数cmから1万kmの恋 -103ページ目

40cm: 「千野家とのノミュニケーションの始まり」(1)


外国人を迎えての初の墓参りを終えた後、私達家族とジョンはすぐさま「ちひろ」へと向かった。



到着するなり、母は2つのグラスとキンキンに冷やしておいたアサヒのビンビールをテーブルに出した。



「飲むぞ、ジョン。まず座れ。」



と父はビンの栓を抜き、ジョンのグラスにビールを注ぎ始めた。



「あぁ~、すみません、千野さん…。弘子さんも一緒に飲んで。」



と言いながら、両手でグラスをもつジョンの姿は日本人さながらだった。



いつの間にかジョンはうちの父の事を苗字で”千野さん”、母の事は”弘子”さんと呼ぶようになっていた。



父と車に乗っている間にでも決めたのだろうか。



「黄菜も一杯やるが?もうそろそろいいべ。」



とすでに上機嫌で、父はニヤニヤしながら私に問いかけていた。



今年に入ってから何回この言葉を聞いただろう。



「まだ未成年だから飲めないってば!」



確かにあと数ヶ月ほどで成人となるが、変に生真面目な私は断固として父からの酒の誘いを断っていた。



少し前にビールを味わってみたことがあったが、全くおいしくないし、ジリジリとした苦味しか感じなかった。



まだ飲みなれてないだけなのかもしれないが、あんなものを飲むくらいなら、大好きな缶の紅茶を飲んだほうがよっぽどましだと思った。



なによりも、毎日のように晩酌し、酔っ払う両親を見ていて、「こんな大人には絶対ならない。」といつからか強く思うようになり、成人を過ぎても酒には手を出したくないと密かに誓っていた。



「かんぱーい!チアーズ!」



と父が陽気にグラスを掲げ、ジョンとの飲み会が始まった。



私は弟の陽平の隣に座り、2人とも少ししらけたように、酒を飲み干す3人の大人たちを見ていた。



と突然父が、無茶振りを言い出した。



「黄菜、英語でしゃべれ!」



正確にはそれは無茶振りではなかった。



英語が大好きで大学でまで勉強させてもらっているのだから、言われて当然の事であったが、正直戸惑いは隠せなかった。



なぜなら私は極度の恥ずかしがり屋に加え、英語での会話も全く自信がなかったからだ。



「何話せばいいかわかんない…。」



「大丈夫だよ。ほら、俺日本語話すし。何でもいいよ。」



とジョンはやさしく接してくれた。



そして私は簡単な自己紹介を英語でした。



1分と持たなかった。



「…おぉ~!何ていってだがわがらねのも、すごいねぇ!ジョン、今の英語通じたが?」



酔いがいい具合に回ってきた父は、声もリアクションも大きくなっていた。



「うん、通じたよ。バッチしです!」



と言ってテンション高く、OKサインを手で作って見せた。



私は死ぬほど恥ずかしかった。



英語と日本語が話せる人に、自分の英語を日本語で評価してもらうほど恥ずかしいことはない。



そして、明らかに初歩レベルの私の英語を”お世辞で”ほめてくれたジョンの気遣いが、さらに私を恥ずかし気持ちにさせた。



酒も飲んでいないのに、私の顔が熱く、真っ赤になるのがわかった。



そして私は逃げるように厨房でつまみを作っている母の元へと駆けつけた。









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