葛城の迷宮 -20ページ目

『アーティスト』

監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン
    ベレニス・ベジョ
    ジェームズ・クロムウェル
    ジョン・グッドマン
    ペネロープ・アン・ミラー
    and アギー



1927年アメリカ、ハリウッド。
映画スターのジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、最新作のプレミア上映に出席していた。
彼が記者たちからインタビューを受けていた時、ひとりの女性ファンがサイン帳を落としてしまう。
他のファンたちに押し出されてしまった彼女を、ヴァレンティンは記者たちの前で紳士的に助ける。
有頂天になった彼女は、カメラの前でヴァレンティンと並んで楽しげにポーズを取り、
勢い余って彼の頬にキスしてしまう。

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”Who's That Girl?”

翌日の新聞の見出しは、この話題一色だった。
彼女の名前は、ペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)。
女優志願だった彼女は、このチャンスを利用してキノグラフ社の新作映画のオーディションを受ける。
エキストラとしての出番までの間、ダンスの練習をしていた彼女は、スタジオで偶然ヴァレンティンに出会う。
ペピーに女優として売れるようにアドバイスを教える彼。
ヴァレンティンへの想いを胸に秘めながらも、女優として努力を重ねる彼女。
その結果、ダンサー、メイド、看護婦と少しずつクレジットの順が上がって行く。

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ある日、キノグラフ社の試写室で音声も一緒に撮影された”トーキー”をヴァレンティンは目にする。
やがてトーキーの時代が来ると言うスタジオの上層部に対し、彼はただの流行りだと一蹴する。

自分のファンは声を求めていないと言い張るヴァレンティン。
しかし世の中の主流は次第にトーキーへと流れていく。

しばらくしてキノグラフ社は、今後トーキーしか製作しないことを決定する。
それを知った彼はスタジオから独立し、自身で映画をプロデュースをする意志を固める。

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製作・監督・主演をひとりでこなしたヴァレンティン。
やっとの思いで撮り上げた新作サイレント作品がひっそりと公開されたその日、
向かい側の劇場ではペピー主演の新作トーキー作品に人々が長蛇の列を作っていた・・・

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まさか”新作サイレント映画”なんてモノが観れるとは思わなかった!
スクリーンサイズは、”1:1.33”
クラシック映画を観る人以外は、3D映画を初めて観た時と同じ衝撃を受けるんじゃないだろうか。

マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』
ウッディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』
そして今作。
昨年の話題になった映画に共通するキーワードは、1920年代とフランス

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あえて古さを感じさせる演出と、現代的なテンポの良い編集、セリフの変わりに感情や状況を説明してくれるスコアなど、計算し尽くした上で絶妙に構成されている
コーエン兄弟監督作品の『バーバー』と同じように、一度カラーで撮影してからモノクロに変換するという手間を掛けている。
作品が当たらなかったらカラーで再上映するつもりだったらしいけど、
カラーのサイレントってどうなん!?

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ヴァレンティン役のジャン・デュジャルダンが、スターオーラ輝きまくりの全盛期から、落ちぶれて自信喪失し、自堕落な生活を送るまでを見事に演じている。
どこかで見た気がする往年の大スターたちの特徴を、全て合わせたようなキャラクター。
今のハリウッド俳優には出せない優雅な振舞いは、フランス人俳優ならでは。


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ペピー役のベレニス・ベジョは、とびっきり魅力的な女優。
愛嬌はいいけど地味なエキストラから、瞬く間にスター女優へと登り詰める様を演じるのは、さぞかし難しいと思う。
しかし彼女の笑顔には、そんなことをいとも簡単にやってのけそうな説得力がある。
力強さと気品を兼ね備えた風格ある彼女の存在感は、『スタア誕生』を下敷きにしているストーリーにピタリと合っている。


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この作品から古臭さを取り除いてくれるのが、このアギー君。
展開が詰まってくる時には、アギー君の活躍でスルリと笑いを攫っていく。

ヴァレンティンの運転手を務めるジェームズ・クロムウェルも、さすがの安定感。
少しだけスペース・バンパイアのようになってきた。

お世辞にも上手いとは言えないタップも、よくよく考えてみたら大変な運動量。
フレッド・アステアジーン・ケリーは、ずば抜けた体力の持ち主だったんではなかろうか。



1度きりしか使えない、特別な魔法。
傑作とまではいかないので、2回目以降は雰囲気が好きな人のみになるかも・・・
演出、撮影、それに合わせるスコアまで完璧に計算されているので突き抜けた感じはしない。


ただしサイレント映画の入り口としては最適。
この作品を観てサイレント映画に興味を持った人たちには、巨匠たちが遺してくれた宝物のような作品がたくさんある。

ジョルジュ・メリエス
フリッツ・ラング
セルゲイ・エンゼイシュテイン
D・W・グリフィス
バスター・キートン
チャーリー・チャップリン
etc・・・


彼らの他にも珠玉の名作が揃って待っている。

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DVDになってから観るなら、他にもたくさん傑作サイレント映画がある。
しかし劇場でサイレント映画の新作を観ることができるのは、今この作品しかない!!