スッパインダー
三、「束縛」
彼女は今までの微動だにしなかったのが嘘のように俊敏かつ激しい動きを持って身体の後ろ側、妖しく突起した部分を彼に向けた。
その突起を目の当たりにし、エロチシズムに酔う時間はあまりにも短かった。
突起を見つめた刹那、彼の身体は彼女の放出する細くて強い糸でがんじがらめにされ、今度はこちらが「微動だにしない」形になってしまっていた。妖しく隆起するその突起の正体………「出糸突起」だった。
彼は束縛された今になって、確信した。
「彼女は自分を『獲物』だと思っている」と。
しかし時既に遅しである。全身を覆った糸は彼の身体を素晴らしい粘着性で張付きその自由を奪っていた。糸の隙間から、彼女の8つの目と目が合った気がした。
美しく光っていた彼女の8つの目は今も輝きは失っていなかったが、その輝きは確実にご馳走を目の前にしたそれであった。
身体の自由を奪われた彼であったが、その思考能力はまだ止められてはいない。溢れる涙を拭う事も出来ないまま彼は有一の自由である思考の世界を繰り広げるのだった。
きっとこの後彼女は自分の身体に消化液を注入し、全ての体液から何からを吸い尽すであろう。そして自分はミイラの様になって果てる。
もしかしたらその「抜け殻」も細かく噛み砕かれて彼女に取り込まれていくかもしれない。
装填された「熱い息吹」は目指した場所には届かず、彼女に卵を産ませる夢も叶わなかった。
しかしながら吸い尽される自分の中身と共に彼女の口からその体内へと取り込まれたのは事実………。
自分は彼女に「取り込まれた」のだ………。
と独りごちて皮肉な微笑みを顔に刻んだ刹那、彼の身体に彼女の牙が食い込んみ彼の意識は途絶えた。
《終り》
「蜘蛛のオス」には生まれ変わりたくないって話だったっけか?(滝汗)
スパイダース
緊張はピークに達していた。
これから彼女に逢う。
命がけのアタックである。
彼女の棲む巣に行き、彼女にこの触肢に装填した「熱い息吹」を渡す事を分かってもらわなくてはならない。そして寄添って触肢を彼女の中に………。
激しく打つ鼓動を感じる。大人の男の証、スポイトの様な形に成長した触肢も熱く大きく脈を打って感じられた。
彼女の棲む巣の端に着いた。
彼女はその大きな身体を微動だにせずに巣の真ん中にたたずんでいた。
彼はすぐにでも飛んで行きたい衝動を押さえ、礼儀正しく巣の端をノックした。
電気の様な緊張の波が全身を貫く。しかし彼女は動かない。彼はさらに巣の端の糸を先程より少々強い力で弾いた。
少しだが彼女が動いた気がした。
彼は緊張しつつもその巣の端で自分をアピールする様に踊ってみせた。彼女が微笑んでくれるように。
しかし彼女に動く気配はない。
彼は恐らく彼女は自分の存在に気付き待っているのだと楽観的に判断した。何故なら自分と気付いていないのなら他の反応と行動に彼女はでると考えたのだ。
まんざらでもないなと彼は溜飲を下げるのだった。
装填した触肢に「迸った熱い息吹」の重みを感じつつ、彼は巣の糸を伝い彼女へと一歩一歩、いや八歩八歩近付いて行くのだった。
近付いて来る彼女の巨大な身体。綺麗だった。彼は感動を覚えつつ、目的の場所、装填された「熱い息吹」の最終到達点である彼女の母なる「生殖孔」を探し始めた…………その瞬間だった。
《つづく》
えぇ!?まだ《つづく》の!?と思っているのはあなただけじゃない(大汗)。
スパイダー
よ、横浜に巨大な蜘蛛が出現しましたぁっ!!
………はあ・・・・・・C= (-。- )
あっ。
ちなみにこの人「斉藤由貴」さん。いや、マジで。
ところで皆さん「蜘蛛のオス」ってかなり哀しい生き物だって知ってますか?
あまりの切なさに流れる涙が止まりませんから、ハンケチなどご用意頂いた方がよろしいかと。
常々、「人間辞めて野に帰ろう」かと思案するこのわたくし。
カマキリはエッチの後喰われるから嫌だとか、(自然界では結構な確率でオスは逃げるらしいけど、何だか行為の後そそくさと帰るのはジェントルマンの僕には合わないよね、マドモアゼル。)
鮭なんかは雌との触れ合いが無いから死ぬまでチェリーで悲しいなど、(卵にかけるだけって…醤油じゃないんだから!・・・ねえ?セニョリータ。)どの動物として生きて行くかを日々真剣に考えているのです(通院です)。
しかしながらこれ程まで切なくて哀しい生き物をわたくしは知りません。
皆様に分かりやすいように「小説・ある成年蜘蛛の一日」としてご案内致しましょう。
『ある成年蜘蛛の恋』
「一、準備」
彼は朝から緊張していた。
何故なら今日は2軒先の巣に棲む彼女へアタックするからだ。
あの大きな身体。輝く8つの目。長く美しい8本の脚線。彼は一目で恋に落ちたのだった。
彼は首尾よく事が進んで彼女が産卵する光景を思い浮かべた。
多くの卵はやがて孵化し、そして多くの「蜘蛛の子が散って」は囲まれ、また散っては囲まれる。
彼は妄想に酔いしれほくそ笑む。
しかしそれまでにはやらなければならない事、乗り越えなくてはいけない壁がある。
彼は気を引き締め直すのだった。
彼は先ず成長しきった自分の触肢を見つめた。「成人君子」いや「成虫君子」いや、『成蜘蛛君子』としての証であるスポイトの様な形になった。彼はその造型に満足し、そして欲情した。
彼女へのアタックの機は熟した。
彼女にこの思いと欲情をぶつけようと彼は決起した。
彼はおもむろに糸を放出する。そしてその糸で器用に袋を作り出した。そしてその袋に「迸る熱い息吹」を己の身体から放出した。快感が頭へと突抜ける。しかしその快楽に浸っている暇は無い。この「熱いたぎり」を彼女に届けなくてはならないのだ。彼はその「欲望の固まり」を成長した大人の証、スポイトの様な触肢に装填した。
そして、彼は家を出た。
《つづく》
え!?…《つづく》の!?と思ったのはわたくしも一緒(汗)。



