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前TM. Walikin’ Blues「アサー」入り / Paul Butterfield Blues Band
-R.Johnson- Rhino / Elektra 8122 798434 0
N ワツシイサヲ アサーと叫んで また1年、これはわたしのお粗末な今年の一句です。
さあ、今年最後の「幻」、始めましょう。実はこれ、一度出来上がったのに、
もう一度、最初かから造り直したんです。デイタが飛んでしまってね。ちょう
どでかける前で忙しかったのに、えらいショックでした。その時には最新技術を
使っている人間の弱さを思い知りました。いや。最新の技術に頼っている人
類の弱さかな。
さて「幻」です、先週の積み残しもあります。おや、鐘だ。早いぞう。ま
だもう一日あるんだからね、お忘れなく。
01.お正月(2'25")大滝詠一
-K.Higashi,R.Taki- ソニー /ナイアガラ SLRC 5009
N 大滝詠一コロムビア時代のLP『ナイアガラ・カレンダー '78』から、「お正月」でした。
唄の音楽(ヴォーカル・ミュージック)が好きな、彼の好みが、これほど出ている歌をわ
たしは知りません。あんまり有名じゃないんですけどね。この歌に正式な作
者クレジットがあるのは知らなかった。てっきり「文部省唱歌」とかの大日本帝
国が買い上げた歌曲だと思っていましたが、作曲は何と滝廉太郎でした。
02.踊れ!若者(4'55")バウンド
-M.Furuta- ユピテル BY32-17
N これは、わたしが先週のキングサイズと共に20世紀に手がけた京都のロック・グル
ープ、バウンドのLP第一作の表題曲「踊れ! 若者」です。これに関しては反省
点が多々あります。まず、流行歌なら必要不可欠な、誰の心も惹きつけこの
歌を特定化するリフが希薄、それと言葉に独創性がない。これじゃあ、ヒットは無
理ですね。案の定、このグループは作品発表後、すぐに運営が立ち行かなくな
って、東京で解散状態になったようです。「ようです」というのは、これから
後の事をよく知らないのです。だいぶ後になって吉祥寺の成蹊大学の学祭公
演で再会しました。相変わらずの力溢れる舞台でした。みんな一生懸命に演
っていた。集まった人たちも楽しんでいた。それが嬉しかった。わたしはそ
の後少しの間、近所に住んでいた事もあって唄い手とは付き合いがあったか
な。でも、それ迄でした。
売り出し盤の吹き込みでは、もちろん沢山の勉強をしました。文化放送と
渡辺プロダクションから枝分かれしたアポロンとは言え、大手会社の端くれです。キング
サイズの時のヴィヴィドとは違う大きな壁がいくつもありました。しかもマネジメント
の親玉が音楽を理解できない人でね。これには参ったな。メムバとは別に悪く
はなかったけど「信頼関係」の重要性には度々気づかされました。
こういうとまるで「良い人」みたいですけれど、決してそうじゃない。わ
たしを恨んでいる人間がいてもおかしくは無い筈です。駆け出しの企画制作
者だったとしても「強烈な個性」の持って周り方、これを抑えていなかった
のが大きな反省でした。それが一番大切なようです。
03.歌へ若人(3'18")東海林 太郎
-H.Sato, E.Yamada- Gramoclub G10033
N バウンドが「踊れ! 若者」なら東海林太郎は「歌へ若人」です。これは昭和
8年に「赤城の子守唄」が大ヒットする前に別のレコード会社から売り出されていた
そうで、わたしは全く知らなかった。当時のこんがらがった契約が興味深い
ですね。確か東海林太郎は早稲田大学を卒業していた筈ですが、条件などを
精査しなかったんでしょうか。
先週の古い歌謡曲集はあんまり評判がよろしくなかったみたいですが、今
週も覚悟して行きましょう。
04.妻恋道中(3'27")東海林 太郎
-M.Fujita, N.Ohmura- Gramoclub G10033
N 東海林太郎といえば何を置いても出て来るのが「赤城の子守唄」と並んで、
この「妻恋道中」ですね。わたしも嫌というほど聞かされました。でもね、
よく聞くとこの道中者は意外とナムパなのが分かります。思想もへったくれも
なく旅の空。主義主張はコロコロと変わるし、可愛いあの娘のことばかり考えい
る。挙句に堅気の方がいいよ、兎角ヤクザ者は苦労のタネだ、と自己否定を始め
てしまいます。こんな無責任な親分さんに命を預ける人はいませんね。でも
「ヤクザ」が暴力団員とは違って、定職に就かずにその日ぐらしを送っていた
人間たちを指す言葉だとすれば、これも分かります。世の中は勤め人が全て
じゃないのですよ、皆さん。
この考え方は戦後になって大きく変わったな、と思います。わたしの子供
の頃には「寄らば大樹の影」的に、国家や大企業に依存するようになってま
した。俺もそのひとりだったんだけどなあ・・・。
05.無法松の一生(4'01")村田英雄
-F.Yoshino, M.Koga- キープ / コロムビア 12CD-1010A
N 村田英雄の「無法松の一生」です。これは先週の積み残しでして、本来な
らば、柔道モノの次にこちらへ進むはずでした。この物語には河内音頭で本格
的に親しみました。題名は知ってこそいましたけれど、「岩下俊作が書いた小
説で、それが映画で大当たりして、同名の主題歌もヒットした」なんて話はつい
先程に分かった事です。これもよくある悲恋物でして、この国の人たちは、
やっぱり浮かばれぬ身の上が大好きなんですね。
河内音頭ではその昔、三音会(みつねかい)にいた三音家あきらの十八番
でした。その後で彼は独立して「八常会(はちじょうかい)」を結成、八常
あきらとなっていました。40年以上前の第一回東京殴り込み公演の錦糸町銀
星会館というパチンコ屋の2階でも三音家あきらとして披露してました。この時
は、あきらさんがその日のうちに河内へ戻らなきゃいけないってんで、あの
浅米、浅嗣、浅照のスーパーなリズムセクションなのにテムポーがどんどん早くなってしま
ったのがとても面白い思い出としてあります。河内の人たちはみんな正直な
んですね。
村田英雄の「無法松の一生」には単なる歌謡曲とそうでないのがありまし
て、ヒットしたのは歌謡曲のだけ方でしょう。いまお聞きいただいたのは「度胸
千両」という「謡い」が間に差し込まれた仕様です。ピアノのグリッサンドで、中
に挟んだ「度胸千両」から歌謡曲に戻るあたりはプロのお仕事、お見事です。
06.皆の衆(3'37")村田英雄
-S.Sekizawa,S. Ichikawa- キープ / コロムビア 12CD-1010A
N こちらは「皆の衆」同じく村田英雄です。各コーラス毎に出て来る、「どうせこ
の世はそんなとこ」が良いですね。この諦め感覚はブルーズに繋がるんじゃな
いか、とも考えております。
この醒めた感覚も作用したのか、幼少期からわたしはこの歌が大好きでし
たがもっと好きな人がいて、この歌が流れるとすぐにタコ踊りを始めるんです。
何回目かの自分の結婚式でも同じ症状が出まして、周囲も「困ったなあ」と
呆れていた。
「無法松の一生」の主人公は偉い人の付き人みたいな事をしていたらしい
のですが、その人が戦死してしまって残された未亡人と子供の面倒を見る事
になるのです。そしておきまりの未亡人を好きになってしまって悲恋が始ま
るわけですが、こういう主題がこの国の庶民は好きですね。それに較べると、
この「皆の衆」は珍しく明るい。ヒット歌謡曲でこういう歌は稀有な存在ではな
いか、と子供心にも感じて居りました。
さて、渡世者の歌謡曲の流れは村田秀雄から橋幸夫に受け継がれます。こ
の板橋の都会っ子はビクターの戦略でエレキ・ギター・バンドをバックに従えて唄っても
いましたが、やはり真髄は股旅物にありました。何せ売り出しが「潮来の伊
太郎」ですからね。これは決して間違ってはいない。
その橋幸夫の骨頂はやはりこれでしょう、「沓掛時次郎」です。
07.沓掛時次郎(3'36")橋幸夫
-T.Saeki, T. Yoshida- ビクター VAL-14
N 「沓掛時次郎」でした。これは先の「無法松の一生」よりももう少し事情が
複雑でして、自分が金のために斬った男の、結核患いを持った未亡人とその
子供の面倒をみる旅の男が主人公です。何度も映画になりまして、萬屋錦之
介(当時の屋号は中村)が時次郎を演じた物は、「日本映画で最高の美しさが
ある」とも言われていました。お気づきでしょうが、こういう歌やお芝居は
その筋書きを知っているかどうかで。理解に大きな変化が出ます。歌舞伎な
んかは特にそうですね。粗筋を知らないと「なんでこうなるの」が連続しま
す。結末はみんな分かってるのを、そこまでどうやって魅せるか、聞かせる
かが大切です。これはジェイムズ・ブラウンのケイプ・ショウと共通する部分です。
橋幸夫の唄いっぷりはそこんとこが氷川きよしなんかとは全然違ってまし
た。 周りからチヤホヤされる近代的な都会人じゃダメなんだよ、こういう歌を唄
うのは。
08.アイ・ミーン・ユー/リハーサル&パフォーマンス(4'19")セロニアス・モンク
-T.Monk- CBSソニー CSCS 5082
N これはセロニアス・モンクの「アイ・ミーン・ユー」クリント・イーストウドが監督を務めた映画「ス
トレイト, ノーチェイサー」のサウンドトラックに収められている「リハーサル」と実演テイクでした。
これも古い話ですが、子供の頃にテレビでこの曲をモンクが弾くのを観た覚えが
あります。ピアノのソロでした。不器用そうな指使いと顔中の汗がとても印象的
でした。大人になってピアノ・ソロの「アイ・ミーン・ユー」を探したのですが、出逢え
ていません。まだ探しています
09.So What(9'02")Miles Davis
-M.Davis- Columbia CK 40579
N 今年の夏に、古い友達から暑中見舞いのお葉書を貰いました。彼は難病を患
って床に伏せているようです。彼が今でも「理解出来ない」マイルス・デイヴィスの
『オン・ザ・コーナー』のジャケットが葉書に描かれていました。「幻」でも初秋に突然
『オン・ザ・コーナー』から聞いて貰った事がありますね。その前だったでしょう
か、古い友達から暑中見舞いを貰ったのは。返事を出したら、歳の瀬に長い
手紙を呉れました。彼が言うには、自分はスウィング・ジャーナルなんかを読んでい
たくらいのジャズ狂で、そんな人間は学校にひとりしかいなかったけれど、ワツ
シ、お前だけが例外で50年代のマイルスを知っていた、と。わたしはそんなにマイル
スを聞いていた訳ではありませんで姉が持て余していたレコー ドを時々聞い
ていただけなんですが、そこのところを読んでいて、とても嬉しかった。
その頃から例外だったのですね、ワツシイサヲは。
10.バイバイ・ブラックバード(7'58")マイルス・デビス
-M.Dixon, R.Henderson- CBSソニー CSCS 5138
N マイルス・デイヴィスの「バイバイ・ブラックバード」でした。彼の50年代の名盤『ラウン
ド・アバウト・ミドナイト』からです。これも姉のコレクションにありまして、まだ難病に
なる前の彼が高校生時代に家に来た時にふたりで一緒に聞いたんでしょう。
その時ここでソロを執っている「レッド・ガーランドのタッチが良い」とかなんとか、
分かったような事を言ってたそうなんですが本人にはその記憶がないばかり
か、未だにコピーのしそこない状態です、この「バイバイ・ブラックバード」は。LP
解説にあった「主題表示のところをマイルスは意図的に2ビートにしている」とい
う行りは、まだ頭の中に残っています。
11.ミルキー・ウエイ (2'32")ウエザー・レポート
-J.Zavinul- CBSソニー 9658
Nこれは当時「天の川」という邦題がついていなかったかな。それとも勝手
な勘違いかな。高校時代にラジオで聞いて刺激を受けたウェザー・レポートの「ミルキー・
ウェイ」でした。この後でしょうか、シンセサイザが音楽の世界に入って来るのは。
このグループのリーダーだったジョー・ザヴィヌルの音色は、死ぬ時まで変わらなかっ
た、そんな想いがわたしには在ります。
12.Medey:Yo're All Need To Get By / Ain't Nothing Like The Real Yhing / Ai'nt No Mountain High Enough(5'37")Ashford & Simpson
- J.Ashford & V.Simpson- Warner Bros. / Rhino R2 79804
N これは、ワーナーからのアシュフォード・アンド・シムプスンのベスト盤の冒頭の実況録音です。
この作詞作曲ふたり組みは数多くの名曲を書いているのに、決定的な盤がな
く、もう50年経ちました。原盤解放の意識が上がっている昨今に何でかな、
と不思議です。考えられるのは、初期にヒット曲を沢山書いていたモータウンの権利
が面倒臭い、ふたりとも相当なゴリガンである、などと直ぐにいくつかが浮か
びます。でもこうやって自分たちが自分たちの楽曲を演るんなら誰にも文句
は言わせない、となったのでしょうか。このベスト盤の意義は大きく。「流石は
ライノウ、やってくれるね」と喝采したくなりますが、わたしの欲しい歌は入っ
ていませんでした。ラジオ番組ならではのアシュフォード・アンド・シムプスン集でもやろ
うかな、と考えるこの頃なのです。
13.Penthouse Pauper(3'40")Cdeedence Clearwater Rivival
-J.Forgerty- ビクター VICP-63512
N 年も押し迫ったある日、わたしの家に来客がありました。もう長い事お付
き合いのある人で、わたしに元気がないのを心配して、来てくれたのです。
この人は音楽と音響にうるさい人で、着くなり早々に音響機器を調べ始めました。こういう人は要注意です。「メイカー」「型番」「それぞれの特徴」に詳しいですから。丁度その時CDプレイヤに入っていたのが、音響効果などを無視したクリーデンス・クリアワラ・リヴァイヴォーの再発『バユー・カントリー』だったのでついでもあって、思い切って聞いて貰いました。
これの日本盤はジャケットの裏と表を入れ替えてたんですよね、あの写真じゃ何も分からないって。わたしが50年以上前、最初に聞いたCCRのLPはこれでした。今年はCCRの本当のロイヤル・アルバート・ホール公演実況が聞けて観られたのが嬉しかった。今も瞼の裏には、ジョン・フォガティの思い切り唄っている嬉しそうな顔が浮かんで来るのです。
14.Tomstone Shadow(3'41")
-J.Forgerty- CRAFT 00888072406605
N これも実演でやってたんですね、「墓標の陰」と題された傑作アルバム『グリー
ン・リヴァ』からの1曲です。後半のギター・ソロがトニックだけを延々と奏でる部分に
少年ワツシは驚喜していました。
15.Endless Love(7'19")Jimmy Smith
-L.Ritchei- ELECTRA / MUSICIAN 60175-2
N グレイディ・テイト、ロン・カーター、ジョージ・ベンスン、スタンリー・タレンタインというソウル・ジャ ズ
にはこれ以上ない顔触れで「エンドレス・ラーヴ」でした。このセッションのリーダーは、
「ジャズ・オルガンの王様」ジミー・スミスです。
冒頭で「今回は造り直した」と申しましたが、第一作は時間超過で、終了
時のテーマ曲、バタフィールドの「ボーン・イン・シカーゴ」の出番がなかったので、マイルスを
差し替えたら、時間が余ってしまいました。そこで、これです。
16. プラウド・メアリ-(3'11")
-J.Forgerty- ビクター VICP-63512
N はい、誰でもご存知の「プラウド・メアリ」、クリーデンス・クリアワラ・リヴァイヴォーでした。
17.風はいい奴(2'49")ザ・スパイダース
-K.Ohta, H.Kamayatu- フォノグラム PLD-8004
後TM Born In Chicago 「アサー」入り / Paul Butterfield Blues Band
-N.Gravenites- Rhino 8122 798434 0
N 一昨日の明け方、何故かこの歌が脳裏に浮かんで、起きてから暫くは頭の
中でずっと鳴っていました。別にザ・スパイダースの「風はいい奴」ではなくて
も、誰もそういう経験がある筈です。2023年、今年の最後は「風はいい奴」、
ザ・スパイダースでした。
ところで、特にこの国では何故みんな年の暮れには「今年もお世話になり
ました」と言い、年が明ければ「今年も宜しく」と挨拶するのでしょうか。
別に特別な事はなく、ただの1秒が過ぎるだけなのに大騒ぎ。これで経済が
回っているところは確かにありますね。新しい疑問です。
今朝の特別付録は、以下の隠し場所です。どうぞお楽しみ下さい。
https://20.gigafile.nu/0105-bbfe589361e1244c5fe39ee93da2f5a36
ダウンロード・パスワードは、いつものようにありません。
使用音楽素材図絵は、ここです。
https://20.gigafile.nu/0105-c3df1b5d099e291d358b953948ac9998d
ダウンロード・パスワードは、同じく「なし」です。
すみません、ここにはアシュフォード・アンド・シムプスンのベスト盤が入っていませ
んね。「私の誤り」です。年明けに公開いたします。
今年も、ちょうど時間となりました。
こちらは、https://ameblo.jp/djsawada よろしくお願い致します。
どんなコメントでも受け付けています。どうぞご自由にご投稿下さい。
エックスのhttps://twitter.com/hashtag/blues761?f=live も便利です。お好き
な方でどうぞ。聞いているだけのあなたも、是非どうぞ。
「幻」モーニン・ブルーズ、鷲巣功でした。首都圏で9人のあなただけに。そし
て全国で9500万人のあなたにも、2023年、今年最後のアサーです。
※【幻】告知専用X アカウントがあります。 フォローお待ちしています。
◆X ➡ mornin_blues @BluesMornin
( https://twitter.com/BluesMornin?s=20 )
◆X(旧Twitter) ➡ 鷲巣功【本人]@Isao_Washizu