アトランティス 失われた帝国 | 映画物語(栄華物語のもじり)

映画物語(栄華物語のもじり)

「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。




★★★☆☆
 著作権とはなんなのか、という話。


 本作は劇場公開当時から、かつてNHKで放送されていたガイナックス製作の『ふしぎの海のナディア』との類似点を追及されてきた作品である(ガイナックスはエヴァを作った会社)。いや、はっきり言って類似点という言葉では生ぬるく、パクリという言葉こそ真にふさわしい。どれだけ似ているかというと、このリンク先(クリック) を見れば多くを語るに及ぶまい。自分が権利を有する著作物に関してはいじわるばあさんよりもうるさいことで知られる天下のディズニーが、まさかここまで盛大にパクってしまうことに当時の世間は驚くとともに、ディズニー側はまるで黒歴史のように本作はまるで最初から存在しなかったように歴史から消してしまった(ような気がする)。それが、監督が盛大にパクっていたことにディズニー側が気づかなかった黒歴史だからなのか内容がイマイチだからだったのかは定かではないが、一つだけいえることは、著作権法違反は親告罪なのでガイナックスが訴えなければ倫理的にどうかは別として犯罪にはならないのである。ただ、このブログで何度かとりあげた「記念樹事件」 が盗作認定を受けた限り、日本で裁判をやれば「盗作」と認められて然るべきである。私が今後望む展開は、ガイナックスに『ベイマックスvsエヴァンゲリオン』的な作品を勝手に制作してもらい、果たしてディズニーがどう出るかというのを見てみたい。
 さて、肝心の内容であるが、くどいようだが『ふしぎの海のナディア』をキャラもストーリーも劣化させたようなものである。キャラはより魅力を薄く、ストーリーは光の速さのように巻きで構成し、あっという間に褐色の女の子(ナディアではない方)と仲良くなるという話である。ストーリー展開の早さはパクリ云々ではなくディズニー作品の美点でもあるとも思うので特になにも言わないが、沢山出てきた個性豊かなキャラクター達が「なぜこんなにも可愛くないのか」というのは問題である。特に男性キャラはともかくヒロインが可愛くないのは致命的である。これを失うとディズニーとしての魅力が全くないと言っても過言ではない。玉子の入っていないおでんのようなものである(個人的な嗜好によるたとえ)。
 言語学者である主人公は、自分が勤務する博物館において「アトランティス発見のためにお金を援助してくれなかったら、僕は辞めますよ!」というような強気な発言をする。作中では、主人公の言葉に耳を貸そうとしない博物館の理事長たちを「話の判らない人達」というように描いているが、一社会人として思うのは、主人公の発言の方がよほど問題があると考える。そもそも「~してくれないと辞めます」というのは、自分によほどの価値があると自分自身で思っていなければ出てこない発言である。実は以前、実生活においても全く同じ発言を聞いたことがあるのだが、そのとき思ったのは「その発言によって上司があなたを辞めさせないのは、あなた自身が必要とされているからではなく、諸々の利害関係によって辞められては困るからでは」ということである。諸々の利害関係とは、例えば自分の部署から退職者が出ることの面倒であったり、時期的なものであったり(すぐに人員の補充ができな時期等)、もっといえばただ単に人に強く出れらない性格で「なら辞めろ」と言いたくても言えないだけだったり、要するに自分だったらそんなことを言う人はお願いしてまで居て欲しいとは思わないということである。しかし、なら辞めろと強気に出られない状況というのもまたわかるから、世の中ままならない。高校の先生なんかでいえば、生徒に「~なら学校辞める!」と言われても「よし、辞めなよ!」とは思ってもなかなか言えないだろう。思っているかは知らないけど。
 ということで、主人公がこの発言をした物語のかなり序盤に、私はこいつのことをもう嫌いになっていた。こんな奴に対して、理事長はわざわざ車を引き返させて、主人公を慰留する。今まで全く結果を出していない研究者が「金を出さないと辞めてやる」と横暴を言っているにも関わらず、優しく諭すように「早まるな」と引き止める理事長を、どうして悪く見せようとするのかディズニーの気持ちが全く理解できない骨の髄まで組織人間の私である。むしろ、そんな上司のもとで働きたいと切望する。
 話は全く変わるが、私にとってアトランティスといえば『アトランチスの謎』である。これは20数年前、我が家に「ファミコン」がやってきたととき、本体と同時に一緒に来た記念すべき第1号ゲームソフトなのである。当時『スーパーマリオブラザーズ』が世の中を席巻している時代で、「あのスーパーマリオを越えた!」というのがキャッチフレーズであった。そして、確かにあらゆる面で越えていた。ステージが100あるとか、難易度が異様に高いステージがあるとか、行くだけで一発死確定のステージがあるとか(ブラックホール面)、2コントローラーのマイクで何かいうと敵が停止するアイテムがあるとか、当時の開発者の並々ならぬ意気込みを感じる名作であった。なかでも一番「越えた!」と思う要素は、「エンディングがない」である。このゲームの目的は「アトランチス大陸で行方不明になった師匠を助けに行く」というものなのだが、いざ師匠がいるステージにたどり着くと、師匠はただただ笑ってその場に佇み続けるのみなのである。しかも、その後、自分が今まで通ってきたステージに戻れるというエンドレスな仕様になっており、現在の規格ではおよそ考えもつかないような実に破格なゲームとなっていた。そして何より、「アトランチスの謎」の「謎」が一体何なのか謎のまま終わるという、最大の謎が今もって残されている。こういうゲームは、今後出てこないことだろう。
 「アトランティス」、この伝説上の大陸は、今もって、様々な形で人々に謎を与え続けている魅惑の大陸なのである。


 あ、映画は別に観なくてもよいと思う。まあ、『ナディア』を知らなければそこそこ楽しめるとは思うが。



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