そんなわけで土日は仕事漬けで珍しく全く映画を観なかったのだが、先々週また手に入れた新たなマカロニウエスタンのBOXセットからこれを観ていたのでレビューしておこう。実はこのDVD、単体でも買っていたのだが、これを含め「新・夕陽のガンマン 復讐の旅」と「怒りのガンマン 銀山の大虐殺」とリー・ヴァン・クリーフ主演の3作品のBOXセットが2000円台であったので衝動的にポチッとしてしまったのだった(笑)
復讐のガンマン(1967年)
La resa dei conti /The Big Gundown
監督・脚本:セルジオ・ソリーマ 製作 : アルベルト・グリマルディ 脚本:セルジオ・ドナティ 原作者:フェルナンド・モランディ、フランコ・ソリナス 撮影 : カルロ・カルリーニ 音楽:エンニオ・モリコーネ
出演者 : リー・ヴァン・クリーフ、トーマス・ミリアン、ウォルター・バーンズ、ベニート・ステファネリ、ジェラルド・ヘルター、ニエベス・ナバロ 、フェルナンド・サンチョ、マリア・グラナダ
いやあ、面白かったなあ。
リー・ヴァン・クリーフが演ずるのはテキサスでその名を知らぬものはいない腕利きガンマンの賞金稼ぎジョナサン・コーベット。
ある町の有力者ブロクストンの依頼で、少女を誘拐・殺害したとして指名手配されているメキシコ人のクチーヨ(トーマス・ミリアン)の行方を追う。
追い詰めるコーベットの裏をかいたりとクチーヨもなかなかしぶとく逃げ回るが、やがてターゲットのクチーヨは濡れ衣を着せられていることがわかる。
コーベットは、アウトローであっても決して人でなしではないクチーヨを認め、2人は手を組んで少女殺しの真犯人と事件の真相を暴いていく…という一編。
レオーネ=イーストウッドコンビの第2作にしてマカロニウエスタンの金字塔でもある「夕陽のガンマン」で、イーストウッドと共に同じ賞金首を追うモーティマー大佐を演じたリー・ヴァン・クリーフ。ONE PIECEの鷹の目ミホークは絶対彼をモデルにしている事は間違い無いこの獲物を狙う鷹のような面相がいいんだよなあ。
「夕陽のガンマン」ではクールな初老のガンマンとしても相当にカッコ良かったが、さらにただの賞金稼ぎではない哀しい過去を背負っていたことがわかるラストで、ある意味主役のイーストウッドを食い、それまでの悪役・端役から一躍脚光を浴び、イーストウッドがアメリカに戻っても彼はマカロニウエスタンに留まり、数々の主役を演じているが、今回もその余裕っぷりがカッコいいのだ。
相手役が、この間レビューした「ガンクレイジー」でもすっかり主役を食っていた、陽性のマイノリティを演じさせたら右に出るものはいないトーマス・ミリアン。
この主役を食っちゃう2人に加えて、監督はレオーネ、コルブッチに続く「第三のセルジオ」と呼ばれたセルジオ・ソマーリとあっては面白くないわけがないのだ(笑)。
まあ、ストーリーを見れば邦題に偽りありで、2人とも全然「復讐のガンマン」ではないのだが、クリーフは街の実力者から仕事の依頼はされても自らの流儀を押し通し、決しておもねらないクールなガンマンでカッコいいのだが、今回もトーマス・ミリアンがきったねえ格好していても主演のリー・ヴァン・クリーフを差し置いて目立つことこの上なしだ(笑)。
コーベットの追撃をかわして抜け目なく逃げ切るところも、拳銃より速いナイフ投げの妙技も冴える美味しい役どころで、彼の魅力が活かされた快作であるのは間違いない。
なんか構えがカンフーっぽいけど(笑)、肩のところにナイフを刺して、拳銃との決闘で今まさに投げようとするところなのだ。
クリーフも彼に出し抜かれ、ちょっとカッコ悪いはずなのにいつもの悠然さでそんな印象も与えず、ミリアンに主役を食われても余裕の受けの芝居で動じることないのも流石なのだが、やはりより魅力的なのはミリアン演じるクチーヨなのだ。
上のナイフ投げの写真やこの日本版のポスターではそうでもないが、DVDのジャケットで使われているあちらのポスターでも、わははと大笑いの図でクリーフより余裕があるように見えるもんな。
ちなみにクリーフのコーベットではなく、クチーヨを主人公に続編「続・復讐のガンマン〜走れ、男、走れ〜」ができたのもうなづけるのだ。
モリコーネの音楽はスローな出だしからサビで突然テンションがブチ上がる女性ボーカルが熱い熱い(笑)。
「若者よ走れ!最後に勝つのはあなた!」という歌詞もまさにクチーヨのことを歌っていたのだなあと、後から分かるのだが、このテーマ曲の熱さは一度聞いたら忘れられないのだ。
モリコーネの音楽でもう一つ。コーベットと敵対するオーストリアの男爵が奏でるのが「エリーゼのために」。これが決闘で対峙するシーンにこの名曲をアレンジした音楽が流れるのも最高なのだ。
このオーストリア人の男爵が、色々理屈をこねるが結局は人殺しが大好きな、ある意味歪な男で、片眼鏡をかけて、黒いマントの出立がまた個性的で、良い悪役っぷりでしたな。
さらに付け加えるとフェルナンド・サンチョがいつもの悪役とは一味違う役で場面をかっさらうわと、まあ、満腹になること必須のマカロニの傑作なのである(笑)。
あまり試す方は居そうにないけど、是非試していただきたい一本として、強くお勧めしておきます(笑)。
それでは予告編とクリスティが熱唱するテーマ曲をどーぞ!