★★★★☆
マインクラフトがこんな時代にも! という話。
初期ドラえもん映画の中でも名作の誉れが高い本作である。そして、その評価に違わぬ作品であった。
何度も述べているが、昨今のドラえもん映画にあるような映画登場キャラとの別れでやたらと悲しませようとする風潮が一切ない、非常に硬派な作品である。根底のテーマもはっきりしていて、ズバリ「環境破壊」である。これは今でこそありきたりな古臭いテーマであるが、公開当時の時代に、子供向け映画で真正面からこの問題を題材にしたことは非常に評価できるのではなかろうか。当時は恐らく、最もホットな話題の一つであったはずである。時代の問題に敏感なところが、藤子・F・不二夫らしい。
その他にもいろいろと珍しい要素がある。その一つに、短編登場のキャラが出演している点が挙げられる。苗木を人化した「キー坊」と、小人「ドンジャラ村のホイ」である。全くの余談だが、昔我が家にはドラえもんの「ドンジャラ」があった。が、無論全く関係ない話である。
↓ドンジャラ
さらには、しずかちゃんのはっきりとしたお色気シーンがある。無論、しずかちゃんはTVシリーズにしろ映画版にしろ数々の裸体を晒してはきたが、これほどはっきりとしたお色気シャワーシーンがあるのは、時代によるものであると思わざるを得ない。視聴者の多くが小学生であることやそもそもしずかちゃん自身が小学生であることを鑑みれば、現在だったらBPO審議入りではないかとひやひやするクオリティである。
↓由美かおる顔負けのシャワーシーン
↓このシーンは一体誰得なのでしょう?
さらにさらには、ドラえもんがドラ焼きを食べながら妙案を練るシーンがある。『一休さん』でいえば、ポクポクポクポク、チーンであり、これは今までありそうでなかったシーンである。そもそも、登場人物が深く思考を巡らすシーンというのが珍しい。そしてこの時のドラ焼きが異様にうまそうなのである。
↓ドラ焼きは好きだが、こんなには食えん。歳だ。
さらにさらにさらには、渋面でドラ焼きを食べながらひねり出したドラえもんの策が、凶器をチラつかせて天上界全てを脅すというテロリストの発想で、かなりびっくりした。「これしかない!」と大山のぶ代の声で固く決意表明するドラえもんが、どこかの国が日本海やら太平洋やらにテポドンを打ち込む姿に重なった。
しかも、このドラえもんの策が、案の定、まわりまわって結局天上界全体を危機に陥れるという大失態を犯す。ドラ焼きの糖分が悪い方に回った形である。
そんなドラえもんが責任を感じて取った行動が、なんと特攻攻撃なのである。
↓閉じ込められていた部屋のドアを頭突きで破壊し駆け抜けると
↓城のテラスから神風特別攻撃を彷彿とさせるダイブ!
↓天上界を死滅させるガスが充満するタンクに頭から突き刺さる君は星となったのだ!
私はこのシーンを思わず二度見てしまった。記憶に残る名シーンである。
その他、ドラえもんが故障し、しかもその故障が水没するとなぜか直るといういわばiPhoneの逆パターンで、そこには現代の理屈を超越した22世紀の革新的技術を彷彿とさせたり、「国の建設に際して株を発行して資金を得る」という非常に硬派な話があったり、様々な点で現在のドラえもんにはない、逆に真新しいドラえもんを堪能できる。こんなにも素晴らしいドラえもん映画は他にないのではなかろうか。
のび太とドラえもんが雲の王国を建設する様子は、YouTubeのゲーム実況動画で人気の『マインクラフト』を彷彿とさせる。が、もちろん本作の公開の方が遥かに先である。
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藤子・F・不二夫の先見の明は素晴らしい。
私世代では『ポピュラス』というゲームの方がしっくりくるかもしれない。
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なんにしても、国づくりは男のロマンなのである。その点も、藤子・F・不二夫はよくわかっている。男たるもの、一国一城の主を夢見るものである。よく特撮モノや昔ながらのアニメにおける悪の親玉が世界征服を企むのは、この願望の究極系であるといえる。世界を自分の城にしたい、と思うのである。
しかし無粋なことをいえば、実際に世界征服ができたとしても、真に大変なのは形作りよりも形あるものを維持していくことであり、それを世界征服におきかえればすなわち運営統治である。征服したものを維持していくことの方が恐らく困難であり、世界征服とはまた違った才能・手腕が必要とされる。徳川家康には全国統一はできなかったかもしれないが、豊臣秀吉には江戸三百年という長きに渡る泰平の世は維持できなかったかもしれない。
そんなわけで、のび太が作った雲の王国もどうせいずれは崩壊しただろう。が、のび太とドラえもんが遊び心で雲の王国を作らなかったら、天上人達のノアの箱舟計画は知られることなく発動し地上は崩壊していたので、その点の功績は認められるべきである。のび太の住む町が水没して全てが水に沈んだ光景はなかなか凄惨な光景であった。のび太がママを探して階下に行こうとしたら迫りくる水に飲みこまれてしまった姿は、年代によってはトラウマとなったことであろう。
そんなわけで、本作はドラえもん映画史上名作中の名作であることは疑いようがない。期待値を上げ過ぎるとあまり面白くなくなってしまうかもしれないが、近年のドラえもん映画と見比べると、しずかちゃんのシャワーシーン一つとっても、ドラえもん映画としてのそもそもの在り方からして違うことがよくわかる。そして断然、昔の作品の方がよいわけである。私は若い頃、学生時代は全くモテなかったので、私と逆である。別に今もモテないから、そもそもの在り方からして違うね! 超どうでも良い話ね!
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