ノルサランヘ~君を愛してる~

第35夜【光輝な…】


あれから二人は、お互いのことを話す。そして、彼から"今の"名前を聞いた彼女は、思わず笑った。理由を言うと…

「え?…キャット(猫)とベアー(熊)…?(キョトン)・・・・・あはは…ジジイに会わねぇなって思ってたら、そんなとこにパンダ(熊猫)が居たさ(苦笑)」

『居ないんだぁ、ブックマン』
パンダメイクと呟く。
「あぁ。何でだか知んないけど、居ないさぁ」
そんな話をしていると…
「結城ちゃぁ~ん!まだかしらぁ?」
家の中から母親が呼んだ。
『あっ!ごめん!!すぐ行くよっ(汗)・・・・一先ず中に入ろ。母さんの手伝いをしてたんだ』
そんなこんなで、野菜を手に中へ。母親に事情を話、ラビットソンも仕事を手伝った。

キィ…

手伝いが終わってから、彼女の自室で話をすることに。部屋に入ると…
『あれ?机の上にあった砂時計が消えてる…』

「砂時計さ?…どんなヤツだった…?」

『どんなって…(汗)』
急いでノートを取り出し、だいたいの形を描いて見せる。芸術家の娘なだけあって、正確だ。描いたものをラビットソンに見せると…
「それって…異の砂時計だと思うさぁ…きっと、俺らを導いてくれたんさ」

『そう…なのかもしれないね…』
あれが、いつからあったのか知らないんだもんね…気づいたらあった…あることが当たり前みたいに
「俺的には、あの砂時計が全部の現況だと思うんだ。俺らが、違う自分の夢を見てたのも、ソニョ・ハルリュが別の世界に行けたのもさ」

『平行世界をねじ曲げて、繋げちゃった…みたいな力だったってこと?…でも、夢の中のラビ達は、歴史のコンパスみたいだって』

「ん~、時間軸を感知するって方があってるかもさぁ。どこの世界でも、歴史を揺るがす大事件がわかって、時には繋げることもできるんさ」

『なんか、すごいねっ。その砂時計。…でも、そのお陰で私達は逢えたんだよね。…けどさ、ソニョはどうなったのかな?』

「ソニョ…かぁ…どうしてるんだろな。俺さ、見た夢をメモして気づいたんだけど、ソニョが帰った後、誰も彼女のことを覚えてなかったんさ。夢の中の俺でさえ…夢から覚めると、俺自身に戻れるから、思い出せるんだけどさぁ」

『それって・・・・あっ!そういえば、ソニョが、自分に関する記憶が消えるって言ってたっ。もしかすると、彼女も漫画の中に入ったこと、忘れちゃうのかもしれない』

「ん~、そうかもしれないさぁ。…でも、それならそれで、その方がいいよな。…覚えてたら、辛くなるだけさっ」

『そうだね・・・・ねぇ、あの爆風とか、硝子の割れる音って何だったかわかる?』

「それはたぶん。"ラビ"のところで異の砂時計が壊れた瞬間さぁ」

『なるほど…でも、そんなこと、よくわかったね…聞いといてなんだけど(汗)』

「関連性は、聞くまでわからなかったさぁ。初めはただ、壊れた衝撃だと思ってたからな。お前から話を聞いて、わかったんさ」

『私も、もっと早くからメモしてればよかった…そしたら、もっと詳しくわかったかも知れないのに…』

「まぁとりあえず…出逢えたことに感謝さ…(ニコ)」

『そうだね(微笑)』
彼女とラビットソンは、日が暮れるまで語り合った。ちなみにラビットソンは、彼女の家にお泊まりすることに。

キィ…

その夜、"ある物"を自室の机の近くで見つけた。砂時計が置いてあったところの下。

『これは?』
藍色の玉?

それは、藍色の玉のついた鍵だった。おもむろに、部屋の鍵穴へさして、回してみる。すると…

カチャ…

部屋の鍵でもないのに、鍵が開いた。恐る恐るドアを開け、先を覗き込む。そこは今、彼女が居る自室と同じだった。扉の先も"彼女"の部屋。
『どうなってるの…』
もうひとつの部屋に足を踏み入れる彼女。そこには…

…っ!?(汗)・・・・わ、私!?(びっくり)

瓜二つの彼女が、ベッドで寝ていた。ふと、彼女は気づく…一筋の涙と藍色のリボンがあることに…。

彼女が…"ソニョ"なんだ…記憶は消えても、体は覚えてる。忘れたくないことなら、なおのこと。それから、これは・・・・

鍵の使い方が脳裏に浮かぶ…まるで夢に見た"対アクマ武器"のように…。不意に、本棚に目が行った。

あぁ…棚のここ一段は、彼女の好きな漫画だったんだ…私は無意識に、何も置かないようにしてたんだね

眠りについている彼女に微笑み、近づく。
『今度は、あなたが幸せになってね(にこり)』
そっと鍵を握らせて、その部屋を後にした。

キィ…

あくる日、ラビットソンに連れられて、とある外国まで来た彼女。友達を紹介された。その友達が…

「結城さん、本当にラビでいんですか?…彼、かなり惚れっぽいですよ?(笑顔が可愛いなぁ…この子…///)」

「アレイっ、おまっ!なに言ってるさぁ((汗))」

「本当のことじゃないですか」
シレッとした顔で言うアレイに、彼女は…
『アレイくん。そんなこと"はじめ"からわかってるよ。私はね、そういうとこも好きになったの…全部好きだから…欠点も好きなのよ(微笑)』
ラビットソンは、照れたように苦笑いを浮かべた。
「素敵な考えである」

「結城さん…あなたは、ラビにはもったいない方ですね…///(彼女の…哀しむ顔は見たくないな…)」

「フンッ、ホントだなっ。てめぇには、もったいないぜ(俺が欲しいくらいだ)」

「なんだよぉ~、もったいないゆうな!てか、クロちゃんは、エリーデと知り合ったから余裕さぁ?(ムス)」

「そ、それとは関係ないである!!(照///)」

『エリーデ?…エリアーデ?(ボソッ)…クロウさんは彼女が出来たんですか?』

「はい!であるっ(///汗)」

「綺麗な方ですよね…ラビがストライクするくらい…(ニコ)」

「お前…わざと酷いこと言ってるだろ?…そんなに俺に彼女が出来たのが嫌なんさ?自分には居ないから(汗)」

「そういう訳ではありません。ただ、あなたには彼女がもったいなさ過ぎると思いまして…今の内に、彼女に思い止まってもらおうかと…(僕、もしかして…一目惚れしたのかな?…友達の彼女なのに(汗))」

「確かに、思い止まった方が、コイツの為かもな(フッ)」

「もぉ~、やめるさぁ、二人共(ムス)」

「まぁまぁ…(汗)」

「結城も笑いすぎさっ」
四人の間に挟まれながら、彼女はクスクスと笑っていたのだった。

キィ…

こちらは打って代わり、黒の教団。誰の部屋だかわからない、その場所に、"ラビ"は居た。そこで探していたのは、記憶に、おぼろ気に浮かぶ、宝玉にも似たインディゴの玉。

「これを…俺はどうする気さ…?どうしたらいい?」
それを拾い上げ、大事そうに運んだ。しかし、次の瞬間、足元に転がっていた物に足を取られ、転んでしまう。インディゴの玉は、床に叩きつけられ、粉々に割れてしまった。
「やべっ、やっちまったさ(汗)・・・・っ!・・・(微笑)…結果オーライさ(笑)」
サラサラと破片が流れて、輝くのを見たラビは、そう微笑む。
「見つけたら、割ってくれって、言われたんだったさ…結城に…」
そう…記憶を取り戻したのだ…玉が割れたことで。割れた玉の破片は、ラビの知らぬ間に、部屋を抜け出ていた。そして、次の瞬間…
『ラビ…また逢えたね…(微笑)』
部屋の扉が開き、そこに"彼女"がたっていた…光輝な異空の往来者が…。
「結城(にこり)」


微笑む彼女に、笑い返すラビだった。割れた対アクマ武器は、どうなったのか?それは彼女が知っているのでした。


第35夜 END

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第34夜【ラビットソン】


とある外国の学校。そこに、"彼"は居た。

「おい、ラビットソン!…これから授業じゃなかったか?…俺と同じだよな(微笑)」

「ん?…ラビって呼べって言ってるだろぉ?…その方が、しっくりくるさぁ♪つーか俺、帰るわ。そんで、しばらく休むさ(笑)」

「あぁ?…また、本の執筆か?…まぁ、どうでもいいけど、単位足んなくても知らねぇぞ」

「はは…(笑)お前みたいにサボり魔じゃねぇから、余裕なんだよぉ~♪…んじゃ、おいらは行くさぁ(にっ)」

「なっ!?…ラビっ、てめぇ!!!!…二度と帰ってくんな!このっ、ウサギ野郎!!(怒)」

「バイバァイさ♪(にんまり)」
俺の名前は、ラビットソン・キャトベア。好きなことは睡眠…趣味は、読書と…執筆だ。
俺は昔から、変わった夢ばかりを見てきた。港町に立ち寄る旅人、不思議な組織の一員、槍使いを取材する者、韓国語を習う生徒、病院で語りをする博学者、運動の得意な学生、歴史本好きな学生。あまりにも、多種多様な為、視たことをノートに書き出した。物心つく頃から書き貯めた為、複数のストーリーが完成することに気づく。そして、それを別のノートにまとめた。それを友人が見て、今ではそこそこに売れている。そう、ちょっとした作家だ。
「ユダも、似てる奴が居るんだよなぁ。アイツは、めったに話しかけて来ないさ(苦笑)」
さっきの奴は、ユダ・カンウという。彼が言っているのは、夢の中のことだ。昔から、彼の周りに現れる奴らは、ほとんどが、夢で見たことがある奴ばかり。旅をしていたり、多くの人に会うことをしていたりと、たくさんの顔を知っていた。記憶力がいいせいか、たまに、感覚が可笑しくなる…現実で会ったことがあったか?と…。幼い頃は、初対面なのに、久しぶりと言ってしまうことがあり、不思議がられた。今では、整理が出来てきたので問題ないが。
彼が、考え事をしながら玄関ホールを歩いていると…
「あっ、ラビ!…早退ですかぁ?」

「具合悪いであるか?」

「よう、アレイとクロちゃん♪具合は悪くねぇけど、帰るとこさぁ~。ちょっと、旅にな(にっ)」

「悪くないならよかったである…しかし…その、ちゃんはやめてほしいである(照)」
クロウ・チャンが、長身に似合わない照れた顔で、モジモジしている。クロウは、他の人と違う容姿にコンプレックスがあり、それ故に他者から浮いていた。それを助けたのが、彼とアレイである。
「えぇ~、いいじゃん♪」
呼び慣れてるし(笑)

そう彼が笑っていると、彼やクロウよりも小柄なアレイ・ウカーが、紳士的な態度で聞いてくる。
「…というか、ラビ。旅って、どういうことですか?」

「ん?…まんまの意味さ」

「例の…"彼女"を探しに行くんですか?…あなたの話に必ず出てくる彼女を」

「まぁな(ニヤ)」

「居場所がわかったのであるか?」

「あぁ…やっと見つけたんだ…」
夢の中で彼女が、自分のことを話しているところを
「だから、会いに行くさ。たぶん、彼女も待ってる…俺が探し当ててくれるのを…」

「そうですか…わかりました。頑張ってください…僕らはここで、応援していますよ。無事に出逢えることを(にこり)」

「はいである(笑)」

「ありがとうさぁ」

「その代わり、その彼女さんに会わせてくださいよぉ。ラビが、それほどにまで惚れ込んだ子が、どんな子なのか、興味があります(ニコ)」

「アレイ…お前…(汗)」
そういうエセ紳士なとこも似てるさぁ(苦笑)

こうして、彼は学校を休み、彼女を探す旅に出た。
「行き先は、日本さ!」
実は、見る夢で1番、多く見る種類があった。それは不思議な組織の一員の彼で、組織の名前は【黒の教団】である。この夢は、話の展開からして、三、四個あるみたいだ。"彼女"と出会う瞬間が違うのだ…彼女が居ない話もある…。その夢の中で、一つだけ変なモノがあった。彼女が、自分は異世界から来て、この世界のことは、いろいろ知っていると言う。そして…夢の中の彼の為に、未来を変えたいと願っていた…。そんなこととは知らず、健気に頑張る彼女を、愛した。彼の立場の問題なのか、この話の彼は、他の夢よりも遥かに、彼女のことを愛していた…哀しいほどに…。二人の愛を誓いあった後、すぐに、彼女との別れがやってきた。
「なんで、あれだけは、永遠の別れなんさ?」
理由は、わからなかった。でも、おおよその答えは出ている。これから会いに行く彼女は、"あの時"の彼女ではない…彼と同じように…。パラレルワールドという平行世界で、ここの彼と彼女は、他の世界の彼らを視ているのだ。

そう俺らはきっと、別々の場所で産まれ、それぞれ普通の日々を送っている。だけど、それぞれに夢を見ているんだ。そして、それに気づき、歩き続ければ、彼女に出逢える場所に行ける。そう思いながら、俺は、夢のことを書き続けた。地図がない宝探しのように。
「またねの言葉が、耳を離れない…会いたい…お前に逢いたいさっ」
俺はきっと、恋した女の数は人一倍だ。だけど、愛した女は、お前だけさ。不滅の誓いを胸に秘めて、生涯、お前を守り抜きたいさぁ…どの世に産まれても…。


日本へとおり立った彼は、彼女が居るとされる山に囲まれた、自然豊かな町に来ていた。

「ここに…彼女がいるんさぁ…」
どうして、居る場所がわかったのか?それは、彼女の父親のやっていた仕事のお陰だった。
羽黒 翼(タスク)は、芸術家でもあり、作家だった。どちらも、かなり名が通っていて有名。雑誌にも取り上げられたこともあった。他にも、自分のホームページを持っていたりと、幅広く、人との関わりを持つ。その為か、自宅の住所を公開していた。彼は、それを見つけたのだ。


彼は、彼女の家に向かう。とある畑の横を、道なりに歩いていると…

「よう、兄ちゃん。こんな田舎に、何しに来たんだい?(笑)」
畑にいたおじさんが、声をかけた。見慣れない若者が居るのが珍しいから。
「ん?・・・・運命の相手に逢いに来たんさぁ(にっ)」
あれ?どっかのパブのマスターに似てんなぁ~
「あぁ?なんだそれ?(キョトン)」
不思議そうに見るおじさんに、笑顔で手を振って、一本道を歩いて行った。
「んん?…確か…この道の先にあんのは、結城ちゃんとこの家だけだがなぁ」
首をかしげながら、"築木(きずき)"は見送った。


道を進むと、野菜畑のある家が見えてきた。その畑に…彼女が…
「…やっと見つけたさ…」
俺の大切な場所

そう、ずっと探していた彼女が、そこに居た。夢ではなく、現実に。彼は迷わず、声をかけた。
「アニョハセヨ(こんにちは)。ソニョ・ハルリュ…あぁ…羽黒 結城(にっ)…チョカ(俺が)アルダ(わかる)?」
彼の言葉に、顔をあげたのは、間違いなく、夢に見た愛する人。穏やかな風が、二人の間をすり抜けた。知ってる訳もないのに、遠い昔に愛し合ったような、記憶があるような出逢い。彼は、懐かしさの中で微笑みながら思った。

俺は、お前に出逢う為に、生きてきたんさ。この抱き締めたぬくもりが…答えさ…


"再会"の喜びで、抱き合う二人だった。彼が語る話とは何か?全てを知っているのは、異の砂時計なのでした。


第34夜 END

ノルサランヘ~君を愛してる~

第33夜【夢の導き】


某所、部屋で目覚める少女。春の昼下がりだった。

『あ…れ…?私…寝ちゃってた…?(汗)』
ベッドの上に座った状態で、目を開けた彼女。うたた寝をしていたようだ。お気に入りの藍色のワンピースが、風に揺れる。

また…何かの夢を見ていた気がする…とても、大切な

そんなことを考えて、ボーッと窓の外を眺めていると…
「結城ちゃぁ~ん!…ちょっと手伝ってくれるかしらぁ?」
一階から母親が呼んだ。
『はーい!今、行くぅ!!』
そう返事をしながら、立ち上がる。
『あれ?(キョトン)』
あの本棚の空白って何だっけ?

部屋にある本棚には、一段だけ、何も置かれていない箇所があった。どの段も、半分は本が置いてあるのに。

まっいっか。早く行かないと、怒られちゃう(汗)

そう思いドアに向かうが…
『…砂時計…?』
自分の机の上に、変わった砂時計が置かれているのに気づいた。こんな物あったっけ?と思い、首をかしげていると…

キィ…

音をたてて、硝子の部分が回転し、また砂を落とし始める。たまたま、机の時計に目が行った。ちょうど、午後3時を指している。そこで…

あっ!…一時間ごとに回転する、変わった砂時計だったっけか…忘れてたよぉ~

そう何もなかったかのように、部屋を出て行く彼女だった。
彼女の住んでいる場所は、山に囲まれた自然豊かな町。昔、重い病気になったことを踏まえて、彼女の為に、越してきた。父親の仕事は、どこに居ても出来ることだったので問題はなかったのだ。けれど、父親が亡くなり、母親は今の仕事を始めた。


一階に行くと、母親亜維羅(アイラ)が受話器を顔と肩で挟みながら、メモを必死に書いている。彼女の家は、地域密着型の弁当屋さんで、客の好みに合わせたオーダーを基準とした、オリジナルを売りにしていた。母親は現在、注文を受け付けている最中。それを見て、彼女は先に準備を始めた。

えっと…お得意様の築木(きずき)さんと沙羅(さら)ちゃんのお弁当箱はと…

いつものことなので、母親に言われなくても、ある場所は知っている。そう明日の為の弁当作りだ。

築木さんは酒瓶の絵で、沙羅ちゃんはクマのぬいぐるみ♪

そう、お得意様ともなると、決まった弁当箱になる。それぞれが好きな柄にだ。さて、他にも弁当箱を出していると…

カランカラン…

『あっ、お頭!』
たまに来る、若いお頭がやって来た。
「今からでも大丈夫か?」

『はい!全然、大丈夫ですよ♪…母はご覧の通り、電話中なので、私が承ります(にこり)』

「んじゃ、明日の分、よろしく頼むぜ。前とおんなじで良いからよぉ」

『承知しました♪では、明日の朝、お待ちしております(にっ)』
サインをすると、お頭は帰って行った。

お頭の箱はバギーだよね♪…でも、そろそろお頭のは終わりかなぁ~…最近、好い人が出来たって聞いたから(笑)…確か、メイさん。…愛妻弁当も間近…見てみたいかも(ニヤ)
「結城ちゃん、なにニヤけてるの?…お頭さんのこと、からかう気じゃないでしょうねぇ…」

『亜維羅母さんっ(汗)…電話、終わってたの?』

「まったく…しょうがない娘だこと…(苦笑)」

『えへへ…(照)』
母親と他愛ない話をしながら、時間が過ぎていった。


実は、この彼女は、幼い頃から不思議な夢を見ていた。例えば、港町のパブで働く子、不思議な組織の一員、槍の達人、韓国語の先生、病弱な子、裁縫の得意な学生、アニメ好きな学生などに、自分がなっている。すべて、年代と国、年齢までもが異なっていたが、父を病気で亡くし、母子家庭で、同じだった。しかも、すべてに共通して、"彼"が出てくる。中には、挨拶程度しかしないモノもあるが、ほとんどが親しい仲になった。そして、彼女は彼に、恋をする。恋が実り、結婚までした夢もあった。…悲しい別れをするモノも…。自分が寝ると、夢の中の彼女が目覚め、物語を紡ぐ。そして、夢の中の自分が寝ると、彼女が目覚めた。まるで…"異空の往来"をしているかのようで…。
見る夢で、一番多く見るモノがあった。それは、不思議な組織の一員である彼女。組織の名前は【黒の教団】…不思議なことに、この夢は三種類も見ている…。その中の一つだけ、出てくる人達を"本の中のキャラ"と言い、何でも知っているのがあった。しかし、夢から覚めると、そのキャラのことは、何一つ、わからなくなる。本当に不思議で、見るのが一番楽しみだった。なぜなら、彼も組織の一員で、初めから彼が好きで、彼との何気ない日々が幸せだったから。そして、自分のことを理解し、支えてくれる彼を、愛した。他の夢で見るような愛してるではなく、それ以上の愛だと感じた。彼の為に、夢の中の彼女は、未来を変えたいと願っていたのだ…けれど…変えられなかったと泣く。夢から覚めてしまっては、何をどう変えたかったのかなんてわからなかった。だけど…覚めた彼女も、すごく悲しくなり、自然と涙が流れた…。その悲しい瞬間にも、幸せな時はあった…彼が、自分を好きだと、愛してると言ってくれたのだ…。しかし、その夢の結末は、いつも一緒。彼との永遠の別れだった。
『どうして…なんで、この夢だけは、私が、どこかに行ってしまうの…?そして、こんなに胸が張り裂けそうなのは、どうして?(泣)』
夢は、途切れ途切れにしか見れないモノだ。だから、理由を見つけたいのにわからない。そのもどかしさが、夢への執着を加速させていた。最近になってからだが、ノートに夢の内容を、メモするようになったのだ。しかし、未だに解らず終い。


いつもと変わらない数日が過ぎた、ある日。今日も弁当作りの手伝いをしていた。そう、いつもと変わらない日常のはずだったのだが…

「結城ちゃん、野菜がなくなりそうだから、摘んできてくれるかしら」

『はぁい、摘んできます』
母親に頼まれ、彼女は、庭先で育てている野菜を取りに、外に出る…いつものこと…。しかし、野菜を摘んでいると急に、声をかけられた。
「アニョハセヨ(こんにちは)。ソニョ・ハルリュ…あぁ…羽黒 結城(にっ)…チョカ(俺が)アルダ(わかる)?」
声に顔をあげると、夢で見ていた青年とよく似た人が、笑顔で立っていた。彼は、眼帯はつけていない。
『あ…あぁ…う、そ、だよね?なんであなたが…』
彼女は、驚きと困惑の表情で立ち尽くした。それを見た青年は…
「ありゃ、せっかく韓国語で頑張ったんだけどなぁ。…なっ、結城。…チョヌン(俺は)…ノル(君を)…サランヘ(愛してる)(微笑)」
もう、いろんな感情がごった返す彼女。しかし、次の瞬間には、涙を流しながら彼に飛び付いていた。そして…
『…サランヘヨ…!(愛してます)』


二人はしばらく、抱き合っていたのだった。現れた青年は、夢に出てきていた彼と関係が?真実は、次第に明かされるのでした。


第33夜 END