葛城の迷宮 -26ページ目

『ヒューゴの不思議な発明』

ちょっとだけネタバレがあります。
でも、このネタバレを知らないと「どうせ子供向けの3D映画だろ」と思って観ないかも・・・


監督:マーティン・スコセッシ
出演:エイサ・バターフィールド
    クロエ・グレース・モレッツ
    ベン・キングスレー
    サシャ・バロン・コーエン
    クリストファー・リー
    ジュード・ロウ

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1930年代のパリ、オルセー駅。
父(ジュード・ロウ)を火事で失ったヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は、駅の時計台に隠れ住み、自分の存在を周囲に察知されないように駅の時計のネジを巻いて毎日を過ごしていた。

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天敵である鉄道公安官(サシャ・バロン・コーエン)は、駅の構内を徘徊する浮浪児たちを捕まえては孤児院送りにすることに執念を燃やす男。
しかし時計台の場所は駅の壁の裏側にあり、公安官はもちろん駅で働く人たちにも知られていない場所だった。

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独りぼっちになった彼の唯一の友だちは、父が遺した壊れたままの“機械人形”。
博物館で管理の仕事をしていた父が、倉庫の片隅で埃を被っていた彼を持って帰ってきたのだ。
ヒューゴは父が書き残したノートに基づいて、駅のおもちゃ屋から必要な部品を盗んでは、少しずつ修理をしていた。
人形自体はある程度修理できていたが、問題は身体の中心にあるハート型の鍵穴。
機械を動かすために必要なこの鍵をどうしても見つけなければならない。
修理した機械人形が再び動きだすとき、手に持ったペンが父の遺したメッセージを綴り出すはずと、彼は強く信じていた。

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ある日部品調達のため、いつものように隙を見てねずみのおもちゃを盗もうとしたところを、店主の老人に見つかってしまう。
「ポケットの中身を全て出して見せろ!でないと鉄道公安官を呼ぶぞ!」
ヒューゴは渋々ながら、ポケットの中にある部品とノートを店主に差し出した。
ノートの内容を見て、驚いた表情を見せる店主。
家でノートを燃やすと言う店主に、ノートを返してほしいとヒューゴは懇願するものの聞き入れてもらえず、仕方なく家まで付いていく。

店主の家には、イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)という少女が住んでいた。
ヒューゴは、ノートを燃やさないように見張っておいてくれるという彼女と仲良くなる。
イザベルは老人夫婦を、”パパ・ジョルジュ”、”ママ・ジャンヌ”、と呼んで一緒に暮らしていた。
彼女の両親は早くに亡くなっており、名付け親であった店主の老人夫婦が引き取って自分を育ててくれていると言う。

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「パパは良く映画を観に連れて行ってくいれた。
 パパが初めて観た映画は、月に向かってロケットが飛んでいく映画だったんだって。」

映画だけは観てはいけないと釘を刺されていた彼女を、劇場の裏口から忍び込んでこっそりと観に連れて行った。
その帰り、偶然彼女の首に吊り下げられたペンダントを見て驚くヒューゴ。
そこには探し求めていたハート型の鍵が付いていた。
誰にも言わないという約束で、彼はイザベルを駅の中にある秘密の部屋へ連れて来る。
彼は部屋に置いてある機械人形を彼女に見せ、鍵が必要な理由を語る。
早速鍵を差し込んで回してみると、想像通り機械人形は手に持ったペンで少しずつ何かを書き始めた。

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しばらくすると、文字とも記号とも見当がつかないものを書いたまま、止まってしまった機械人形。
「ぼくがバカだった!こんな人形にパパからのメッセージが残してあるなんて!」
絶望するヒューゴに、イザベルは声をかける。
「待って、また動き始めたわ!」

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機械人形が書いていたのは、文字ではなく絵だったのだ。
そして最後に書いたのは、
“Georges Méliès”
というサイン。
「これ、パパ・ジョルジュの名前だわ!」
機械人形が書いたのは、人生を変えてしまうほどのメッセージだった・・・

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決して機械人形が勝手に動きだしたりするSF映画ではない。
ヒューゴという少年が、キテレツ並みに奇想天外な発明をするわけでもない。
父親が遺した機械人形を、コツコツと一人で修理しているだけだ。

ジェームズ・キャメロン監督は、『アバター』を3Dで撮影することでCG作品にリアリティを持たせようとした。
マーティン・スコセッシ監督は、3Dの表現方法をポップアップの絵本に見立て、リヨン駅の構内やパリの街並みを、キラキラと輝く別世界のように見せてくれる。
時計台のガラス越しに見えるエッフェル塔の美しさ!
約80年前のパリの風景が、まるでスチームパンクの世界。


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ヒューゴを演じたエイサ・バターフィールドは、『縞模様のパジャマの少年』で涙を絞り出したナチス将校の息子。
イザベル役のクロエ・グレース・モレッツは、
『キック・アス』『モールス』『500日のサマー』
と、話題作への出演が続く彼女もちょっとお姉さんになった。

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ジョルジュ・メリエスは奇術師出身で、世界で初めて映画にストーリーを持たせた人物。
また彼は、オートマタ(時計じかけの機械人形)のコレクターだったことでも有名。
偏屈なおもちゃ屋の店主が実は映画の可能性を世界中に広めた元監督だったという、児童文学にありがちな話だけど、メリエスのエピソードは大部分が実話らしい。
このインチキ臭い親父にベン・キングスレーという絶妙のキャスティング。
演技どうこうの前に、風貌がクリソツという点で大成功。
『J・エドガー』が作品も演技も良かったのに何だか違和感を感じたのは、レオが似合ってなかったってことを再確認した。

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先日のアカデミー賞授賞式に
独裁者のコスプレで現れ、レッドカーペット上に将軍様の遺灰を撒く
という行為で警備員に連行されたサシャ・バロン・コーエン。
まともな映画で初めて見た彼は、長身でスタイルの良いフレディ・マーキュリーに見える。
相棒のドーベルマン、マキシミリアンとも良いコンビ。

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生きた化石ならぬ、生きた映画史でもあるクリストファー・リーも、イザベル行きつけの本屋の主人役で出演。
特にストーリーに関わる訳ではないけれど、やっぱりこんな作品に彼が出演してくれていると何となく嬉しい。

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子供を連れて話題の3D映画を観に行っただけなら、この作品の真価はわからない。
予告を観た限りでは、映画マニアにはこの作品の肝心なテーマが伝わらないので敬遠するかも。
しかし映画史に興味のある人には堪らない展開が、この作品には待ち受けている。
シネフィルであるスコセッシが長年抱き続けていたクラシック映画への敬意が、オマージュも含めて作品中に溢れている。

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まさか、ジョルジュ・メリエスの作品を劇場のスクリーンで観ることができるとは!
感動のあまり、
3Dメガネが涙で曇って見えない・・・
小学生の孫娘を連れて来ていた、隣の席のおじさんも号泣。

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とんでもないストーリーの展開があるわけでも、想像を超えるような大冒険があるわけでもないけれど、見逃してはならない必見の作品。
ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』が公開されてから、今年で110年。
その物語を3Dで鑑賞することで、最も古い映画作品と最も新しい技術の融合というスコセッシの想いを感じることができる。
映画マニアを自称する人なら、
きっと、ため息の出るような至福の時間を過ごせるはず!