ジャック・リーチャー NEVER GO BACK | 映画物語(栄華物語のもじり)

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「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。

 

★★★★☆

  どこに「NEVER GO BACK」なのか謎な話。むしろいろいろなところに戻って来まくりである。

 

  トム・クルーズ主演『アウトロー』の続編である。そもそも『アウトロー』も『ジャック・リーチャーシリーズ』という原作小説のある1話を基にした作品であり(第9話)、本作もそれに基づいた続編である。トム・クルーズ主演の新たなシリーズにしたいような雰囲気をビンビンに感じるのだが、いかんせん肝心のトム・クルーズが御年50歳をとうに過ぎているということもあり、ハードボイルドがちょっと辛くなりつつある。もちろん脱げばムキムキなのだが。

 前作『アウトロー』はかなり地味~な仕上がりとなっていたので本作もあまり期待していなかった――というかよく続編を作れたなとすら思った出来だったのだが、鑑賞してみると本作はなかなか面白かった。よくあるハリウッド映画というテイである。褒めている。

 ただ、だいぶハードボイルド感は消失して、トム・クルーズだなぁやっぱトム・クルーズだなぁうんトム・クルーズだ、という思わず優しい顔をしてしまう安定のトム・クルーズであった。伝わる?

 女性と見ればとりあえずなんとなく口説き、男にはウィットに富んだ厳しいツッコミ。これが安定のトム・クルーズ。

 ストーリーとしては、バーの前でケンカをしたトム・クルーズが保安官に逮捕されるのだが、その逮捕した保安官に「90秒で2つのことが起こる」と安心・安定の言葉をかけたトム・クルーズの言う通り、①電話が鳴って②保安官が陸軍憲兵隊に逮捕される、というところから始まる。掴みはオッケー。安定のハリウッド風味である。

 で、そのとき電話をしてきたのが陸軍憲兵隊ターナー少佐で、女性なのである。安定のナンパ師トム・クルーズは、電話で何とはなしに口説きつつこのターナー少佐に会いに行くと、なんとターナー少佐は少し前に逮捕されたということで、陰謀が動き出すといった感じである。で、なんやかんやあって、このターナー少佐と、トム・クルーズの「娘」であるという少女とを連れ立って逃避行をしつつ軍内部に蠢く陰謀の真相を探るという、これぞザ・ハリウッド! という展開が、ダイナミックな映像で繰り広げられる。3人による疑似家族的なやりとりもまた、ザ・ハリウッド。ハリウッドザコシショウ。

 

↓別にこの人は好きではないです。

 

 明らかに、前作と比べて派手な作品となった。いやー、素晴らしい。謎の追及も、「武器の密売」「麻薬」という軍か警察の陰謀といえばそれというような非常にわかりやすいものとなっており、まさにハリウッド。トム・クルーズがハリウッドの王道を駆け抜けるザ・ハリウッド映画となっているのである。前作と違い、ヒロインが戦闘で役に立つというのも何気に高得点ポイントである。軍人だけあって、敵の男に幾度か吹っ飛ばされながらも殺人スキルでkillするのである。素晴らしい。

 全然褒めてないように思えるかもしれないが、ものすごく褒めている。コンビニで買ってきたスナック菓子とジュースを食しながら鑑賞するのにぴったりの良品なのである。映画というものにそれ以上のもの(人生の意味とか何が正しくて何が間違っているかを考えさせるとか)を求める人にはもちろん全く、全然、これっぽっちも向かないが、ベッドに寝っ転がってかっぱえびせんを食べながらAmazonプライムビデオで暇つぶしに鑑賞するのがたまには楽しいねという程度に映画が好きな人間にとっては、非常にちょうどよい作品なのである。寝っ転がってかっぱえびせんを食べながら気持ちが暗くなったり人生の意味を考えさせられたりするのは非常に辛い。その後の休日の活動に暗い影を落とすこと間違いなしである。大切なのは、この「安定感」なのである。敵のアジトに乗り込んで空輸されてきた武器を収めた荷箱が画面に映った瞬間、「荷箱を開けさせる」→「問題なく予定の武器が入っている」→「そんなバカなとなる」→「一転してヒロインピンチになる」→「トム・クルーズがそっと動いて、真の陰謀をその場で暴く」という道筋が瞬時に脳裏に描かれ、あとはその通りに画面上の物語が進行するのをただ優しく見守るだけ――という安定感。とても平和な、日曜日の午後。

 「娘」も結局は――というのは、伏せることすら無用なほどのわかりきったオチである。が、そうなると「じゃあなぜ軍に養育費を請求してきたのか? トム・クルーズは一度寝た女の顔は忘れないんじゃないの? 一度も関係がなかったのなら、そもそもこの前提が揺らぐじゃん」というのは野暮なツッコミではあるが、実は――の部分のオチの作り方があまりにも超雑な印象で、それだけが少し残念ではある。私が作ったゴーヤのみのゴーヤチャンプルーより雑である。(人はそれを「ゴーヤの輪切りを炒めたもの」とただそこにある事実だけで呼んだ)。

 しかし、そんなことも些細なことである。

 日曜の午後、「明日は仕事だ~あーあ」となんとなく守りに入ってしまうそんな昼下がりの時間帯に、それでもせっかくの休みなのだから普段はできない何かをやろう――そんなことを思ったとき、こんな映画を気楽に観るのは、なかなか素敵な時間の過ごし方なのではないだろうか。適度にドキドキ、適度にワクワク、それでいて体はしっかりと休息をとる。

 無為にだらだらスマホを見て「あー時間を無駄にしたー」と嘆いてしまうそんなあなたにぴったりちょうどいい作品である。

 

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