日本では当たり前のように各家庭に水道が引かれ、そのお水を飲むことができます。
しかし世界に目を向けてみると、水道水をそのまま飲むことができる国は限られており、日本以外では9か国しかありません。
日本と同じような感覚で、渡航先の水道水を飲んだり、料理に使ったりするとトラブルになってしまう可能性があります。海外に行く前には、その国の水道水事情を知っておく必要があります。
この記事では水道水を安全に利用できる国を紹介します。海外でお水を飲むときのポイントも解説するので、快適な海外滞在ができるように参考にしてみてください。
水道水をそのまま飲める国は、以下の通りです。エリアごとに確認してみましょう。
■アジア圏
日本
■ヨーロッパ圏
オーストリア
アイスランド
アイルランド
スロベニア
デンマーク
ドイツ
フィンランド
ノルウェー
■アフリカ圏
南アフリカ共和国
上記に加えて、オーストラリアのシドニー、スウェーデンのストックホルムの2都市でも水道水がそのまま飲めます。
アジア圏では唯一日本だけで、北米、中南米、オセアニア、中東圏には1か国もありません。一方で、ヨーロッパ圏、特に北欧では水道水が飲める国が多いのがわかります。
上記以外の国に行く場合には飲み水に注意して、常にお水の確保を心がけるようにしましょう。※1
日本の水道水は品質が高い
日本は単に水道水が飲めるというだけでなく、世界的に見ても品質の高さが特徴です。日本の水道水は、「水道法第4条」に基づいて厚生労働省令により水道水質基準が定められており、全国一律に施行されています。
さらに日本の水道法は、水質基準項目が多く設けられ、その数値も厳しいものに設定されています。加えて「水質管理目標設定項目」や今後のために必要な情報・知見の収集のために「要検討項目」が定められ、常に水道水の質の安定と向上を図っています。
水道普及率が98%以上を誇る日本は、高い品質を維持しており、全国どこでも水道水をそのまま飲むことができるのです。※2
ほとんどの国の水道水が飲めない理由
世界の国の数は196か国もありますが、ほとんどの国で水道水が飲めないのはなぜでしょうか?その理由を探ってみましょう。
水源の確保が困難
飲み水をくむために、大きなバケツを肩にかけて毎日悪路を数時間かけて歩く少女の映像を見たことがあるのではないでしょうか。さらに、そのお水は泥水のようで、日本人からすれば、到底飲み水とは思えないようなものです。
こういった現状は「水資源賦存(ふぞん)量」で推し量ることができます。水資源賦存量とは、降水量から蒸発散によって失われる水量を引いたもので、人間が最大限利用可能な水資源の量のことです。
世界の1人当たりの水資源賦存量は平均6.148㎥/年で、北アフリカでは284㎥/年と、平均の1割にも満たない量となっています。これは雨量の差による干ばつ等で水源そのものを確保できないということです。特に中東やアフリカ圏での水不足は、今後より深刻な状況に陥ることが予想されています。※1
水質が悪い
諸外国ではそもそも河川の水質が悪すぎて、浄水施設で浄化しても飲み水に適さないということがあります。河川の水質が悪い要因としては、以下が考えられます。
- ごみの大量放棄
- 未処理の生活排水
- 工業廃水
- 農薬による水質汚染
経済協力開発機構(OECD)が2012年にまとめた、今後の世界水質についての報告によると、「今後大部分のOECD諸国では安定した水質への還元を進めるが、その他の地域では農業と排水処理の不備により栄養塩が流入し、数十年でますます水質が悪化する」としています。
具体的には海水や河川に含まれる栄養分が、自然の状態より増えすぎる「富栄養化」が生じ、生物の多様性が破壊されることが予想されています。※1
水道や電気・ガス等のインフラを整えるには、莫大な費用がかかります。日本のように国土が狭ければ、インフラ整備を進めやすいのですが、アメリカや中国のように広大な国では莫大なコストがかかるため、整備するのは困難です。
そして水道管を通したとしても、管理やメンテナンスまで考えると、先進国であるアメリカでも水道設備を整えるのは現実的に困難であるといえるでしょう。
さらに、貧しい国であれば、そもそも水道管を通すことさえままなりません。そのうえ、浄水処理にも高度な技術と費用がかかるため、国中に水道管を通し、常にきれいなお水が飲めるように整備するのは難しいのです。
海外で水道水を飲むときのポイント
基本的に海外では水道水をそのまま飲むのは避けた方がよいでしょう。日本と同じように海外で水道水を飲んでしまうと、水あたりによる体調不良や病気の原因になることもあります。
せっかくの海外で「ホテルで寝込んでしまう」「病院に行かなければならない」等のトラブルを防ぐために、海外でお水を飲む際のポイントを押さえておきましょう。
基本はボトリングされたお水を飲む
海外では基本的に、ボトリングされているミネラルウォーターを飲むようにしてください。日本からお水を持って行くのも1つの方法です。ただし、滞在分のお水を用意するとなると大量になり、手荷物として飛行機に持ち込めないため、チェックインカウンターに預ける必要があります。
現地でお水を調達する際は、ボトリングされているミネラルウォーター等を購入しましょう。その際も蓋が開封されていないかしっかり確認してください。
また、SNS等を活用して現地在住の日本人や、旅行した人の情報を収集しておくのもおすすめです。
水道水しか飲めないときは?
海外では日本のコンビニのようにお店が開いていないことや自動販売機もないことが多く、思うように飲み水が確保できないこともあります。
その際には浄水器を使って煮沸消毒をすれば水道水が飲めるようになります。しかし、海外で浄水器を探して購入したり、日本から浄水ポットを持っていったりするのは現実的ではありません。
手間や安全性を考えても、購入できるタイミングで事前にミネラルウォーターを用意しておきましょう。その際は予備分を考慮して多めに購入しておくと安心です。
屋台の料理にご注意を!
海外でもレストランでの食事は基本的に安全といわれていますが、屋台では注意が必要です。
特に東南アジアの屋台は、水道水で食材を洗っています。少量であってもお水が合わず、お腹を壊してしまうケースは珍しくありません。また、屋台では食材を外で保存しており、気温の高い地域では食材自体が傷んでいる可能性も高いといえます。屋台での食事には十分に気をつけてください。
水道水を飲まなくてもリスクがある
海外で「一切水道水を飲んでいないのに、体調が悪くなった」という話をよく聞きます。
これは、ジュースを作るために水道水を使っていたり、グラスに入っていた氷が水道水で作られていたりと、知らぬ間に水道水を口にしているケースがあるからです。また、食材や食器、調理器具等を水道水で洗っていることも考えられます。
盲点なのが歯みがきやうがいです。
「飲まないから大丈夫」と思っていても、直接口に入れるため安全とはいえません。日本の感覚だと、もったいないような気がしますが、海外では歯みがきやうがいにもボトリングされたミネラルウォーター等を使いましょう。
海外に行く時はお水事情を調べておこう
水道水をそのまま飲める国は、世界中でもごくわずかです。基本的に海外では水道水は飲めないと考えておきましょう。
「少しくらいなら大丈夫」という過信から、滞在中に寝込んでしまった、というケースも少なくはありません。せっかくの海外でのトラブルを防止するためにも、滞在先のお水事情をしっかり調べてから出発しましょう。
外務省のHP「外務省海外安全情報」では、お水事情が掲載されている国もあります。海外滞在を快適に楽しむために、渡航前にチェックしておきましょう。
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