとっくに誰かがドアの鍵を手に入れてるってこと
なんだろうか?気がつかなかった。。。

「冷たい雨」

「結婚する気、ある?」
「あるよ」
「うそ?」
「ほんとだよ」
「ううん、うそよ」
「そんなことないよ」
「いや、うそだと言って」
おいおい。なんだそれは。
「言ってくれなきゃ、私、結婚できない」
「誰と?」
「・・・・・」
今までゴールを目指して走ってきたマラソンランナーとこれから走り始めるランナーの間に、
冷たい雨が降り出した。はやくゴールを切りたい思いと、スタートを躊躇する思いが生まれ
た。そしてそのまま彼女はテープをきった。

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「ひこうき雲」

長い坂道は、空まで続いてる。石畳の道を昇り詰める。振り返ると地中海は、午後の光の中に
隠れていた。ミラノの街は中世のまま、ずっと時間を止めている。この街で育つと、他にはいけ
ない。そう言って笑った君の上空を、彼女を乗せた飛行機が去っていく。中世の街にひこうき雲
は似合わない。坂を下りて見上げたとき、ひと刷毛の雲は消えかかっていた。

「曇り空」

雨がやんでも空は曇ったまま。泣きやんでも、気分は同じ。一日中、外を見ていても、いっこうに
晴れ間が見えてこない。こんな日がずっと続くのか。何をみてもモノクローム。古い曲を聴いてみ
ても、あの頃には帰れない。そしてまた雨。傘はひとつしかない。それは誰かがさしかける、突然
の出会い。だけどあなたもまた、曇り空を見上げている。

「恋のスーパー・パラシューター」

パラシューターズボンが流行った時があった。当時1本10,000円程した。今思えば、もうなんで
こんな色をというようなものを、買った。パステルの縦縞のシャツを着て、海に出かけた。サマー・
ハウスで、おでんでも売っていればさぞ様になっただろう。そんな服が出てきた。探していたどてら
の下からでてきた。履いてみる。おぉ最近流行の土建屋さんが良く履いてるカラーの作業ズボンみ
たいだ。これがまた、悲しいくらいに似合う。あの頃のぼくには、似合っていたのだろうか。

「きっと言える」

「内緒にしておいてくれるなら、教えるけど」
「いやだ」
「なんでだよ。内緒にしておいてくれよ」
「絶対にいやだ」
友達の内緒話。いきなり、頼みもしないのに教えるけど、ときたもんだ。絶対に聞いてやらない。
聞いて欲しいんだけどなら聞いてやる。まして、内緒にしておけと精神的プレッシャーをかけると
は、おまえは何様だ。そうそう、あの弟は元気か?
「実は、・・・」
やめろっちゅうに。しゃべるのは勝手だが、内緒になんかしないぞ。
「仕事をやめたんだ。嫁には内緒で。。。」
う~ん、最近どうりでよくうちの事務所にくると思ってた。ひとりで昼飯をたべるのがよっぽど寂し
いのかと思っていたが、それだけじゃなかったんだ。
「今日、嫁さんに電話してやる」
「ひえ~、それだけは勘弁してくれ」
「じゃ、自分で言え」
「・・・・・」
「嫁さんに言うまで、ここには来るな。共犯になっちまう」
あれからあいつ、来ないなぁ。

「紙ヒコーキ」

こどもの時、鶴は折り紙で、兜は新聞紙で作った。はて?紙ヒコーキはなんで作っていたんだろう。
新聞の広告のような気もするし、ノートを破っていたような気もする。でも、結構上質な紙を使って
いた記憶もある。思い出した。ぼくの場合はわら半紙だ。先生がミスプリとか、使い終わって余った
試験用紙をいつも机の端に積み上げて、落書きやメモに使いなさいと置いていた。それをしこたま
キープして、紙ヒコーキを作ったり、ノートがわりに使っていた。この先生はぼくたちのことが好きな
のか、当時、そういう事情だったのかしらないが、小学校の4年生まではクラス替えがあったのに
5~6年とそのまま持ち上がりやがった。そして忘れもしない6年生の初日。いきなり性教育をは
じめた。しかも、おしべとめしべではなく、にわとりを例にだして説明を始めた。しかも主体はにわ
とりだった。
「人間が興奮して頬が赤くなるように、にわとりのトサカも赤くなります」
という風に、なぜにわとりが赤くなるのか、なぜたまごを産むのか。人間と比較して、くわしくにわ
とりを語った。みんななにがなんだかわからなくて、なんだか自分がにわとりのような気さえして
きた。ぼくはしばらく、女子がにわとりに見えてしかたなかった。「玉子、産んでみろ~~」とか、
大変失礼なことを口走っていた。
本当に、ごめんね。ああ、やっとあやまることができてホッとした。

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「雨の街を」

街灯に照らされた雨は、結構高い位置から降り注いでいるようだった。ポストの上に君の名字。
靴に染み込んできた冷たさが、もう長い間ここに立っていることを教える。冷やさなければいけな
い頭以外は、もうびしょぬれ。傘を持つ手は震え、カバンを持つ手は感覚がない。でも、このまま
じゃ一歩も歩けないんだ。雨の街は、どこへいけばいいのか、わからない。泣いて済むなら、こん
なにいい街はないんだけどね。

「返事はいらない」

夏に当たった懸賞品がやっと届いた。Tシャツかキーホルダーを送りますと書いてあったが、後者
が届いた。ペットボトルにくじが付いていて、捲ってみると当たりだった。ブラボー。あの感動から
3月。2週間以内に送ると説明書きにあったのに、このざまだ。途中、応募者が多くて製造が遅れ
ている。迷惑かけてすまん、というハガキが来た。つまり、当たりを引いても送ってこない奴が多い
と踏んでいたが、思いの外、物欲しい奴が多かった。こういうことらしい。当たり前だ。非売品の収
集家が増えてるんだから、いつ高く売れるか知れやしないのに。だから、貰った方も使わない。全
国の、賞品はどうなってますか?に返事はいらない。その経費で2個送ってくれるほうが、誠意が
あると思わないか?

「生まれた街で」

曲の感想を全然書いてない。その上、雑記とほとんどかわらなくなってきている。まして、おもい
つくままに書いていたので、曲名が被りそうになって、収拾がつかない。だから誰も気づかないと
思って、前回から古いアルバムから順にまだ使っていないタイトルをなぞっている。言わなければ
いいものを。。。初心を忘れている。何かをやろうと思った気持ちが生まれた時に、また帰れるだろ
うか?

「海をみていた午後」

須磨海岸は、ラッキーハッピィーな場所だった。友達と二人で、仕事を休んでは出かけた。サング
ラスをかけて、鼻の下を伸ばしていた。一般論として、男とは実にいやしい生き物だ。互いに目標
物を決めて、堪能していたが、ある時気が付いた。こいつのサングラスは色が薄い。ぼくのは、ミ
ラーになっているやつだったが、こいつのは1,000円位のUVカットがついていないやつだった。
観察していると、目を大きく見開き、顔は動かさないがキョロキョロしているのがよくわかる。ぼくは
生まれて初めて変質者の横顔を見たような気がした。もちろん、注意などしない。

「あなただけのもの」

そうなんだよ。ぼくは、今でもきっと君だけのものなんだよ。なんて言ったら、こんなに迷惑な話は
ないだろうなぁ。逆に、あなただけのものよと言って、今、他の人と一緒にいるんだから、かなわな
い。でも、あの時はお互いそう思えたことが幸せだよね。あの幸福感は確かに、あなたとだけのも
のだったはずだから。。。

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「魔法の鏡」

わざわざ魔法の鏡で見るほどのこともない、とりたてて変化のない生活をしている。世の中が
例え、180度変わっても、ぼくの生活サイクルなんてきっと代わり映えしない。もしかしたらリ
サイクルされちゃってるかもしれないけど。。。とにかくこんな鏡はなんだか怪しげにゴミ捨て場
に捨ててあったりして、誰かが近づくと、キラリと光そうな気がする。ぼくが通り過ぎようとした時
裏返るんじゃないぞ。そんなことしたら、踏みつぶしてやる~~。

「たぶんあなたはむかえにこない」

煮詰まった恋の最後の答えは、案外一緒に出すものじゃなくて、行けるはずのない場所や時間
に待ち合わせをすることなのかもしれない。無理なお願いを無理矢理叶えることは、きっと罪なん
だろうね。傷つける言い訳と傷ついた言い訳が同じ場所にあることのほうが大切なこともある。
これも最後の思いやりなのかもね。。。

「私のフランソワーズ」

どんなに流行の歌を聴いたって、毎晩ヒッキを聞いていたって、結局はいつものナンバーが聞き
たくなるものなんだなぁ。もうこころに染み込んじゃっているアーティストは一生付いて行くしかな
い。遠回りしても、立ち止まっても最後に帰る場所はそこしかない。

「旅立つ秋」

心穏やかな旅立ちだったとおもう。きっともう帰ってこないつもりなのもわかっている。ただ、行き
先だけは教えてほしい。生きるために、また新しい誰かに出会うために選んだ道だと信じたい。
しばらくは、誰も愛さなくてもいいから自分だけは愛してやれ。そんなに少ない荷物でいいのか?
いつかまた戻ってきたら、酒でも飲もう。
彼は言った。
「悪魔のような女は、どこにでもいるもんさ」
僕は言った。
「悪魔にあったことがあるのか?」
彼はにっこりと笑ってくれた。ぼくはよかったと思っている。そんな女とさよならしてくれて。ただ、
彼は絶対に忘れられないらしい。彼女でなきゃだめらしい。けどね、お前じゃなきゃだめな子も
きっと現れるんだよ。その時、その気持ちをちゃんとわかってやれよ。

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「あの日にかえりたい」

そこから前の自分とそこから今に続く自分の分岐点があのかえりたい日。つまり幸福の絶頂
なのかな?だけど、そんなとき、ぼくなら舞い上がって、熱に浮かされたようになって、あとで
思い出したりして堪能できないほどハイになっているに違いない。幸せの絶頂のほんのすこし
手前がいいね。予感と期待に挟まれて前しかみえない。そんな思い出せるあの日は、いつか
また来るのだろうか?

「少しだけ片思い」

なんとなく過ごしていて、ふいをつかれるとそのことが頭を離れない。離れないから考える。
考えるから気になる。気になるから頭を離れない。一言一言が気になりだす。一言一言に
気を使う。おぼろげな心に変化に気が付いたときはもう遅い。こんな恋はしんどい。早期発
見・早期治療ができない。なんとなく気になってる自分自身に気づいて、さりげなくお話を
する。少しだけ片思いなら、きっと毎日が楽しい。お互いに好きになったら、いつか終わりが
来たときに憎み合わなきゃいけないかもしれない。同時に終わることのない物語なんて、
不器用な人にはつらすぎる。だから、少しだけ片思いならきっと毎日が楽しい。
あの時、あんなに素敵な人は、いまも何一つ変わっていない。


「ルージュの伝言」

ぼくは、お化粧があんまり好きじゃない。5分くらいでササッと終わるくらいの感じが好きだ。
後は、いつでも走り出せそうな服装で、冬の街を背中を丸めていっしょに歩きたい。なのに
親族一同の女性達は、やたら化粧が濃くて、塗りたくる時間も長い。出来上がりのあまりの
美しさにみとれて、時間を忘れているなら許そう。でも、もちろんそうじゃない。基礎編でじっ
くり時間をかけた後、応用編で倍かかる。しかも、いくつになっても同じ調子だ。ぼくは2歳の
時に、化粧に夢中になっていた叔母におもちゃとしてヘアスプレーのふたを手渡され、丸飲み
してしまい、のどに詰まらせてあやうく死にかけたことがあった。
「あ、ラッキーですね。これ、ふたが逆に入っていたら、なかなか取れなかったですよ」
と医者に言われたらしく、親戚一同に
「ぼいちゃん、運がいいから」
といまだに言われる。ぼくより後から生まれてきた奴らにも言われる。しかしぼくはもちろん
覚えていない。ただ、子供心に記憶にあるのは、三面鏡の不思議さと色とりどりにならんだ
とてもきれいなルージュの匂いだけ。

「翳りゆく部屋」

確か西日がさしていた。断片的な記憶をたどると、ポツンとひとりで立っていた。なぜか
目の前にハンドルのない三輪車。斜め前には大きな病院が見える新聞屋の二階の部屋
の前。よそゆきの服を着たぼく。いつの間にか、つきあたりのコンクリートの急な階段に向
かって三輪車を漕いでいる。はじめて来た場所。左に曲がったとたんに階段だとはいちい
ち覚えていない。ハンドルもなければ、もちろんブレーキもない。宙を舞う。三輪車のもの
すごい衝撃音。薄暗い階段下。親の叫び声。
「これね。もう少し右だったら、頭蓋骨が割れてましたよ」
「そ、そうですか?」
「おくさんね。頭を打ってるのに、ほら血がでてるでしょ?そのまま持って来ちゃだめですよ」
「もう、びっくりして」
3針ほど縫ったそうだ。他に外傷はなかった。その階段を登り母の友人の家のベランダから
窓の外を見たとき、まだ夕暮れだった。三輪車は横倒しにされて窓の下に置いてあった。
さっきまでの自分を捜してみたが、いなかった。

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「コバルト・アワー」

夢の世界を、さぁ飛び越えて1960年へ。。。
こんな歌詞ではじまるこの曲は、コンサートでは埠頭を渡る風と聞き違うくらい前奏が似ている。
初期のこの作品には、後の名曲の要素がたっぷりと詰め込まれている。どこがと言われても、
困るのだが、歌詞や音楽性その他もろもろのポップな曲のおおもとであることは間違いない。
ユーミン・ワールド入門にはかかせないと断言しておこう。

「花紀行」

見知らぬ街をひとりあるいたら、風は両手に花びら散らす。。。
こんな歌詞ではじまるこの曲は、ってさっきと出だしが同じか?それぞれの歌にいろんな思い出
があるけど、これは卒業式でみんなで歌った思い出がある。なんとも寂しい歌を歌わされたもん
だが、中学の校門を最後に出たとき、明日からの希望より今日からひとりになってしまう寂寥感
のようなものを感じてしまった。なつかしさは唯、やさしさやたのしさだけじゃなく、さびしさの中に
もそっといる。さびしい思いも、大事にしなくちゃ。。。

「チャニーズ・スープ」

椅子に座って爪を立てプチオニオンの。。。
こんな歌詞ではじまるこの曲は、ってきっともういちどこのパターンでやるだろうときっとあなたも
思ったはずだから、つい。
この曲は、出だしが絶対に「椅子」であり「イス」ではない。ロッキング・チェアーなのか大きな食
卓に無造作に並べられた丸椅子かもしれない。いずれにせよ、木製でなければならない。なの
にプチオニオンだとかチャイニーズ・スープだとかという言葉でますます「椅子」から離れていきそ
うな歌詞の展開が絶妙。アンティークな中に古道具があっても、いいじゃない?

「雨のスティション」

待ち合わせの確認の電話をしたときは、まだ雨が降っていた。駅に近づくにつれ少しずつ雲は
薄れ、改札を出たときは傘も乾いていた。ぼくのほうが遠くから来たのに先に着いて待つ。ひっ
きりなしに到着する電車から、人が押し出されて来るたびに緊張する。誰ひとり見逃さないよう
にと、目が充血するくらいに改札口を見つめていた。始発の富山行きサンダーバードの発車を
知らせるベルとほとんど同時に、目の前に君がいた。季節はまだ、秋がはじまったばかりの頃。
彼女は二つの物語をそっとバックに隠していた。ぼくはほんとに短い短編集を読んだ。だけど、
短いくせになにも覚えていない。まして、もうひとつの物語が分厚いことを祈る気もしない。
ただ、あの日はあの後、また雨が降ったのか、止んだままだったのか?そんなことすら思い出
せない日だったことだけは確かなようだ。。。

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「アフリカへ行きたい」

実はこのタイトルで、躓いていた。アフリカには行ったこともなければ行きたいと思ったことも
ない。知らないことのほうが多いのが人の人生だが、別に知らなくてもいいことが多いのも
また人生だろう。じゃ~まぁそういうことで。。。いいのかなぁ。。。

「さざ波」

実はこのタイトルでも、躓いていた。人生には、いろいろな波があって、大きな波はよく覚え
ているけれど、さざ波程度のいざこざはよく覚えていない。別に覚えていなくてもいいことが
多いのもまた人生だろう。じゃぁ~まぁそういうことで。。。いいのかなぁ。。。雑記の書きすぎ
かもなぁ。。。

「さみしさのゆくえ」

こういうタイトルこそ、ドラマが必要だ。唐突にアフリカに行きたいと言われても、ほならいって
おいでとしか言いようがない。さざ波なんて小さなものではなく、大荒れ日本海の波打ち際の
方が大河ドラマが書けるような気がする。それに比べてさみしさのゆくえである。行方を気に
する限りはきっと不明なんだろう。サスペンスの匂いすらする。その不明者がさみしさときたら
もう、探しようがない難解なキーワードだ。そんなもん、ぼくに解けるわけがない。ただ、その
キーワードは誰もが抱えている。心のどこか片隅にじっとしていて突然表面に現れたりする。
でもそのキーワードを知ったところで、誰もたぶん幸せにはなれない。開けてみたって、そこに
は自分の抱えてるさみしさしかないなんて、つらいだけだろう?だから必要なときにすこしだけ
味わって立ち直る。少ししょっぱいこころの処方箋は、どこかにそっとしまっておこう。。。

「朝日の中で微笑んで」

はじめて女性と朝を迎えた日はいつだっただろう?あ~そうか。そんなことまだ一度もないや!
という嘘は置いといて。。。
「親になんて言ってあるんだ?」
「内緒」
「なんでだよ~」
「別に知らなくてもいいじゃん」
「まぁな。けど、気になるじゃん」
「ばれたとき、代わりに言い訳してくれる?」
「ばれそうかどうか気になるじゃん」
「大丈夫」
「ほんとかぁ?」
地元ではまずいので、前もって彼女が友達から情報を仕入れていた某所に泊まることにした。
歌劇で有名な町のひとつ手前の駅で電車を降りた。ぼくは彼女からメモを渡された。降りる駅
と某所の名前が書いてある。その下にタクシーで15分くらい。19:00に行け!と書いてあっ
た。え?タクシー?。駅前で彼女はサッサと乗り込んで顔を急いで伏せた。
「お客さん。どちらまで?」
「え?あの~、え~~と。それがその~~」
「は?」
「あの~タクシーで15分くらいの所なんですけど、19:00までに着きますかね」
「今、18:30だから大丈夫だと思いますけど、どこ?」
「どこといわれましても・・・」
「はぁ?」
「あ、いや。ここにお願いします」
メモを渡した。運転手は本当にうれしそうな楽しそうな顔でニヤリと笑った。
「いいね、いいねぇ。若い人はいいねぇ。あ~~~いい!」
たしかに15分。しかしずっといいねの連発だった。無事に到着した。入ろうとしたぼくを彼女は
制止した。
「19:00になったら入ろう」
「なんでだよ~~。腹へったよ~~」
15分も建物の前でお預けをされた末。時間が来たら彼女は先に中に入っていった。部屋を選
んでエレベーターに乗る。四角い箱の赤い絨毯の隅っこに紙片が落ちていた。それを彼女が拾
った。開けてみる。「先に着いたので○○に入室。着いたら電話してね」と、彼女の友達からの
手紙だった。。。。つづく。。かな?

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「何もなかったように」

部屋につくなり、電話。ずっと電話。お腹がすいたというのに電話。気がついたらぼくは寝ていた。
目が覚めたら、夜中だった。食べ散らかされた弁当。寝っころがっている、彼女と空の缶ビール。
サンドイッチと缶コーヒー。静かにシャワーを浴びる。初めて聞く、女のイビキ。揺すっても起きない。
翌朝、モーニングコールで起こされる。ほとんど同時に電話。出る時間を約束してやがる。15分後
だと。慌てて身支度。二組のカップルは何もなかったように、タクシーを拾い駅へと向かう。だって
本当に何もなかったんだもんとつぶやく。。。

「天気雨」

前を歩く君。思ったより肩が小さい。半袖から出た腕。華奢で細い。いつもジーンズばかり履い
ていた。飛び跳ねるように歩く。こっちが立ち止まってもおかまいなし。ドンドン先に進む。突然
振り向く。そこに、天気雨。
「あれ、雨?」
「あ~、すぐ止むよ」
「どうしてわかるの」
「だって、晴れてるから」
「どうして晴れているのに雨が降るの?」
「さよならの時が近づいているからだよ」
本格的に降り始めていたことに、気づかなかった二人だった。。。

「避暑地の出来事」

「おい、暑いじゃないか」
「だって、夏だもん」
「カラっと晴れていて涼しいと言ったじゃないか」
「やかましいわね。男のくせに」
「・・・・・」
夏の旅は避暑のためだと思っていたが、どこに行っても暑い。どこそこよりマシという程度。
だったら、家にいてクーラーにあたっている方が経済的だ。

「晩夏」(ひとりの季節)

アルバム「14番目の月」の中の一曲。次の夜から欠ける満月より明日満ちる14番目の
月が好き。なのに、ゆく夏を思うこの歌はスローな名曲。真昼の汗をすべてシャワーで流し
た後、夕日がもう少しで落ちる時間。わずかな夕涼みは心の休息。浴衣姿にうちわ。また
いつもの夏が終わろうとしていた。今年もまた、いつもの夏がやってくるのだろうか。。。

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●9月には帰らない

ここからは、「紅雀」というアルバム曲に入る。ちょうど、ユーミンの名前が、荒井から松任谷
に変わった時だ。ファンとしてはいささかの違和感は感じたものの、別に結婚しないで~とか
とうとう彼女は他の男のものになっちまったとか、全然そういう気持ちにはならなかった。そし
て、このアルバム以降の圧倒的なパワーを思うと、いい結婚だったんだろうなと思う。さて本
題に入ろう。9月には帰らないそうだ。長い夏休みでは足りないのか?それとも田舎の両親
から帰って来いと言われたが、9月は勘弁してくれということか、いづれにせよ9月にはという
ことは、それ以降には帰る予定らしい。ホッとした。えっ?歌が思い出せないんだろうって?
いや、9月には思い出しているとおもうけど。。。

●私なしでも  

確かに、君なしでもぼくはこうして生きている。さみしくてたまらない夜が何日も続いたけれど
仕事をしていても、ふとした拍子(4拍子か?)に、君がいなくなった現実に泣きそうになったり
もしたけれど、その悲しみはきっと恋愛の終わりではなく誰かと比べて捨て去られたこと。ぼく
が必要とされなかった、人としての挫折感のほうが大きかったのかもしれない。
あなたは「私なしでも」平気で生きていけるだろうけど、あの人は「私なしでは」生きられない。
君は、ぼくなしでも、平気なんだね。君はあの人なしでは生きられない。だったら、裏切ったと
思う気持ちを、あの人のせいにしないで、去っていけばいいのに。。。

●地中海の感傷  

ベニス辺りで、1週間くらいのんびり過ごすことができれば感傷に浸ることもできるだろうが
大抵の場合、1日自由行動とかで、後はもう見物・見物・見物である。この曲ではないけれ
ど、ユーミンの曲が主題歌に使われた映画の舞台となった町はまさに地中海沿いの田舎町。
凶悪犯罪を重ねる17才くらいのやつらは、物心ついたころに見ているはずなんだが、やさし
い心を養う反面、やはり特別な人にしかできないことへの憧れもうえつけたんだろうか?でも
みんなが、ほうきに乗って飛べる宅急便屋になってもねぇ。。。

●紅雀  

このアルバムから、いやこの曲あたりから、ひとつの流れが出来上がっているように思える。
東南アジアや南米など、暑い国の音楽。でも、砂漠や星だけが頼りの夜は漠然とした明日
がみえない孤独を感じずにはいられない。テンポのよさでは「恋の1時間は孤独の千年」や
「インカの花嫁」スローな曲では「バビロン」や「時はかげろう」がお気に入りだ。こういった曲
から脈々と流れるメッセージをしっかりと受けとめたい。え?紅雀?歌が思い出せないんだろ
うって?いや、いま久しぶりに聞いているところなんだ。。。


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●罪と罰

行いと結果とでも言えばいいのだろうか?罪の軽重に対して当然のように罰があるとするなら
罰をもって、自分の罪の重さと愚かさを知ることも必要だと思う。少年だからここまでという考え
ではなくて、あなたの犯した罪は実刑10年です。しかし、年齢的に人格形成が必要かつ可能
なので、こういう処置をします。少年院3年・刑務所3年・保護措置4年とかカウンセリング期間
を長期に渡り設けるとか、ひと工夫欲しいなぁ。。。
 
●出さない手紙  

ここ一番に弱いぼくは、出さなかった手紙というかメールを数多く抱える。心の中だけで書いた
物、文章にまでした物。いずれも支離滅裂なまま、ほっぽってある。しかも誰に書いたかわか
らないものも多数あったので、削除した。出せないのか、出さないのか。微妙な所ではあるけ
ど最初から出すつもりがないのなら、書かない方がいいよねぇ。。。

●白い朝まで

勇気というものを持てなくて、思い詰めているのに遊んでいるふりをする。何度も繰り返して
いるうちに、愛し方が下手になる。天の邪鬼なバリアは、自分自身もあと1歩を踏みだせな
くしてしまう。考え方が生き方に変わり、バリアは常に張られ、見えない鳥かごの中に閉じ
こめられている錯覚は朝のもやに似ている。でも、中から開けられればそれでいいよね。
 
●LAUNDRY-GATEの想い出  

どこなんだろう?洗濯機の入り口?少しだけ一人暮らしをしていたときに、二層式洗濯機を
使っていた。洗濯物を放り込んで、洗剤を適当に入れる。タイマーを回せば、洗いすすぎの
開始。土曜日の午後は、ユーミンのサタデーアドベンチャーを聞きながら少し開けたサッシ
の向こうで、音が止まるのをうつらうつらしながら待っていた。水の音、夕方のやさしい日差
し、いつの間にか止まった洗濯機。セメントで固められた物干し台のある小さな庭。明日する
ことがないので、干すのはよく日曜日に回していたなぁ。。。

●残されたもの

涙、後悔、苦い思い出、自分自身。ろくなものが、残っていない。。。。。

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●真冬のサーファー  

ポップな歌なんだけど、片思いのせつない気持ちが伝わってくる。
昔よく、和歌浦というところ釣りに行った。ある夏、友人の一人が
サーフィンを持ってきたので、みんなでかわるがわる乗ってみた。
帆があるタイプで、 足をひっかけて、腕の力だけではコントロール
が難しかった。
「お~~い、ぼい。もしかして、初めてか?」
「お~~、初めて~~」
「向きの変え方、知ってるかぁ?」
「知らない~~」
沖に流される途中、真冬でなくてよかったと思いながら海に飛び
込んだ。
「な、なにすんだ。バカヤロ~」
持ち主の悲鳴が聞こえたような気がしたけど、潜ったまま岸に急
いだ。。。。

●静かなまぼろし  

思い入れのある曲名の時は、記憶が勝手に蘇ってくる。コンサート
では弾き語りの定番。初めてこの曲を聴いたときはまだ高校生くら
いで、恋愛ってなんともまぁ時として意地悪な運命をもたらすものな
んだろうと、印象深かった。今の恋と前の恋。時間という距離は意
外なほどあてにならなくて、一瞬にしてあの日に気持ちは帰れる。

●魔法のくすり

くすりと言えば、副作用が気になる。前の恋を忘れるためには、新
しい恋を見つけろとよく言うような気がするが、そうそう簡単に見つ
かるものでもないだろう。そういうときこそ、この魔法のくすりが効く
のかもしれない。恋の悩み答えられるほど、火の粉くぐって来た訳
じゃないんだけど、前の彼を思い出しなさい。この歌詞って、副作
用というよりは、ショック療法かもね。。。

●キャサリン

ぼくは、人の名前や顔を覚えるのが苦手だ。だけど、1時間ほど
仕事の話をしたのに、翌日顔を覚えてないと言われ、その後何
度も事あるごとに、覚えてないと言われ続けると、その人とは一
緒に仕事なんてしたくなくなるよね。。。
 

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●Corvett1954

めずらしいデュエットの曲。中央フリーウェイとはまた違った味がある
車が宙空目差して飛び出していくような歌詞と曲。君の赤い爪のよう
な、ライトは流線型。鮮麗された、都会の大人の恋の雰囲気が漂う。
満点の夜空の中を、2人だけで駆け抜けることが出来たらいいね。
 
●入江の午後3時

真冬のサーファーを始め、渚にまつわる曲の中のひとつ。まだ太陽は
高く、なのに帰る時間が近づいている。そんな時間を切り取った曲。
濡れたシャツを絞ってあなたが待つ場所へと急ぐ。妙になまめかしい
歌だと思うのはぼくだけか?
 
●かんらん車

目の前に1枚の絵画を思い浮かべる。窓辺に置いたイスにもたれて
いる少女。窓の外は夕焼け空。山の上からは私を忘れる頃思い出と
なる車が降りてくる。川向こうの街の風景は、ハルジョンに埋もれ、テ
ラスでは老夫婦が経る時を過ごす。落ちていく夕日の薄暗い雲の間
に、寂しげなかんらん車。少女の想いはついつい今日の昼に見た静
かなまぼろしを追いかける。
 
●12階のこいびと

アパートメントのそれぞれの窓から、それぞれの生活が見えるとした
ら、きっと一日中あきないだろう。ただ、なんとはない生活はほとんど
自分と一緒でつまらないかも知れないが、同じアパートメントに住ん
でいると、今何しているのか判らない不安に襲われる。

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●未来は霧の中に

この曲の歌詞のなかで「未来は夢をみている」という一節が好きだ。
いつも、夢を見ていてほしよね。生きることは、未来に向かうことで
その未来がいつも夢をみているなんて素敵なことだ。夢とは可能
性であり、決して約束された幸せじゃないんだろうけどね。。。
 
●青いエアメイル

「5年いえ8年経って訪ねたら 声もかけれぬほど 
ステキな人でいて欲しい」
この曲を初めて聞いたとき、このフレーズを聞いて、青年実業家に
なっている自分を思い浮かべた。結局誰でも代わりができる社会
の部品となり、ただのおっさんへの道を突き進んでいる。もう一度
今から8年後の自分を思い浮かべてみても、もう手遅れか。。。。

●ツバメのように  

もう会えない彼女の最後の旅。この一言で主人公は空に飛んだと
思わせる。途中で引き返したくなったら、地面すれすれに、スィーと
大空に引き返すことができる幻想を、ふわふわと無責任にネットを
飛び交ってるぼくたちは持っている。現実は叩きつけられる無様な
自分しかいないというのに。。。

●最後の春休み

学年どころか通う学校そのものが変わる時期でもある。徒歩通学が
電車や自転車に変わり、大人達の群と一緒に歩く距離が長くなる。
態度のでかい学生の横をすり抜けるように駅に急ぐ。背中を丸めた
オヤジ達は、自分の学生時代はどうだったんだろう。きっと、大人が
怖くて、その横をすり抜けて居たに違いない。ということは、今の学
生が社会人になったとき、どうせ態度はでかいだろうから、今のオヤ
ジ達の世代の子供たちは、やっぱり親と同じようにすり抜けるように
歩くはず。つまり、道の真ん中を歩く家庭とすり抜ける家庭に分類さ
れてるんだねぇ。。。

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●甘い予感

バレンタインの数日前。その会話はかわされた。
「今年、チョコレートくれるの?」
「ううん、用意してない」
「そっかぁ。。。」
「あれは、本命だけにあげるものでしょ?」
嫁との会話なんて、こんなものだ。。。  

●帰愁  

オリーブというアルバムのなかで、この曲だけが異彩を放っている。
未来やおとぎ話的な歌が多いなかで、ひときは現実的でもの悲しい。
小さい時からずっと過ごした故郷で失恋すると、居られなくなり帰れ
なくなる。そして行き場を失った心は彷徨いつづけ、一生つきまとう。
自分の中のストーカーほどやっかいなものはない。
 
●風の中の栗毛

そういえば、小学校6年生の時に夢中になった読み物がいくつか
あった。荒野の叫び・白い牙・ノストラダムスの大予言、そしてやじ
さん・きたさん。小学館の6年生に連載されていて毎月が楽しみだ
った。なぜか小話というか短い落語も連載されていて、それを覚え
てクリスマス会などの出し物として、はずかしげもなくやっていた。
クラスのほとんどが「黒猫のタンゴ」とかを、しかも複数で歌う中、
ぼくだけ演題が落語だった。しかも、みんな前もって本で読んでる
のでぜんぜん受けなかった。しかし、先生だけは爆笑していた。
あんた、小学6年生を読んでなかっただろ?
 
●稲妻の少女  

やじさん・きたさんといえば、東海道中ひざくりげ。もちろん風の中
を旅したことだろう。さて、稲妻の少女と言えばなんだろう?何も思
い浮かばないので、仕方なくオリーブのCDを引っ張り出してきた。
歌詞カードを見る。曲を聴く。昔、ギターを引いてた頃に買った楽譜
まで出てきた。小器用なぼくは、ある程度まではうまくこなす。しか
し一度壁に当たると、あきらめてしまう。人生そのものだ。楽譜には
所々なにか書いてあった。あまりに汚い字なので読めないが結構
真剣に練習してたようだ。と思ったら、数学の記号だった。。。

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「恋人がサンタクロース」

突然、仲の良かったおねえさんが嫁いで行った。あんた、彼氏いたのか?当時25~6才の彼女は
15才のぼくからは、すっごい大人に思えた。よく、近所のお好み焼き屋で牛乳を奢って貰った。ほ
んとうは、モダン焼きの方がうれしいのだが、育ち盛りには牛乳を飲むといいと言ってよく奢っても
らった。アイスクリームやチェリオやコーヒー牛乳の入っているボックスにもたれて、閉店間際に向かい合っておしゃべりした。特に夏は、薄い水色のワンピースを好んで着ていた。うっすらと浮かぶ下
着の線にドキドキしたのを、覚えている。3年後。子供を抱いてお好み焼き屋を訪ねてきた。
立派なおばちゃんになっていた。

「瞳を閉じて」

離島の学校の校歌として作られたことを、コンサートMCではじめて知った。うかつだった。
もし、もっとはやく知っていたら転校していたのに。。。


「タイフーン」

風の音で目覚めた夜明けは薄明かり、あなたの肩にかけるシーツ。
スローな物語の出だしが大好きな曲。「最後の嘘」に風景が似ている。白い建物に波の音。
揺れる椰子の木。小さな島の高台。リゾート地の外れに誰かが落とした物語。どうして?
結実しない恋は夢のような空間をいったりきたりしかできないのだろう。それは、結末まで
ページをとばしたり、栞を挟んでそのままにしておけるからかもしれない。

「時をかける少女」「時のカンツォーネ」

ご存じ映画の主題歌。歌詞は同じのアナザーバージョン。といえば、チューリップの財津とオフコース
の小田と3人で歌った「今だから」を思い出す。A面が有名だが、B面の「今だから」アナザーバージョン
も静かな曲調がとてもいい。
「今だから」はカラオケ嫌いのぼくが、久々に覚えレパートリィーに加えた1曲だった。その前に覚えた
曲は「スニィーカーブルース」だった。もちろん当時は、スナックでカラオケの時代。やっと、カラオケ専
門店ができはじめたとはいえ、1時間2,500円、飲み放題・歌い放題だった。延長料金は高い、混ん
でるので2曲歌えないわ、おまけに曲がかぶりっぱなしだった。
「6番テーブル。スニーカーブルース、入ります。その次は、14番さん。あおい珊瑚礁」
6番テーブルのぼくがスックと立ち上がりマイクを探す。今、スニーカーブルースを熱唱している22番
テーブルの奴と目が合う。自信満々の6番。ほんとかよ~かんべんしてくれよ~の22番。まるで、縄
張り争いをする動物の一瞬の戦いである。女性客のみのテーブルが3つ。男ばかりが11。あとは、
アベックか会社帰りの同僚達。50~60人がいる大フロア。結婚式の二次会か?とにかく、聞き覚え
のあるイントロが流れてきた。何のウイスキィーかわからない奴をコーラで割った安物の酒をグイと飲
む。いきなり、はずす。あれ?曲に乗れない。あちらこちらから失笑。苦笑ではない。なのに身体が勝
手に踊る。あれ?曲にあってない。
「失礼しました~。ギンギラギンにさりげなく。入れちゃいました」
店長、殺すぞ。
「すみません。次の次ぎの次ぎに入れます。お待ち下さいね。じゃ、14番さん。あおい珊瑚礁ですね」
こんなこともよくあった懐かしい時代だった。
「じゃ、次ぎ。13番さん。スニーカーブルース」
それでも、帰らず歌うだけ歌った。6番テーブルの3人は意地になってずっとこの曲をリクエストした。

そうそう、「今だから」。スナックのお姉ちゃんはみんな知らなかった。未だに歌ったことがない。

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「オータムパーク」

ダディダのコンサートで一番印象的だった曲。「バビロン」と名盤VOYAGERから「不思議な体験」
がシンクロされて歌われたり、「リインカーネーション」のパワーに圧倒された。そんななかで、この
しっとりと秋の公園を散策するような曲が一番印象的だった。折り重なるような落ち葉。まだ紅葉
が残る木々の間でベンチに座る。穏やかな休日。色濃く過ぎる時間のなかで、永遠を思う二人。
人にとって永遠はひとつではない。永遠に好きであるつづけるもの。永遠に大切な物。
どちらか先にこの世を去る日がきても、大好きなまなざしを私はずっと覚えていたい。
自分にとっての永遠は短く区切られた人生という時間。永遠とは以外に短いものかもしれない。

「卒業写真」

皮の表紙でもなければ、悲しいことがあってもみない卒業写真。10年近く、コンサートのアンコール
最後の曲。ピアノだけで歌ってくれる。「これが最後だよ。ここにいるみんなと一緒にいるのは」と教
える曲。そして新しいアルバムとぼくたちファンは1年間過ごす。

「ガールフレンズ」「続ガールフレンズ」

めずらしく続編と銘打っている。あ、この曲。あの曲の続きかな?とか。こりゃあの曲のアンサーソ
ングだなと思うことがある。ユーミン率いる女の子バンドのオープニングが主流だったころ、ぼくは
大阪城ホールの前から7番目の席にいた。いつもは、15~20が多いのだがたまには思いっきり
近くで見たかった。3曲歌い終わった後、ステージから女の子バンド(4人)が帽子を客席に向かっ
て投げた。飛びついたぼくは、手の先に当たったのだが取り逃がした。くやしすぎる。次の日に見
にいく予定のいとこに早速連絡した。彼女は前から5番目のど真ん中。虫取り網を持っていったそ
うだ。もちろん入り口で没収された。

「VOYAGER ~日付のない墓標~」

シングルしかなく、アルバムに入ってない曲があった。そのなかの1曲。あったというのは、ベスト
アルバム「ノイエムジーク」に収録されたからだ。
1列12番。一番前の席。中央と左端の丁度真ん中。大阪城ホール。後のコンサート・ビデオとな
った場所にいた。写ってなかったが幸運。この曲には特別な思い入れがある。昔付き合っていた
奴が三浦友和の大ファンだった。大阪厚生年金会館の立ち見に無理矢理連れて行かれたり、映
画館のももえともかずまつり(伊豆の踊り子から ホワイトラブまで一挙放映)に朝5:30から夜の
11:20分まで連れて行かれたりした。彼女は、友和のラジオ番組の対戦クイズコーナーに出たこ
とがあった。
「今、スタジオに4人います。さて、みんなでコーヒーを飲んでいます。何杯砂糖を入れたでしょう?」
4択の先攻である。楽勝。じっとラジオに耳を傾ける。
「では、0、2、4、砂糖ポット全部の中から選んで下さい。まず先行の神戸の○○ちゃん」
この○○ちゃんで舞い上がったらしい。
「はい、え~と、0」
「あ、残念でした。では後攻の方。え?2?あ~残念。4人いるんですよ~」
むこうも舞い上がったらしい。
「さぁ、神戸の○○ちゃん。答えをどうぞ~~!!!」
「えと、全部ぅ~」
放送事故と思われてはいけないので、ラジオは特に間を空けてはいけない、にもかかわらず長い
空虚な時間が流れた。少なくともぼくにとってはものすごく長い時間だった。そして爆笑。
「あ~残念だね。ど、どうして全部なの?ひとり10杯は入るよ。いつもそうやって飲んでるの?」
「いえ、あ、いや彼氏がたくさんいれて飲んでるから。。。」
人のせいにするか?しかも全国放送で。しかもぼくはブラックしか飲まない。
「じゃ、後攻の人、とりあえず答えをどうぞ」
「え~と、0でしたっけ?残ってるのは。笑い過ぎちゃってわかんなくなっちゃった」
「残ってるのは4ですよ。もう一度どうぞ」
それでも、不正解だろ?と思った瞬間ラジオから
「ずるいぃ~。答え教えるなんてずるいぃ~」
神戸の○○ちゃんの絶叫が聞こえた。頼むから黙っていてくれ。結局両者不正解で賞品は次週に
持ち越しとなった。そう決まるまで「ずるいぃ~」は続いていた。
その三浦なにがしの主演映画「さよならジュピター」の主題歌だった。そして、ぼくがギターを持って
初めて人前で歌った曲だった。神戸の○○ちゃんのお誕生日に合わせて練習させられ、三浦ファン
7~8人の集まる前で歌わされた。

ちなみに番組の名前は「三浦なにがしとゆかいな仲間達」だった。

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「青春のリグレット」

その人のことが、嫌いになってさよならをしたことがない。たぶん。だから心のどこかに大切に
しまっているのかもしれない。だから次ぎがうまくいかないのか?そんなだから次ぎもまた心の
どこかに保存してしまう。別れた後、友達なんかになれはしない。保存していた気持ちが解凍
されてしまうから。

「静かなまぼろし」

もうひとりの自分がじっと息をひそめている。さみしさに耐えるように。そして、ぼくを見張っている。
社会の中の大人として社交的に振る舞うぼくをじっと見ている。ときはなたれる時をじっと待ってい
る。不満ではないようだ。でも、いつか必ずときはなたれる。そう信じているようだ。今しばらくはそ
のままでいろよ。

「バビロン」

アジャンタの石窟群はインド西部、マハーラシュトラ州北部にある。紀元前後から7世紀にかけて
600mにわたり掘られた仏教石窟群がワゴール川岸の断崖に並んでいる。ここには25の僧院
と4つの礼拝堂がある。無宗教のぼくにはその存在意義はよくわからないが、ここの話しでインド
人と盛り上がった。
「誰がつくったんや?」
「ワカリマセン。キットタイヘンダッタデショ」
地球の指紋はいたるところにある。スフインクスは首のお色直しをし、アンコールは近くに地雷を
しこたま埋め込まれている。いろんな国の夕暮れは時間を止めて人にやすらぎを与える。
一昨年の自分のことを思い出せない。あたりまえだ。心はもう紀元前に飛んでしまっている。

「ミッドナイト・スケアクロウ」

ふと、このHPを作り始めた頃のことを思い出した。なまいきにも仕事に追われ、徹夜明けの朝。
BBSに短い文章をアップしたのがはじまりだった。やがてHPの場所を借りた。4MBの自分の
部屋はなんでもこのたび12MBになったそうだ。あははは、そんなにいらないってば。今現在、
1.5MBしかつかってないんだから。でも、そろそろリニューアルしたくなってきた。あまり動くも
のにするのは好きじゃない。雑記はジオの日記ツールを使わずに、テキストを更新するように準
備中だ。また、長い夜がはじまる。真夜中の案山子。はやく月明かりがほしいなぁ。

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「砂の惑星」

遠い異国を旅していると、通じない言葉はもどかしいけど、それだけに表現がものすごくシンプルに
なるものだ。日本人のおくゆかしさは、心の遊びにとどめておいて気恥ずかしいくらいオーバーなし
ぐさや表現で思いを伝える。たとえそこが砂の惑星でも、好きな人に出会ったら気持ちだけは伝え
たい。月の砂漠にはロマンチックな月明かりはないんだろうけど。。。

「空と海の輝きにむけて」

夕暮れの普通電車は、西に向かっていた。瀬戸内沿いの路線からみる風景はキラキラ光る海。
ずっとむこうに水平線。そこからまっすぐ立ち上がる空。星空以上に銀色に輝く海面が昨日は
少し盛り上がって見えた。冬の海は重く冷たい。まるで来年の夏まで誰にも会いたくないない
みたいに人を拒否しているようにみえる。
今の自分は冬の海から少し離れたやさしい所にいると思う。

「パジャマにレインコート」

たとえまわりに祝福されなくても、二人が愛し合っていると信じられるなら、ただ一緒にいられる時間
を大切に、パジャマにレインコートで会いに行こう。短い時間に集約しなければならない恋でもこころ
を奪われたら、しょうがないや。

「スラバヤ通りの妹へ」

竹笹の木洩れ日は、午前中だというのにもう木陰を半分にしてしまった。波の音は穏やか過ぎて
子守歌にもなりゃしない。大きな扇子にムートン。頭におおきな花の飾り。夕べの月は半分が海
に浸かっていたのを覚えている。でも君のことは、なんだかよく覚えていない。

「ブリザード」

「絶対!」
「絶対?」
「そうそう、自信ある」
「ほんとに?」
そういわれて、はじめてスキーに行った。男3人でツアーに参加した。絶対に彼女がみつかるとい
われて、夜行バスに乗り込んだ。40人程の中に女性は10人程。女性のみで参加しているグルー
プは3組8人。ツアコンが教えてくれた。4人一部屋のパック旅行だった。あとひとりは誰だ?と思っ
ていたら、ツアコン2人が一緒らしい。冗談じゃない。契約違反じゃないか?とはいえなかった。
「今夜、女の子連れてきますから、この部屋で飲みましょう」
なんならツアコン、10人までなら一緒でもいいぞ。立ち飲みしかできないけど。。。
粉雪が舞う中、ゲレンデで転げまくった後、今夜がやってきた。そしてツアコン2人は荷物を置いた
まま部屋には帰ってこなかった。女の子の部屋にしけこんだらしい。なんにも手を打っていなかった
ぼくたちの心は吹雪の中にいた。

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「私を忘れる頃」

毎日の中に、君がいたあの頃。いつもどこでどうしているか考えていたような気がする。忘れる
ために費やした時間は付き合った時間よりも長かった。あれから何度恋をしても、無理に忘れよ
うとせずに、心の奥に閉じこめるのがうまくなったと思う。
「私を忘れる頃、きっとふたりとも幸せになっているね」
そんなこというから、わすれちゃいけないとおもうじゃないか。

「ミスティ・チャイナタウン」

神戸元町・南京町。散策するほどの距離のない中華街は、一歩違う筋に出ると旧居留地に囲まれた
異国情緒たっぷりの町並みの一角にある。ルミナリが近づくと街路樹のすべてはクリスマスツリィー
のように飾られ、夜のイリュージョンはデートをしなけりゃもったいない。誰もが恋に落ちそうな季節が
またやってくる。コートの襟をたてて背中を丸めて歩いていると、また取り残されるのかなぁ。

「グッドラックエンドグッバイ」

走り去るバスは、いつも砂ぼこりだけを残して立ち去る。旅行カバンひとつで、いろんな人と出会い
そして別れを繰り返していると発車の瞬間にはもう心はこれから辿り着く町に飛んでしまっている。
冷たいようだが本音だ。でも、帰ってからはちゃんと思い出しているし、また会いたいと思う。ずっと
一緒にいたいひととは、恋をしちゃだめなんだろうなぁ。だって、さよならの後、会えなくなるもん。

「手のひらの東京タワー」

もう夜になっていた。ぼくにとっては不案内な道を東京駅に向かっていた。大きなビルに圧倒され
ながらも彼女の横顔をのぞきみていた。そんなに急がなくてもいいのに流れるように駅へとつづく
道路がふいにおおきく右にカーブをきったとき、東京タワーが遠くに見えた。静かな街路樹を二人
で通り過ぎたはずなのに、君のこころの中にはぼく以外のたくさんの人影を感じていた。手のひら
で比べられるのは、あまりきもちのいいものではない。

「ミラクル」

ほんとうにあなたみたいなひといるんだね。あなたにあえたミラクルを感じるひとがいる。話しが
最初から噛み合って、あれ?幼なじみだったっけ?同じクラスになったことある?って思う人が
いる。絶対に出会わなきゃならなかった運命。いやそれ以上のミラクル。きっとそうなんだね。
なくすものも多いけど、いい人とも出会える。だけど、たったひとりの人は、今どこでどうしてる?


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「雨に消えたジョガー」

コンサートは中盤を迎え、しっとりとした弾き語りを聞いていた。MCの合間に懐かしい曲を
やってくれる。定番は「雨の街を」「静かなまぼろし」。そしてこの日は「雨に消えたジョガー」
曲のサビの所で聞き入っていたとき、3つ前の席の男が思いっきり、くしゃみをした。ホール
いっぱいに響き渡った「ハックション」の主は友人の弟。帰りに殺そう。いや出口でみんなの
前で切腹させよう。曲が終わった後、とりあえず頭をはたいておいた。このバカ。でかい声で
「イテッ」と叫びやがった。立っているぼくが目立ってしまった。一緒に切腹するべきか?

「残暑」

この曲を聴くといつも同じ場所を思い出す。加茂川沿いの土手。真夏の京都は日陰が少ない。
職場にアルバイトとして配属されてきた女の子は、京都の某女子大を卒業し、この街で4年間
を過ごしたそうだ。久しぶりにこの街に行きたいからついてこいといわれて日曜日に出かけた。
いろんな思い出話を聞かされた。学校や寮、よく通った喫茶店。よくある思い出をなぞるように
一日中歩かされた。
「ぼいさん、彼女いるんですか?」
「いないけど」
「じゃ、なってあげる」
「なってくれなくていいけど・・・」
彼女は、なかなか人を好きにならなくて、このみの幅が狭いと言っていた。自分の枠にはまる
人はなかなかいないそうだ。つまりマニアらしい。かっこいいひとは嫌いらしい。どういうことだ?

「午前4時の電話」

当たり前かもしれないが、アルバイトは5時きっかりに帰る。ぼくは、毎日帰宅が午前様だった。
最終電車で帰るとちょうど25時頃、家についた。計ったように電話。
「おかえりなさい」
「・・・・・」
ご飯食べて、風呂に入って、寝る用意をした万全の体制のマニアから毎晩のように電話がかか
ってきた。職場で毎日顔を合わせて、そして毎晩の電話。あまりすげなくすると仕事に差し支え
るので適当に話しを合わせていた。それが半年続いた。ぼくは配置換えを希望し勤務時間帯が
思いっきりずれる部署に飛んだ。これが間違いだった。帰宅は毎日夜中の3時頃だった。そして
毎晩、午前4時に電話がかかってくるようになった。こいつのことは余り思い出したくないが、そ
の後、結婚退職し1年後にあかちゃんを抱えて職場に現れた。今、大阪は高○市に住んでいる
らしくて「今度、遊びに来てね」とおっしゃった。もう子供は小学生になっているはずだ。

「時のないホテル」

回転ドアを軽く押してフロントへ向かった。チェックインして部屋へ急ぐ。荷物を置いてすぐ出かける。
大好きな町並み。年に1度くらいしかこれないけど、いつも暖かく迎えてくれる。散策のあと部屋に
帰る。昨日までの毎日とさよならし、あしたからのことなんて考えない。部屋からの夜景を見ながら
ねむりにつくまでの時間は空白。たまにはこんな日を過ごすのも悪くはないよ。

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「ノーサイド」

みんなが集まる小さな店があった。カウンターのみ8席程で後ろがすぐに壁だった。マスターは
背もたれつきの高級店だといい常連はトイレにもいけないタコ部屋だといった。常連はおおよそ
50~60人ほどの草野球仲間ばかりだった。毎晩、2~3時までみんなでバカ騒ぎした。いろん
なドラマがあったがそのほとんどが、カウンターの中にいる女の子の取り合いだった。みていて
おもしろかった。ストレートと変化球が入り乱れる中、何組かがゴールインした。この店はボトル
だけじゃなくて、すきなカセットテープをもっていくとキープしておいてくれて、頼むと聴かせてくれ
た。経営が行き詰まるとみんなで5万とか出し合って守っていた。震災直後、この店を訪ねると
マスターが偶然、店の片づけをした。
「おぉ、ぼいちゃん。生きてたんか。よかったよかった」
「どう?お店。大丈夫?」
「おう、あかんわ。みてみる?背もたれがなくなってるわ。あははは」
中は見事に荒れ果て、背もたれの壁がごっそりと剥がれ落ちていた。隣の店もまた同じように
割れたビンが散乱し、ものすごく酒くさかった。
「昨日の試合が最後かもしれないなぁ。」
「そうだね」
10年以上、いっしょにやってきた草野球リーグは突然のノーサイドを迎えた。形のないこういう
人と人の繋がりまで、ぼくたちはたくさん失った。

「星空の誘惑」

雑記を書いているとき、実際には聴いていないけど頭の中を流れている曲がある。(108)は
明らかに「卒業写真」だし、外国がテーマの時には、バビロンをはじめアジアを思う曲が流れ
ている。無意識のうちに心のどこかでそっとささやきかけられていたりする。結構、スローな曲
が好きなんだけど、この曲は例外。テンポのいい曲でどうしてもこの一曲といわれたら、いまだ
にこの曲を挙げる。
いつも気軽に誘え合えたあなたとも、悪い恋に落ちそうな星空の誘惑。
人の気持ちはいつどんなところで揺らいでいるのかわからない。不安で不安定な恋愛は、はじ
まった時から、もうつらい。

「幸せはあなたへの復讐」

きれいになって、幸せになることが復讐。女性にしかできないことかもしれない。男はどうすれば
復讐できるんだろう?幸せにすることが男の役目で、きれいになってもしょうがないしね。「幸せ
にしてね」「うん、約束する」だったら男はどうやって幸せにして貰うんだろう?幸せにすることが
幸せ?そして、幸せにできなかったら復讐されるとは。。。

「中央フリーウェイ」

なんてことはなく、運転していると目に入ってくる風景。ただ重要なのは、ふたりでいること。
どんな場所にいても、同じものをみて同じ思いや感動を味わえること。それができるんだった
ら特別な場所にいかなくても、いつもの帰り道でもステキなデートコースになる。一番幸せな
時間を切り取った曲かもしれない。

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「12月の雨」

初期の作品。雨と雪は、ほんのちょっとの温度差がうっとうしいものを美しい思い出に変える。
昔、ラジオの生ライブでこの曲を聴いた記憶が蘇り、早速テープを探してみた。FM・エアチェッ
クと書かれたカセットケースを見つけた。聴いてみる。おぉ、あの当時のアンサンブルな演奏
はとても懐かしい。「星のルージュリアン」まで歌ってる。う~ん、まさにお宝、再発見。とって
も得した気分だ。テープを元に戻しかけたとき、その横にノンレーベルのカセットがあった。何
だろう?覚えのないテープ。もっとも300本程のほとんど聴いてないテープがあるんだから、
全部覚えているわけないけど、レーベルを貼ってないのは2~3本。貼っていてもわからない
ものも多い。思い出せない。とりあえず聴いてみることにする。うわ~~、ほんとかよ。なつか
しいやら、はずかしいやら。
ぼくにだって、人に言えない話しのひとつやふたつはある。

「ロッジで待つクリスマス」

ちょっと早いかな。国民的行事としては、赤穂浪士の討ち入りのほうが先だし。この詩は、ほ
んとうに情景が目に浮かぶ。夜のゲレンデは小さなつむじ風が吹く冷たい夜。リフトの灯りと
月明かりだけが今、どこにいるのか教えてくれる。ロッジはあたたかな暖炉。厚手のセーター
を着ただけでは、心の冬支度は終わらない。後は好きな人に思いを伝えるだけだ。

「街角のペシミスト」

彼女とかそういうものじゃなくて、なんとなく漠然とした寂しさを抱えていた時期に自分のことを
判ってくれる人がほしかった。仕事をしている自分以外の自分の居場所をいくつも持った。仲間
のあつまる居酒屋やビリヤードのできるショットバー。小さな群は以外に多く、驚くほど無警戒に
ぼくを受け入れた。平気で徹夜したまま仕事に向かい、終業とともにしばしの休息の後、またペ
シミスト達が待つ夜の街角に消えた。他人からみれば荒れた生活を楽しんでいた頃、気が付い
た。初めの寂寥感はほんの些細なものだったのに、いつの間にかみんながみんなの寂しさを背
負ってしまって、いつしか心の中は満たされない思いで一杯になっていた。でも、群の中の生活
に飽きてくると不思議なことに些細な寂寥感も感じなくなってきた。そして今では、その頃のいい
友達だけとつきあっている。最近、よく考えたら同じような生活をしていた。ネットはぼくの漠然と
した寂しさをどうやら癒してくれたようだ。

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「霧雨でみえない」

懐かしさにふと降りたバス停。探しはしないと誓ったけれど、忘れた日はなかった。突然の恋の
終わりは、なんとなく判っていても残される者には立ちつくした場所と後ろ姿しか残さない。霧雨
はやさしく肩に降り注ぐけど、その肩をそっと抱いた手はもうどこにもいない。でもこんな恋の終わ
りも経験してなきゃいけないのかもしれないとも思う。

「ダイヤモンドの街角」

降り注ぐ雨はいつか、しんしんと降り積もる雪に変わっていた。午前2時の街は、タクシーを捕まえ
るのが、やっとだった。
「あれ、お客さん。こないだも乗せたねぇ」
「そうですか?」
行き先を告げて、帰路につく。そして、思い出した。道をさんざん間違えて、ぼったくられた運転手
だった。
「今日は間違えないで下さいね」
「へ?ありゃ、あんたの説明が悪いんだよ」
こめかみがピクピクするのを、指先でそっと撫でた。黙って車窓を眺めていると運転手の鼻歌が聞
こえてきた。クリスマスキャロルだった。
「いやぁ~、これでもクリスチャンでしてね」
きっと懺悔をすることも多いのだろう。そこ曲がるなよ。反対方向、一方通行じゃないか。1曲聴か
せるつもりだな。

「SUGER TOWNはさよならの町」

その日も最終電車に間に合わなかった。とりあえずタクシー乗り場に行ってみる。1台だけ停車し
ているが、運転手の姿が見えない。最終が出てから1時間が過ぎていて、駅にも回りの住宅街に
も人の気配はないが、ポツンと停まっているタクシーにまで人の気配がない。ゆっくり近づいていく
とシートを倒して寝ている。休憩中なのか、帰庫時間まで時間を潰しているのか、わからない。山
間の駅は冷え込みが厳しく、家までは歩いて1時間程かかる。しかたない。叩き起こそう。窓を叩
いた。後部ドアが開く。
「すみません。いいですか?」
「ああ、あんた。今日も乗るかもしれないと思って待ってたんだよ。そしたら寝ちゃったわ」
はじめて正面から顔をみた。そうかこっちは顔をみられてるんだ。
「そうですか。助かりました。お願いします」
今日は、ちょっとくらいなら道を間違ってもいいかもしれない。
「また明日も遅くなるの?」
そう訊かれた。はいと答えておいた。でも本当は今日でこの町での仕事は終わりだった。貰った
チケットで乗っているので、そこの社員と間違ってるのかもしれない。ウォークマンから「SUGER
TOWNはさよならの町」が流れていた。左耳で曲を聴き、右耳で運転手の相手をした。今日は、
真っ直ぐ家に着いた。よかったね、道を覚えることができて。

「ナビゲーター」

オールドファンなら基本中の基本。夜間飛行ともどもCDになっていない名曲。でもなんでいつも
サイドシートで微笑むのは女性なんだろう?誰かぼくを、助手席に乗せて連れ去ってくれないか
なぁ。いいナビゲーターになると思うんだけど。微笑んだりはできないけどね。ずーと気楽な2番
手が好きで、副キャプテンばっかりやってきたけど、昨年、自治会長をやって思ったんだけど、
なんか副会長のほうが大変そうだったなぁ。

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「守ってあげたい」

子供の頃の知りあい。つまり幼なじみ達は、あのころのぼくを知っていてくれる安心感というか
純粋だった頃(多分)のぼくを、本当のぼくを判ってくれているという信頼感があるような気がす
る。はじめて言葉を交わした日の、あの瞳を忘れないで。こんな素敵な瞳を持つ人になれたら
最高だよね。

「月曜日のロボット」

月曜日は本当につらい、1週間の最初の日からエンジンなんてかからない。そんな日は、判で
押したような一日をロボットのように、何も考えずにたんたんと過ごそう。心は前日の日曜日に
置いてきたままにして、オフィスにいるのはただの抜け殻。やっと月曜日になったんだから、日
曜日はもうすぐさ。

「誕生日おめでとう」

どこにいても、あなたの誕生日は忘れない。触れた指の感触はとうに忘れたけれど、この日だけ
は忘れない。住所も電話番号もとっくに変わっただろうけど、きっと元気でやってるよね。いつか
どこかで、また会えそうな気がする人。「お久しぶり」なのか「あの時はごめんね」なのか見当も
つかないけど、とりあえず誕生日おめでとう。「いやだぁ~26になっちゃたぁ~」っていまだに言っ
てるんだろうね。。。

「木枯らしのダイアリー」

1年なんて過ぎてみれば本当に早いもんだ。ミスタードーナツでもらった手帳が終わりを告げる。
ブラウンのお気に入り。中身だけ適当な文房具店で買おうか、ドーナツをしこたま買って来年の
やつを手に入れようか悩んでいる。なんども足を運ぶのはめんどうだから3,000円分いっぺん
にドーナツを買おうかな。でもやっぱり家族のひんしゅくを買うだろうなぁ。30個のドーナツと家
族のひんしゅくとシステム手帳。3ついっぺんで買う年末はそろそろやめにしようかなぁ。

「心ほどいて」

君たちは、いろんなことがあったね。学生時代からよくもまぁくっついたり離れたりしながらよく
ここまで辿り着いたものだと感心してるよ。こんなひっそりとした結ばれ方をするなんて思いも
よらなかったよ。冷たいチャペルの椅子に腰掛けていると、教室にいたあの頃に戻ったみたい
だね。出席者は夕べ一緒に飲んでた連中ばかりじゃないか。あははは。1年後輩のふたりに
先を越された。くやしくて、うれしくて涙がでそうなぼくは、午後の光がステンドグラスであそん
でいるのを、そっと見上げた。おめでとう、早速今日みんなで新居に押し掛けようとおもう。

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「さよならハリケーン」

ハリケーンとはこころみだして去ってゆく恋人。激しい恋愛は、一瞬にして燃え上がり嵐の中を
彷徨ったあと、行き場を失う。激しく壊された心は自分で癒すしかない。だけど、やっぱり癒して
くれるのは、好きな人。通り過ぎていく者と覚悟を決めてサヨナラする時。はじめて、その人が見
えてくる。本当は、こんな人だったんだ。嵐の中から、嵐は見えない。自分の中から自分は見え
ない。

「リインカーネーション」

輪廻転生。過去を辿れば、何世紀か前の自分に出会えるのだろうか?何をしていたのか?知り
たい。でも、知っていやんなるかもなぁ。どうせロクなことはしてないだろうし、夢の中で再現され
た自分の過去が、市中ひきずり廻しの形にあってて、泣きながら怯えてたらいやだなぁ。それを
みて、指さして笑っているのは、あなたかもしれない。

「DESTINY」

運命のささやきは、こころをざわつかせる予感。初めてこの曲を聴いたとき、こんなおしゃれな
恋愛なんてないよなぁと思った記憶がある。まぁ、そんなことにぼくが向いてないということも
あるが、情景やドラマが美しすぎる。でも、コンサートでは必ずやるし、のれる曲であることもま
た事実。ベスト・アルバムの人気投票第1位でもある。ということは、みんなこんな恋愛をして
いるのかなぁ。少なくとも、憧れてはいるよね。

「DOWNTOWN BOY」

街角にいつもたむろしていた少年時代。みんなが帰った後、彼女とふたりで歩く夕暮れの道は
ドキドキした。恥ずかしいのか、照れているのかなんにもしゃべらずに、麒麟草が続く帰り道を
夕焼けを追いかけるように歩いてた。
「私ね、剣道習うの」
「へぇ~」
「中学に行っても高校に行っても、誰とも付き合わない」
「・・・・・」
女の子は本当にませていた。ぼくは、つきあうとかなんとか、考えたこともなかった。
「でね、だんなさんになる人と早く結婚して、一緒にいろんな所に遊びにいくの」
「へぇ~。いろいろ考えてるんだ」
毎日の遊びに夢中な男の子達は、その場所から飛べずにずっとそこにいるのに、女の子達は
もう自分の未来を心の中に持っていた。こんなやつらに、男が太刀打ちできるはずがない。
彼女は、高校を卒業後、すぐに婦人警官になり、そこで知り合った警官と1年後に結婚し、はじ
めての同窓会には、子供を抱いてきた。計画どおりの人生は今、どうなってるんだろう?

「埠頭を渡る風」

雨に消えたジョガーでくしゃみをしておきながら、友達の弟は全然反省していなかったようだ。
アンコールでこの曲が始まると、舞台まで通路を走って近づいていった。止める間もなく、ステ
ージに上がりやがった。そして、ユーミンに抱きついた。握手して、抱き返すユーミン。あいつ、
絶対に殺してやる。慌てて駆けつけた警備員に舞台下に連れ戻された。ぼくも遅れまいと、
ステージ目掛けて走っていった。その勢いを利用して飛び乗ろうとしたが、警備員に頭を押さ
えつけられて、跳ね返された。そのぼくの横をすり抜けるように、弟がまたステージに上がって
今度は客席に向かって、ジャンプしながら手を振っている。おまえは一体何者だ?

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その席は、淡い恋に背中を向けてポツンと彼女を待っていた。

手招きされるように、彼女は座ったように見えた。すでに酔っ

ているみんなのざわめきは、聞いてもいないFMのようにあま

り心地良いものではなかったに違いない。落ち着きたい心を

グラスの音が掻き乱す。着飾った友人達と同じテーブルなの

に、心はそこに無いようだった。斜め後ろからみた彼女の左

手には結婚指輪。まだ新しい光が目を引いた。今日の日に、

この場にふさわしい輝きは彼女たちがそういう時期を迎えて

いることを教えてくれた。披露宴で彼女となにやら小声で話

していた男が彼女の後ろに座っていた。思い出の始まりの

ような時期から現在までを、幼なじみは同じ学校で過ごした

り進路が違ったりしながらも、お互いの成長の中にいた。彼

女の指輪は、ぼくたちが大人になったことの証のように輝い

ていた。飲み過ぎたぼくは、薄れがちな意識の中である風

景を思い出していた。今見ている景色をどこかで見たような

気がしていた。子供の声とざわめき。給食の時間。背中合

わせなのに、振り向きながら食べている仲良さそうな彼女と

彼。1秒ごとに振り返っては、牛乳飲みなさいとか彼の世話

をやいていた彼女。あのときと同じように背中合わせで座っ

ているのに、二人とも振り向きもしない。確かに背中に相手

を感じているのに、真新しい指輪をした彼女と独身の彼はあ

の日に帰れないでいるようだった。。。

振り返れない自分に勇気を与えるように彼女はそっとリングに手を

触れた。中学生の頃だったか彼の苗字に自分の名前を置いてみて

不思議な心地よさを抱いていた時期もあった。あまりに淡い恋心は

忙しい毎日の中に埋没していく。男友達と出かけるようになり、彼も

またその一人として付き合う。一番好きではあるが、デートの相手は

彼だけではない休みの日は、日を追うごとに一番好きで彼女だけだ

った彼の足を遠ざけた。これだけ込んでいる場所なのに、ぼくたちは

彼の隣の席にだけは、座らなかった。いくら酔っているぼくでもそれだ

けは出来なかった。なぜなら、今日だけかも知れないけどそこは彼女

の席だった。決して彼からはもう近づけない彼女のための席だった。

おめでたい新郎新婦はそれだけで幸せなんだから、お互いが主役な

らそれでいい。ぼくたちにとってこの場所は、彼と彼女が主役の最後

の夜だった。リングに手を触れた彼女は身じろぎもせずに俯いていた。

まるで立ち上がろうとする自分を押さえつけているようだった。

「よう、ぼい。そろそろ帰るよ。。」

ぼくを揺り起こした彼は足早に去って行った。目の前には空席が2つ。

座る場所を間違えた彼女の帰れない席と、最後の最後まで待ってい

た彼がもういない席。解散まであと30分。突然失われた時間に彼女

はまた、ため息をついた。リングを押さえていた手をそっと離す。砂の

ように流れる最後の時間をすべて失ったとき、彼女は消えていないあ

の頃の恋に気がついた。失ってから気がつく恋はあまりにも切ない。

高鳴る胸の鼓動と懐かしいやすらかな気持が交叉しながら彼女は

故郷へと急いでいた。自分の子供の年齢だけ、あの日から遠ざか

っていた。何度か電話で話をしたが、誰に遠慮をすることもないとは

わかっていたけど、疎遠になった彼との再会に向かって急いでいた。

定刻にしか着かない電車の中で、子供達の世話をしながらも心は

とっくに、あの日に帰っていた。もちろん二人だけで会うわけではな

くあの時の気持を伝えることもできない。ただ、自分の気持ちにまだ

ついていない整理をつけたい。そんな気持ちだった。一方彼は未だ

独身だった。勢いだけでは結婚できない年齢になっていた。彼が今

どんな気持で、故郷で生きているのかはもちろん彼女には判らなか

った。あと30分程で電車はあの懐かしい駅に着こうとしていた。そ

して偶然その電車にぼくが乗り合わせていた。

「ん?あれ?」

「あ、ぼいちゃん」

「久しぶりだね。アホ夫婦の結婚式以来か?」

「そうそう、あの日以来ね」

「おこさん?大きいね」

「ぼいちゃん、結婚は?」

「したした、勢いで。。。」

「あはは、ぼいちゃんらしいね」

少しとっつきにくいところがあった彼女だったが、気さくな笑顔が更

に美しくなったようだ。昔話を少しした後、あの日の話しになった。

「寝ちゃってたから、あまり覚えてないんだ」

「昔から、どこでも寝るのね。。」

もちろん、彼女が聞きたいのは彼がぼくに言った会場を後にする時

の最後の言葉だとはわかっていた。

「そういや、あいつまだ独身みたいだよ」

「あいつって?」

「え~と、誰だっけ?」

「きゃはは、相変わらずね」

お互い様という言葉を飲み込んで、知っている限りの彼の話をした。

ただ頷いて聞いているだけだった彼女が電車が到着し慌ただしく降

りるときにこう言った。。。

「この子の名前、一樹っていうのよ」

「ほんと?」

「うん、主人が名前決めたときびっくりした」

「あはは、だろうねぇ」

「まさか、今でも好きな人と同じ名前だって言えないものね」

「あはは。。。」

「あ。。。」

一番目を丸くしたのは、この子だったと思う。もうなんとなくでも、好き

とかきらいとかがわかるはずだ。僕たちが初めて出会った頃の年齢

は、今ではもっとませているはずだ。

「内緒よ」

「誰に?」

「誰にでも!」

この子は教室で前に座るかわいい女の子に、牛乳飲みなさいって

言われてるんだろうか。じゃぁ、またねと言うと小さくVサインをくれた。

大丈夫、内緒にするよ。そんな合図のような気がした。。。


確かにそこにあったもの 僕等の時代も続いている

失くした時間ではなくて 過ごしてきた日々だから

あの時そこにいたあなたも いま何処かで

同じ気持ちを抱いているはず

 

途切れた想いは 終わりではなく

果てしない時間の中で ただ忘れているだけ

思い出はどこにもなくて ただ埋もれているだけ

 

確かにこの手にあったもの こぼれ落ちたひとしずく

長い時の中でいつか 穏やかな流れに変わるはず 

今はここで待っている僕も また何処かに

歩き始めるかもしれないけれど

 

途切れた想いは 終わりではなく

過ぎて行く時間の中で ただ忘れているだけ

思い出はどこにもなくて ただ埋もれているだけ

 

だから僕等の時代も確かに続く

時の中をまっすぐに

だから今の気持を忘れないで埋もれさせないで

どんなにくやしくても悲しくても

時の中をまっすぐに

僕等の時代はいまも続いているから