画面から表情がバーンと飛び出してくる俳優さんっていますよね。
それはその俳優が、演技がうまいとか下手だとかと関係なく、どんな演技法で演じているとかとも関係なく、とにかく飛び出してくるんです。そしてそれを見てる時、なぜだか観客の心が解放されるんですよ。
映画館の巨大なスクリーンから飛び出してくる巨大な表情。映画ならではの喜びですよね。
『ちはやふる-上の句-』を見たんです。
かなり遅ればせながら。知人にいいよと薦められて・・・でも正直前半キツかった・・・説明的なキャラ紹介、そのたびにサムいギャグ&おどけた演技・・・で、なんとか最後まで見たんですけど・・・ラストでは泣いてましたw。
…納得いかなかったんで!『ちはやふる-下の句-』も借りてきて見ました。
正直前半うじうじした芝居ばかりでキツかった・・・でラストあたり、ダ―ッて涙を流してました(笑)・・・えーっ!?なんで???なんなのこの映画???怖い!w
で、口惜しいから下の句を繰り返し見てみたんだけど~、毎回泣いてしまって~(笑)
・・・ボクね、ある感情が生まれてバーンと一直線に溢れ出す瞬間、とくに笑顔とか喜びがバーンと溢れ出すのを見ると・・・100%泣いちゃうんですよ。「爆発する表情」に弱いんです。広瀬すず、真剣佑、松岡茉優・・・爆発してたなあ。それが感情が盛り上がってるシーンだけじゃないんですよ。静かなシーンでも表情が静かに画面から飛び出してきてる。
でも切り返しの短いショットでテンポよく感情を爆発させるって、これじつは大変。
だって感情をいちいち準備していたんじゃあ会話のテンポについてゆけないですからね。次のセリフを言うための感情を盛り上げていていちいち変な間ができてしまう・・・内面の演技アルアルですよね。そしてまずその前後の表情は100%編集でカットされますw。
なので、それを避けようと説明的な「うその表情」を作る。そうすればテンポはバッチリ・・・でもそれじゃあ表情が爆発しないんですよ。
では『ちはやふる』の彼女たちはどうやって演じていたんでしょうか?
俳優のタイプで言うと広瀬すずは「感覚の人」、松岡茉優は「計算の人」です。
『ちはやふる-下の句-』でふたりの対決からスタッフロール内のクイーン戦開始のくだりまで、このタイプの違う2人の女優のすばらしい「爆発する表情」合戦になっています。彼女たちの演技の構造を注意深く観察すると・・・。
松岡茉優の演技の基本的なしくみは「観察」→「頭で理解」→「胸で感情わきあがる」→「反応」の4つの工程の繰り返しで演じられています。
そしてその4つの工程すべてにおいて「このキャラだったらこうする」という客観的判断によるキャラクター表現がテクニカルに演じ込まれています。そう、松岡茉優の演技は90年代式のキャラクター演技なんです。しかもその設計がホント見事で、カットごとの設計だけでなくシーン全体を見通した設計もよく練られてるなあ、という感じで緻密に計算されています。
それに対して、広瀬すずの演技の基本的な仕組みは、なんと「観察」→「反応」という2つの工程のみの繰り返しで演じられています。
広瀬すずのキャラクター表現は客観的判断ではなくもっと主観的で、つまりもうその人物になってしまってリアルにその状況の中に放り込まれている状態なので、感情は周囲の状況に合わせて現実の人間と同じ速度で瞬時に燃え上がります。
松岡茉優がキャラクターを頼りに演じ進めているのに対して、広瀬すずはコミュニケーションを頼りに演じ進んでいるのです。
なので松岡茉優はカット頭から意識的にキャラを演じていています。それに対して広瀬すずはもうすでにその人物としてそこに存在しているので、カット頭では能動的にはなにも演じていません。ゼロです。ゼロの目をしています。ゼロの心で目の前で起きていることに生々しく反応しているんです。だからものすごいスピードで感情がゼロからMAXまで一気にあがれるんです。
一方、松岡茉優は目の前で起きていることひとつひとつに対してキャラクターとして理解したりキャラクターとして感情を動かしたり、それらの段階を順々に踏んでいく必要があります。
なので演技の1サイクルの長さが圧倒的に広瀬すずの方が早いんですよね。
コレが如実に出ちゃってるのが試合後半の2人で互角に札を獲りあうくだり。ハイスピード撮影なので必然的に演技できる尺が短くなるんですが、その中で広瀬すずは「札を獲る」→「爆発する表情」までが演じきれているのに、松岡茉優はその尺では「札を獲る」→「理解」→「感情がわき…」あたりで終わってしまって結果映っているのは無表情…「爆発する表情」までたどり着く前でカットされてしまっているんです。おそらく。
この繰り返しで何度も何度も「爆発する表情」を見せている広瀬すずの方がどんどん魅力的に見えてきて・・・結果カルタの勝負には負けたのにもかかわらず、彼女は主役として観客の心をしっかりつかんで試合を終えます。
どうです?怖ろしくないですか? ↑この感じ(笑)
そして試合後の階段前での「いつや?」のやり取り。ここでボクは泣いてしまうんですが(笑)・・・コレがさっきの4工程・2工程のテンポで会話が進んでゆきます。
千早(広瀬すず)は考えるよりも早くクイーン(松岡茉優)の手に飛びついて「あの!楽しかったね!」と話しかけます。クイーンは「は?」意表を突かれながらも反応できません。千早はさらに考えるよりも早く「またカルタしようね!」、クイーンはその千早のあまりの率直さに心を動かされつつ、一瞬目線を下にそらして心の準備をして「つ?」。千早考えるより早く「へ?」。クイーン、千早に目線を合わせ直して千早にむかって爆発的なコミュニケーション「いつや?」。
その意外なクイーンの一言にパニックになる千早…しかし彼女の中の欲望が一気に燃え上がってその瞬間、千早も爆発して「クイーン戦で!」と叫ぶ。その言葉を無言で受け止めるクイーン。。。
いやあ泣けるなあ!(笑)いま書きながらうるうるしてるんですがw。
この手のシーンって2人ともうつむき加減に内向しながら個々に演じられるパターンが多いのに、この映画ではそんなことせず、2つの孤独な魂がお互いコミュニケーションによって救われている過程が演技によって見事に描かれています。なんて清々しい。そしてスタッフロール内のクイーン戦での2人の子供のような笑顔・・・涙腺決壊ですよw。
ああ、今回は『ちはやふる』の演技の感想をサラッと書こうと思っていたのに、構造の事とかなんだかんだと書きたくなって結局長々と書いてしまいましたw。
「爆発する表情」でもって画面から飛び出してくる俳優、もっと見たいですねえ。



















