・発生時刻:2023年9月23日 18時30分頃
・場所: 恵林寺山城(山梨県甲州市)
・事象: 道迷い、予定と異なる地点への下山
城の南麓にある「塩山ふれあいの森総合公園」の東側の道から入山し、尾根づたいに城に到達した。
帰路は同じ経路を戻る予定だったが、南端の三の郭で尾根が左に折れているところをそのまま直進してしまい、途中で誤りに気付いたもののそのまま752メートル地点を経て総合公園北側に下山。最後は防獣柵を乗り越えての脱出となった。
下山する頃には日没を過ぎて周囲が暗くなり、地面が辛うじて視認できる程度になっていた。
(電子国土webの図上に筆者作図)
★状況
予定していた経路には踏跡が途切れ途切れにある程度で、道や案内標はおろか人工的な構造物は一切無し。
誤って降りた経路付近は土の急斜面が続いており、崖や岩峰、ヤブ等の障害物は無く、何とか歩いて降りられる斜度でもあった。
誤進入に気付いた時点で、現在位置と麓までの比高が100メートル程度であることをGPSで確認し、さらに麓の灯りが樹林越しに見えていた。
周囲の斜度が麓まで下りられる程度であることを地形図から読み取り、岩峰等も無さそうで麓の灯りが見えるほど近距離であったこと、さらに日没を過ぎて周囲が暗くなりはじめたこと等で、このまま降りてしまった方が安全と判断して下山を継続した。
下山点付近には防獣柵があり扉などが見当たらなかったが、登って乗り越えることが出来た。また下の道路に法面防護等は無く、ここも歩いて降りることが出来た。
★原因
尾根が分岐する三の郭南方で、本来であれば左に折れるべきところを直進したことだろう。
三の郭は削平が甘く虎口等も無い、ほとんど自然地形のままの丸い尾根になっている。
この尾根の南端で左右に尾根が分岐していて、右方向に迷い込む可能性も非常に高いと思われる。
三の郭周辺 なだらかな尾根が南端で分岐している
※電子国土web上に筆者作図
また、現在位置と麓までの経路が地形図上で確認出来ていたとは言っても、道のない山はたおやかに見えても中に崖や岩峰等が潜んでいることがしばしばあり、特に沢にぶつかると地形が険しく通過できないリスクが高くなる。さらには下山した先の防獣柵や林道の法面等を越えられないリスクもある。
誤進入経路上に障害物が無く車道へも何とか脱出できる状態であった事が幸運だったのであり、基本的には登り返して予定していた経路へ戻るべきだったろう。
★対策・効果
道のない山での下山時は、別の地点に確実に下山できる道が接続していない限り、必ず登ってきた経路を戻ることとした。
また、下山中は地形図上でGPSを用いて現在位置を確認しながら進むこととした。特に尾根の分岐では想像していたよりはるかに簡単に誤った経路に入ってしまうことが分かったので、10メートル程度ごとに現在位置を確認し、経路を誤っている場合には直ちに戻ることとした。
さらに、山中で携帯電話の電波が入らないことが考えられる場合には、オフラインでマップを読み込んでおくこととした。
これらの対策により、信越国境の雨引城への登城時(2024年4月29日)には下山中2ヶ所に尾根の分岐があって経路を誤りかけたが、50メートル以内に誤りに気付いて予定の経路に戻ることが出来、無事下山した。
本事例は下山中に誤進入した尾根にリスクが少なかったことが幸いして難を逃れたものと言えるだろう。
道迷いによる遭難は登山道や道標などが完備したコースでも発生している。誤進入は想像以上にたやすく発生すると認識しておくべきだろう。
(2024年5月17日 記)