つりぼり十番勝負《カナダ編》⑥
「父さんっ!キタア~!!」
「おっ!いいぞ!……よしっ!父さんのネットの方へ!」
「やったあ!!大きいね!」
「おお!なかなかのサイズだぞぉ!よしっ!写真撮ろう!」
「うんっ!」
「カシャっ!」
「ねえ…父さん。さっきからあっちの岸のおじさんが魚上げるたびに僕を見るんだけど……」
「ん?すごいなあって思ってるんじゃないの?」
「そ、そうかな…何かジィーと見るんだ……」
「そうかい?」
「そういえばあのおじさん…全然釣れてないね。」
「ん…そうかな。」
「あんなに汗かいて……朝からいるけどほとんど釣れてないみたい………」
「ん……まあ良いじゃないか。」
「何でだろ?大人なのに………下手くそなのかな?」
「コラっ。そんなこと言うもんじゃないぞ。」
「う、うん。ごめんなさい。」
「さあっ。おじさんはいいから釣りなさい。」
「う…うん。」
全く反応もしない池に狂ったように投げ続ける釣り。
ほとほと疲れ果てていました。
少しながらも日が傾き、釣りには影響がないほどの風も吹き始め、さあそろそろ活性が上がっても良いだろうという頃、わたくしのハートはもう完全にへし折れていました。
日中に滝のように流した汗は渇き始めて、Tシャツ、はたまた二の腕にまで「塩」が浮いています。その塩を集めて天然素材「俺の塩」として販売し、「オサレなイタリアンりすとらんて」で「イベリコ豚の焙りソテー」にふりかけて、これまた「オサレなちゃんねぇ」のお口に放り込まれて溜飲をさげちゃう夢を見る程にわたくしの精神は追い込まれておりました。
ズダボロのそんなおっさんを横目にコンスタントに釣果をあげる「親子連れの少年」。魚をあげる度の記念撮影もにこやかです。
あっ!上げた!…すごいねえ………
おっ!またっ!…やるなあ………………
うへぇ!…またまた!!………………………
フグッ!………………ま………た………………
ぐへぇ!………あべしっ!………ううっ………………………。
ちん○んの毛も生え揃ってないくせにいぃぃぃ~!!!
池の真ん中、水を排出するポンプ周りが僕のポイントだあ……
うわあああい!!釣れたっ!釣れたっ!!!
「ポンプ」が釣れたあぁ! 2回も釣れたあぁ~……………ううっ。
な、何だよぉ!見んなよぉ!
そんな目でおっさんを見んなよおぉぉ!!
見えないよぉ!糸も…池さえも見えないよおぉ………
あふれる涙で見えないんだよおぉ…………………………
『管理釣場「KF」の釣果』
パックン……………………16匹
私……………………………3匹
規定により
○『釣りキチ三平』=「パックン」(タイトル防衛成功)
●『釣りキチ五平』=「私」(タイトル挑戦失敗)
「台風一過」の鋭い日差しはわたくしと「釣りキチ三平タイトルホルダー」の『パックン』(「鼻でかいのは男のアレがおっきいってことでしょ」と言うとニマニマして何かを考えた色情フォーティー)を「湯であげた『カニ』」のようにさせました。
「脱皮」も間近です。
つりぼり十番勝負《カナダ編》⑤
完全に渇ききった身体には「マクドナルド・バリューセット」のドリンクのみで潤いを取り戻す事は出来ず、ニッコリ微笑む聖母(マリア)のような「フッキー」の微笑みの幻覚に誘われ、「スポーツ・ベジタブル」をも一気飲みです。
「釣りキチ三平師匠」こと『パックン』(「これこれ!!」と管理釣り場で出会った「釣りドル」の載った雑誌を見せ、「鼻でかいなあ・・・スケベだなあ・・・」と「鼻デカ=スケベ」という独自の持論を展開する40歳)といえば、「カナダ」からチラチラと見える若いピチピチの店員さんを目敏く見つけ、
「五平。俺、あの娘釣りたい。」
と正気の沙汰とは思えない台詞を口にするのでした。
付き合う思考能力も体力も強烈な日差しに奪われたわたくしは、取りあえず三平師匠に水分補給を促しまし
た。
軽々とバリューセットとハンバーガーを平らげた二人は、またまた暑いと分かっている池へと向かうのでした。
すると午前中には動いていなかった水車が回転しています。
水の流れはお魚を呼びます。
すぐさまそちらへ移動を開始しました。
それでも爆釣がすぐに訪れる訳もなく、厳しい戦いが続きます。
わたくしもあまりの釣果の低さに周りをキョロキョロしてしまう、集中力が完全に途切れた行動が出始めてしまいました。
今となってはただの好天気の夏の日ですが数時間前までは台風の到来を待つ悪天候。しかも明け方の地震。朝一から釣りをしていたのはわたくし達と今わたくしの対岸に陣取る「親子連れ」のみでした。
午後になり天候が良くなって釣人が徐々に増え始めましたが、何となくその親子連れには、
「お互い朝からやってますもんね!」
的なシンパシーを感じて優しいまなざしを送っていたものです。
……………………ついさっきまでなっ!
《つづく》
「釣りキチ五平」の優しい気持ちが変化したのは何故かっ!?彼の心に去来したものは…………こうご期待。
(それほどのもんか?)
つりぼり十番勝負《カナダ編》④
雨が…………あがりました。
きっと嵐の前の静けさなのでしょう。
しかしながらカッパを着続けるには少し暑く感じました。
一瞬といえども涼みたいとカッパを脱いで、いざ嵐の前の釣りと行こうかと………。
《五分後》
おっと!晴れ間が広がってきました。
きっと嵐に雲をとられ一瞬の晴れが辺りに広がったのでしょうか?
この後台風は猛威を振るうのでしょ…………。
《さらに五分後》
ドPカンとも言うべき、真夏の灼熱の太陽がサンサンと降り注いでまいりました。
きっと台風は急激な変化を伴ってこの地を襲うので…………
《そのさらに五分後》
暑い。
死ぬ程暑い。
空は雲ひとつない快晴………
きっと嵐はこの後…………
《またまた五分後》
「暑いっ!台風一過じゃね!?」
嗚呼……。
「釣りキチ三平師匠」こと『パックン』(新しい携帯を居酒屋で自慢していたにもかかわらず、忘れて帰りかかり、店員のお姉さんに追っかけられるジャスト40)が核心をついてしまいました。
台風の存在など嘘の様な快晴………。
予報なら今は最接近のはずなのに………。
急激に上がる気温。サンサンと池に降り注ぐ太陽光。
今までわたくしのニュータックルに感じていた刺激はパッタリと止みました。
しかも釣れてない。
ええ。一匹さえ。
タダ流れの汗が口に入り、「日焼け止め」の味が口一杯に広がったのを期に、池を変えると宣言し、隣りの池へと移りました。
三平師匠も後に続きます。
そして気付いた事がありました。
この管理釣り場……日陰が全くない。
ええ。直射日光バッシンバッシンです。解けて消えて無くなりそうです。
そのうえ意識が遠のいて何でこんなとこで竿をわたくしは降り続けているのかさえも忘れかけた頃、三平師匠が横にきました。
「五平くん。ぼかあ、何だかフラフラするんだにゃ。」
キャラクターの設定も何だか良く判らない程、三平師匠がただならないご様子です。
このまま釣り続けたなら、池に飛び込んで泳ぎかねません。
そう判断し、一旦昼食も兼ねて休憩する事にしました。
そしてわたくし達は「マクドナルド」のドライブスルーに向い、手渡されたドリンクに有り得ない勢いでむしゃぶりつき、マックのお姉さんの引きつったスマイル(0円)とバリューセットを購入したのでした。
《つづく》
