変身型ダークヒーロー!:全裸監督 | でびノート☆彡

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映画監督/演技講師 小林でび の「演技」に関するブログです。

一気見しちゃいました『全裸監督』全8話。

このドラマのなにが凄いって、「昭和のAV監督・村西とおるの半生」みたいなマニアックな内容のドラマを、一般視聴者に一気見させちゃう、「この続きを今すぐ見たい!」と思わせちゃうとこですよねー。

 

思うにこのドラマは、80年代のAVモンスターである村西とおる監督を「モンスター」として描くのではなく、むしろ「変身ヒーロー」としてこのドラマは描いているんです。

 

だってクライマックスシーンで変身するんですよ・・・山田孝之が、白ブリーフ姿で「ナイスですね!」の村西とおるに(笑)。 で、世の中の理不尽や警察やヤクザを蹴散らしてゆくんです!そんなの最高じゃないですか。

 

 

主人公は山田孝之演じるウダツの上がらないセールスマンの青年・村西。

第1話。まったく契約が取れないセールスマンである彼が、ナンバー1セールスマンの先輩に仕事のイロハを教えてもらうことになるんですが、そのナンバー1セールスマンを演じるのがなんと板尾創路(笑)。オフィスで大声でオフコースの「さよなら」を歌ったり、「カモメのジョナサン」の台詞でしゃべったり・・・超シュール。も~完全に『ごっつ』とかの「怪人」の演技ですよw。

 

このキャスティング、最初はえ~?と思ったんですが・・・今になって思えばこれって「このドラマはダークヒーロー村西とおるが次々と襲いかかってくる悪の怪人たちと戦いを繰り広げる変身ヒーロー物ですよ」という宣言だったんですよね、このキャスティング自体が。

 

そしてこのナンバー1セールスマン怪人・板尾によって、青年村西は「村西とおる」に改造されてしまうんです。

ヤクザの家に連れて行かれ、日本刀で脅されながら英語教材のセールスをするという地獄のような目にあわされた青年村西は、おしっこを漏らしてスーツのズボンを脱いでブリーフ姿になったことで・・・その究極のピンチの中で覚醒・・・変身してしまうんです「村西とおる」に! そしてあの村西トークでそのヤクザをまるめこんで、なんと英語教材を売りつけてしまうと!

 

 

そう、仮面ライダーがベルトに風圧を受けることで変身するみたいに、青年村西はブリーフ姿になることによって「村西とおる」に変身するんですよ。 あはは(笑)。

 

面白いのは彼のトーク能力が徐々に進化して、我々のよく知るおなじみの「ナイスですねー!」状態に近づいてゆく過程がけっこう丁寧に描かれてるんですよw。 でそのトークの魅力によってさまざまな人々が英語教材をどんどん買わされてゆく。その描写がなぜかアガるんですよねー。

「お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません」などの名セリフも挟みながら、1セールス終えるごとにあの伝説の村西とおるの口調に近づいてゆく・・・いや~あの「村西とおるの誕生」をこんな切り口で描くとは・・・w。

 

 

で結局「セールス改造人間」と化した村西とおるはその覚醒したトーク能力によって、英語教材セールスの成績でナンバー1セールスマンになり、怪人板尾を倒します。・・・改造人間になってしまったダークヒーロー村西とおるはどこにいくのか。

これが第1話の前半です・・・まだ第1話の前半?濃い!(笑)

 

で放浪の果て、エロ本・ビニール本・裏本の世界に入って頭角を現してゆく村西とおる。そこに立ち塞がるのがポセイドン企画、そして警察です。

ボクには石橋凌さん演じるポセイドン企画の社長は「地獄大使」に、リリー・フランキーさん演じる警視庁警部は「死神博士」に見えました(笑)。 お2人とも悪の組織の幹部っぽい演技してましたねw。

 

 

石橋凌さんってどんなに抑えた演技をしてるつもりの時でも、目がカッ!と歌舞いてるんですよねー。細眉だし、カタギじゃないw。

 

そして警視庁警部役のリリー・フランキーさん

最近『なつぞら』やら『いだてん』やらで毒のない“よいひと”ばかりを演じているので心配してたんですがw、今回はひさびさに悪役らしい悪役でしたね。

『凶悪』の時とかのそうだったんだけど、悪そうに演じないんですよねー。超楽しそうに演じてる(笑)。彼が楽しそうであればあるほど状況はタチの悪いことになっている。

たしかに現実世界で本当にタチの悪いハイエナみたいな人間って、餌あさってるとき本当に楽しそうだもんなあ・・・上機嫌で人をカタにハメてゆくっていう・・・コワ!

 

 

そしてこのドラマいちの怪人と言えば・・・黒木香!でしょう。

いや~森田望智さん、黒木香にしか見えなかったw。

 

彼女も仮面ライダーばりに変身するんです、上品な家庭で育った女子大生・佐原恵美からAV女優・黒木香に!

 

カメラが回り始めるとやはり村西と同じように「黒木香」の仮面が顔に貼りついて、口調が「~でございます☆」に変わって、そのどぎついコメントと行動で群がるマスコミたちをバッタバッタと倒してゆく。

ようするに2号ライダー的な立ち位置ですよね。電波人間タックル的な。

『バットマン・リターンズ』で言えばキャットウーマン的な。

 

 

ただ彼女が村西と違うのは、彼女はもともと女子中学生時代から怪人的だった点ですね。男子たちが見ていたエロ本をものすごい形相で読んでたり、絵画の男性モデルにスカートの中を見せて楽しんだり、いくつかのエピソードで描かれています。

上品で高圧的な母親との関係の中で彼女の中の「怪人性」みたいなものがむくむくと育って行く・・・人物描写的には彼女は悪の卵なんですよね。そのままでは明らかにハチ女的なセクシー系悪の怪人に育ってしまいそうなその時に、彼女は・・・ダークヒーロー村西との運命的な出会いをするんですよねー。

 

黒木と村西・・・異形の者同士の孤独な心が共鳴しあうことで、彼女はダークヒーロー村西のバディ(相棒)として生まれ変わるんです・・・。 何度も言いますが、いや~「黒木香の誕生」をこんな切り口で描くとは・・・ロマンチック過ぎます。

 

そして黒木はマスコミで活躍することによって、ハワイの刑務所に幽閉されていた村西を脱出させます。石橋凌を倒して、晴れて1号2号が揃ったところで完!「シーズン2」に続く!です。

 

 

というわけで、『全裸監督』で村西とおる監督の人生が、変身ヒーロー物の構造で描かれていたこと、ご理解していただけたでしょうか。

それが脚本で仕掛けられたのか、演出の過程で仕掛けられたのか、はたまた俳優の役作りがたまたまそうだったのか・・・それはわかりませんがw。でも「村西とおる」も「黒木香」も2人とも変身の過程で別人の演技に変化しますからねー。

 

彼らを昭和のモンスターとしてではなく、昭和の変身ダークヒーローとして描く!というコンセプト、超楽しめました。

 

 

「青年村西」と「村西とおる」は別人格で、どちらかが本当の彼とかではなく、その集合体こそが彼。

そして「女子大生・佐原恵美」と「黒木香」は別人格で、どちらかが本当の彼女とかではなく、その集合体こそが彼女。

 

つまり変身する(多重人格化する)ことによって彼の人生も彼女の人生も補完され、完成する・・・というこれは現代日本に生きる我々の人生そのものです。

 

現代は多面性の時代です。

我々だって、サラリーマンである自分も、俳優である自分も、父親・母親である自分も、恋するひとりの人間である自分も、アニメやギャンブルが好きな自分も、SNS上の自分も、一人旅してる時の自分も、全部自分・・・そのすべてが必要で、そのいろんな自分の集合体こそが自分じゃないですか。

 

そんな多面的な人物解釈こそが「21世紀型の人物描写」なのではないかと思うのです。

 

小林でび <でびノート☆彡>

 

 

click! 『全裸監督 村西とおる伝』 本橋信宏 (著)

 

 

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