数cmから1万kmの恋 -5ページ目

0cm「愛に行く」(21)

私たちはイエローキャブに乗り込み、メトロポリタン美術館を散策し始めた。

今朝一緒にボデガに行ってから、私たちは外に出ると必ず腕を組んだり、手を繋いでいた。

隣に並んで歩いていると手が触れて、それをすくい上げるようにジョンは私の手を彼の腕に引き寄せた。

それから私も少し様子を見ながら、自分からジョンの腕に掴まる様になっていた。

人ごみの中、はぐれないように強くジョンの手を握っていた。

数体のミイラが並んだ場所を抜けると、そこにはガラス張りの広い空間が見える。

エジプトの神殿の一部のようなものが水が張られた上に立っていて、そのスペース全体が芸術そのものに感じた。

「黄菜、疲れてない?」

手で覆って隠したつもりだったが、あくびしたのがばれたようだ。

「ちょっと眠いだけ。あんまり寝てないのが今響いてきたみたい。ジョンも眠いでしょう?」

「結構眠くなってきたなぁ。またアパートに行って一休みしてもいいし。」

「そうだね。だいぶ見て回ったし。連れてきてくれてありがとう。」


再び私たちはキャブに乗り込み、アパートへと向かうことにした。

行く先々で入場料や食事代、タクシー代など全て払ってくれるジョンに申し訳なく、今回のキャブでも支払いを申し出たが、「秋田では黄菜の両親にだいぶお世話になったから。」という理由で払わせてはくれなかった。

部屋に着くなり、少し小腹がすいた私たちは、冷凍庫にあったインスタントのポッドパイを電子レンジで加熱して食べた。

食事後、私は寒さで凝った首をクルクルと少し回した。

「黄菜疲れてそうだね。ベッドの中でマッサージしてあげるよ。行こう。」

「うん、ありがとう。」

今の私たちにとって、当たり前でごく自然な事のようにジョンはさらりと述べ、私もそれに便乗するように彼に続いて私もベッドに潜り込み、ジョンに背を向けた。

ジョンは片手で私の肩を揉みはじめるも、すぐに眠気で手の動きが遅くなり、私もそれと同時に夢の中へと吸い込まれていった。