マリアンヌ | 映画物語(栄華物語のもじり)

映画物語(栄華物語のもじり)

「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。

★★★★☆

 スパイって大変ね~、という話。幸せなスパイ、というものはいるのでしょうかね?

 

(最近はめっきり映画への情熱が薄れているので、あっさりめな感想~。資格試験の勉強の方が面白い今日この頃)

 なかなか硬派な作品であった。久しぶりにこのようなお堅い作品を鑑賞した気がする。ハリウッド映画が得意とするウィットに富んだアメリカンジョークなやりとりも一切出てこない。冗談の通じない学級委員長みたいな映画である(謎のたとえ)。

 ストーリーとしては、第二次世界大戦下のカサブランカが序盤の舞台で、この辺の時代背景は「君の瞳に乾杯」でお馴染みの名作映画『カサブランカ』を観ておくと理解がしやすい。著作権切れで100円ショップで売ってるし。

 スパイ映画でお馴染みのブラピが、現地で仲間の女スパイと会い、共にナチスドイツの要人暗殺に奮闘し、カーセックスで仲を深めた後にその車で逃げてカナダに行くという流れである。真のストーリーはカナダに逃げた後から始まるのだが。

 映画予告では「妻に隠された真実。妻の正体とは――?」みたいな宣伝のされ方をされていて、まあおおむねそんな話なのだが、ブラピの妻マリアンヌの正体は、途中から大体察しが付く。どちらかといえば、「どうやって正体がバレるのか?」という点に注目が集まる構成となっている。

 要するに、ナチスのスパイなわけである(ネタバレ)。

 それを信じたくないブラピは、一生懸命、妻の無実を晴らそうと奔走する。その姿はさながら、浮気を疑った女(あるいは男)が何か発見できるまでムキになって携帯の中身からタンスの奥までまさぐり返す様のようである。ベクトルは真逆だが(有罪の証明か無罪の証明か)。そういうときの心理状態は、何か発見できないかぎり、心の平穏は訪れないものである。逆に、こじつけのような超ささいなことでも、何かしら自分の思う方向に結び付けられるようなものを発見できたときに初めて、「ほれ見たことか」と鼻息がようやく収まるのである。発見できない限り、探し続けることをやめられない。つまり、「何もないから無罪(あるいは有罪)」という結論には至れないのである。げに悲しき人間のSAGAかな。

 そんなわけで、ねちっこく妻の疑いを晴らそうと奮闘したブラピは、逆に妻がナチスのスパイである証拠というか、妻が「偽名である」という証拠を掴んでしまうわけである。もちろん「偽名だけど、ナチスのスパイではない。芸名です」という言い訳は通じないので、「妻・偽名=ナチスのスパイ」となるので、どうするかと思いきや、というか思った通り、妻マリアンヌ(偽名。というか、なりすまし)と共に国外へ逃げようと飛行場に行く。そこからクライマックスにかけては、「真実の愛」に相応しい結末である。妻・マリアンヌ(本名不詳)が、任務ではなく、本当にブラピを愛していたということがわかるラストとなっていて、まあ予想通りではあるが、満足のいく硬派な終わり方であった。

 スパイ映画ということで、信用のおけない人間ばかりが出てくるのだが、意外とみんないいように扱われ、ブラピの思った通りにことが運ぶという点で、硬派ではあるが骨太ではない内容である。だから、人々の記憶には恐らく残らないであろう作品でもある。佳作、という言葉が相応しい。ただ、観て損はないというくらいには面白い作品であった。

 ブラピのスパイ映画は、やはり『スパイ・ゲーム』が一番面白い。というか、他にあるか知らないけど。