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この城へは登山道のない尾根を900メートルほど往復することになり、別の尾根に迷い込みやすい場所もあって遭難のリスクがあると思われます。

地形図とGPSを使った登山ができる人を含む複数人のパーティで訪問するのが良いでしょう。

インシデント事例を載せました。


恵林寺山城はJR中央本線の塩山駅あたりから北に7kmほど、「塩山ふれあいの森総合公園」の北側に広がる山稜の中に眠っている。

ネット上で調べた限りでは情報は少なかったが、平成も終わりに差し掛かったころに発見された城で、来歴も謎に包まれているという。

 

城は、北の方に聳える扇山に続く尾根の途中にある。

地形図を見たところでは、甲府盆地に面した西側の斜面が特に急峻で、城は山稜上の扇山手前に広がる小ピーク上を占めているように見える。

斜面では等高線の間隔が詰まっているのに比べて稜線付近は疎らで、幼年期山地の特徴を残しているように見える。

(電子国土webの図中に作図)

 

色々調べた限りでは、総合公園の駐車場から林道を登って、城の南東に伸びる尾根をたどって登るのが登りやすいが、ハッキリとした道は無く地図とGPSが必須との事だった。

まぁそういう山なら何度か経験済みだし…等と安易に考えて、昼もだいぶ過ぎてからアタックしたが、ふっと気を抜くと別の尾根に迷い込んでしまうような厄介な尾根だった。

 

入山の際は甘く見ず、十分に注意されたい。

 

まずは「塩山ふれあいの森総合公園」の東側へ。

南側をうねうね登る細い道を登っていくと、フルーツパラダイスの駐車場がある。

休日の午後などはかなり混雑するがトイレも自販機もあるので、ここをベースキャンプにすると良いだろう。

 

ここから、細い道をさらに登ってゆく。

急勾配で狭く、両側から🌿🌿も迫ってきて、なんとも頼りない林道…💦

それでも舗装はされている。

 

城は道の北西方向のかなり先にあるが、道は登りながらどんどん北北東に向かっている。

本当にこの道から登れるのかと不安になるが、途中で現れるいくつかの分岐はひたすら直進しつつ登ってゆく。

 

赤い屋根の小さな家を左手に見、さらに200メートルほど進むと、峠のような場所に分岐がある。

ここを左へ入ってゆく。

 

森の中の緩やかな舗装道をさらに200メートル少々で、舗装道路は終わる。

 

直進路と左への道に分かれているが、ここを左に入る。

轍が深くえぐられていて、入るにはオフロード車が必要だろう…

途中現れる分岐は右上に入り、コンクリ舗装が復活したり無くなったりするのを見つつ登ってゆくと、300メートルほどで尾根線に出る。

左に曲がって50メートルほどに、柵に囲まれた施設があり、道はここで終わっている。

 

ここからは、先人が遺したかすかな踏跡を頼りに尾根線を拾ってゆくようになる。

正面方向に踏跡が登っているので、そこから取り付くと良いだろう。

 

尾根は倒木が多く、取り付きはかなりの急傾斜。

女郎蜘蛛の天国でもあり、秋口には大きな巣をそこいら中に張り巡らしているので、虫の苦手な人は注意がいるかも知れない。

1回だけ、巣に気づかず突入した時に身体に乗っかってきたが、噛まれなかった。人に噛みつくようなことは滅多にないのだろう。

また、神経毒を持っているが噛まれたとしても人体にまず影響はないとの事。

 

地図上ではずいぶん距離があるように見えた尾根だが、実際には林道終点から30分も歩いたか、というところまで来ると…

地形図では、中央の赤点を打ったあたり

(電子国土webの図中に作図)

 

城あった〜🙌

 
平坦な尾根が急に登り始める、裾あたりを横切る溝…
間違いなく、最初の堀切🙌
てっぺん付近は大人しく見えるが、特に南の斜面を降りてゆく竪堀が、鋭く抉れていて立派✨
 
堀切に入り込んで少し南に降りてゆくと、目が覚めるような鋭い薬研堀になっていた😮
 
てっぺんは、こんな感じに丸くなっているように見えるのだが…
 
見ると、尾根線上で土橋を渡しているようだ…
 
こういう堀切はてっぺんあたりが大人しく見えることが多いが、斜め方向から見ると土橋の存在が見えてきたりする。
狭い土橋上で寄せ手を一列縦隊にさせ、城内側からの攻撃で一人ずつ仕留めようという、シンプルな作りのキルゾーンだったろう。
間違いなく寄せ手の侵入を食い止める防御遺構だった。
 
その先は、尾根の幅は広いがかなり急な登りになる。
踏跡は見えるしヤブもないので迷うことはなく、土もしっかりしていて落ち葉も積もってないので、それほど歩きにくくもない。
 
ひとしきり登って、再び斜度の落ちた尾根上を進んでゆくと、ほどなく…
 
次の堀切や…😮
 
これまた、狭い尾根を人力で掘り込んだものとハッキリ見て取れる😮
これも、てっぺんで土橋を渡しているタイプらしい。
 
最初の堀切と違って、両側の斜面を落ちてゆく竪堀は痕跡程度になっていた…
北側
 
南側
 
堀切の上は、ほとんど見えなくなって入るが一段上に坂虎口のように掘り込まれて登ってゆくようになっている。
大手門っぽいな🧐
 
ここから少しの登りが、かなり急傾斜でキツイ💦
近くの小田野城にちょっと似てるかな…?
 
登りが一旦途切れたところに、真新しい境界標が打たれている…
 
ふたたび倒木の多くなった尾根を登りきり、少し行くと三の郭。
尾根から虎口もなくそのまま曲輪になっている。
 
ここで山稜が大きく北にカーブしている上に虎口のような目印になるものが全く無いので、特に下山時は南に落ちる尾根に入り込みやすいので注意⚠
ここを降りると、道はないが岩峰などの障害物もなく土の急斜面が続くので、迷い込んでもそのまま降りれば下山できる。ただ最後が獣柵で扉がない…
 
城内で最初の主要な曲輪だが、テニスコートより少し広いぐらいで、周りには土塁などもない…

それでも周囲の斜面、特に南〜西側の斜面が急峻。

切岸加工されていたんだろうが、基本的にはこの天険に拠った城なのだろう…

 
西の方へ落ちる細くて急な尾根を少し下ると、小さな堀切があった…
 
ここも、てっぺんには土橋が架かっていたらしく、掘り込みがほとんど見えなくなっている…💦
それでも、これが城の南西側の境界だったか。
 
曲輪に戻って、主稜線の続く北に向かう。
ここにも虎口などはなく、太い尾根がいきなり落ちている。
20メートルばかりズルズル滑りながら下ると、一番低いところにまたまた小さな堀切が穿たれていた😮
 
堀切本体には倒木が架かっている。
上を歩けるようなものではなく、自然に倒れかかってそのままになっているんだろう。
 
この堀切も底を土橋で渡っていたらしく掘り込みは大人しいが、両側に落ちる竪堀は何となく見える…
 
底を渡っている土橋。
倒木はウォーク好きに捧げよう💕
 
堀切からわずかに登ったところには、二の郭が横たわる。
三の郭より南北に少し長いぐらいか。
こちらも土塁などが無く、両肩が丸くなっているので削平が甘く見えてしまう…
 

二の郭からは、虎口も土塁もなくそのまま太い尾根になって、わずかに下りつつ北に伸びている。

 

この城、尾根上に堀切は何本かうがっているが、土塁や虎口らしいものがほとんど無く縄張りの技巧性は皆無に見える。

一番低くなったところにも、堀切などは無かった…

 
で、またまたゆるい傾斜の尾根を登ってゆくと、てっぺんが見えてくるにつれて倒木が多くなり、進みづらくなる💦
登りきると、そこが主郭だった。
 
今までの曲輪と違って、丸や正方形に近い形をしている。
野球の内野ぐらいの広さで、やはりそんなに広くはない。
 
城の曲輪はこれだけらしい。
さらに先へ行ってみると、幅があまり狭まらないまま緩やかに下っている。
 
そして、またまた倒木が増えてくる…
100メートルほど進んだが何もなかったので、ここで引き返すことにした。
城は主郭で終わりらしいが、城外とを区画するものは何もなかった…
 
ここから先に進むと、城名のもとになった恵林寺山(扇山)があって、ここまでの尾根は登山コースになっているらしい。
もちろん整備されたコースではなく、先人のつけた踏跡とピンクのリボンが頼り、地形図とGPSを駆使して登ってゆくような山慣れた人向けらしい。
険悪な露岩に行く手を阻まれるような場所は少ない山に見えるが、尾根周辺が全体に丸くなっていて、分岐点で迷いやすいように思える。
コースアウトしたことに気付きにくく、気づいた時には戻れなくなって遭難することもあり得ると思われるので、十分に注意したい。

 

城としては、山体が急峻で尾根周辺がたおやかな壮年期初期の山稜を活かし、ピークを曲輪にし隣接する尾根に堀切を入れただけの素朴なもので、土木工事の規模は大きくなく技巧性もほとんど無い。

来歴がまったく謎に包まれているとのことだが、要害山城などよりも前の時代、山城が進化を遂げる以前の始原的な城なように見えた。

 

★恵林寺山城

山梨県甲州市塩山小屋敷付近

塩山ふれあいの森総合公園東側の南側駐車場(P4)利用が良い。

山城

 

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(2023年9月30日 記)