ジェフ・ベック…夢のあと その2<アコースティック> | 愛は限りなく ~DIO, COME TI AMO~

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一粒の雨にさえ心揺れることもある。いつもどんな時も心閉ざさずに…。

ジェフ・ベックアコースティック・ギターで録音した作品は皆無に

等しいです。

思いつくのは、「トゥルース」(1968年)収録の“グリーンスリーヴス” と

「ワイアード」(76年)収録の“ラブ・イズ・グリーン”くらい。

前者はクラシックの有名曲。

全て指で弾いているけれど、クラシックで通常弾かれるポジションと

は、意識的に変えて演奏しています(調を変えていると思う)。

そのせいか、原曲の持つ流れがここではあまり感じられない。

まあ、ジェフが録音に使ったのは、クラシック・ギターではなくアコー

スティック・ギターだから、この手の曲を演るにはやや不利かも。

高いフレットに来るとかなり音痩せがあるし…。

しかし、決して悪くない演奏だと思います。

録音がもう少ししっかりしていれば、もっと良くなったでしょう。


“ラブ・イズ・グリーン”に関しては、文句なしの名演であり名作。

ナラダ・マイケル・ウォルデンがジェフのために書き下ろした美しい

曲で、ナラダはこの作品に限りピアノを弾いています。

そして、ジェフが弾いているのはクラシック・ギター。

これも前者同様、運指や押弦で左手がややつらい曲です。

しかし、イントロから聴こえる美しい調べを聴くと、そのようなことは全

く感じさせません。

録音状態も良好で、クラシック・ギター特有の響きをとらえています。

ただし、エレクトリック・ギターの存在も重要で、特にフォルテで聴か

れるオーバードライブを効かせた音は芸術的です。

「美しい歪み」とはおかしな言葉ですが、ことジェフに限ってはこうい

った表現も通用するのでは。

また、終盤登場するヴォリューム奏法も、曲いやアルバム全体を締

め括るのにふさわしい。

だから、厳密にはアコースティック作品とは言えないかも。

クラシック・ギターのみで成り立っているわけではないので…。

これがスティーヴ・ハウなら全てガットだけで演りそうな気がする。


以後アコースティック・ギターが前面に出ることはありませんね。

“デクラン”(99年作品の「フー・エルス!」収録)でのアルペジオ、“プ

ランB”(2003年作品の「ジェフ」収録)の「静」のパートで聴けるコード・

ストロークくらい。

なお、どちらもジェフの演奏ではないそうです。

勿論、バラード系の曲はいくつも録音していますが、エレクトリックに

限られており、アコースティックの出る幕はなかなか来ない。

でも、例えば“ホエア・ワー・ユー”“トゥー・リヴァーズ”のギターを、

アコースティックに置き換えて考えるなど想像も付きませんよね。

インド音楽の“ナディア”は他のミュージシャン、ジミー・ペイジジョ

ン・マクラフリンならアコースティックで演奏する可能性大。

またアイリッシュ音楽の演奏家と共演した“デクラン”だって、マイク・

オールドフィールドであればアコースティック、あるいはエレクトリッ

クと半々という手法をとった可能性があるかもしれません。


アコースティック的な演奏に近いのがアナザー・プレイス”

珍しくギターの響きをそのまま生かした演奏方法で、他の楽器を一

切入れない、まさしくソロ・ギター曲です。

アームの使用も、トーン・コントロールも、フラジオレットもない。

これなどアルバム(「フー・エルス!」)最後の曲だから、アコースティ

ックで演奏しても面白かったのではと思います。


ジェフがアコースティックを使わない理由は、恐らくエレクトリックで

表現できる幅が広すぎるからではないでしょうか。

ストラトキャスターの持っている能力を120%引き出したと言うか。

いや、今も引き出そうとしてるはず。

ひょっとしてジェフにとってのアコースティック・ミュージックって「ク

レイジー・レッグス」(92年)かもしれませんよ!

まあ、ロカビリーは元来カントリー・ミュージックの親戚だし(^m^ )。


ジェフ・ベック
クレイジー・レッグス

“グリーンスリーヴス”の箇所で、アコースティック・ギターとクラシッ

ク・ギターを分けて書いたため、話が煩雑になってしまいました。

前者はスティール弦を使ったいわゆる「フォーク・ギター」のことで、

後者はナイロン弦を使ったものです(ガット・ギターとも言う)。

一応、今回はどちらも総称してアコースティックと呼ぶつもりが、同

曲に関しては区別せざるを得なかったのでm(__)m。


Ibaraqui, le 15 juillet 2005