「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」。
「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」。
「福島近海でのモニタリング数値は、最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ」。
「健康に対する問題はない。今までも、現在も、これからもない」。
東京五輪開催を望んでいる国民が大多数だとしても、首相の発言を聞いて「おいおい、いくら何でも言い過ぎでは?」と思った人は少なくないだろう。
福島の人たちや原発事故のその後に注目している人たちからみれば、明らかな「ウソ」があるのだ。
汚染水に関していえば、現在「打つ手がない」ことは明らかだ。
安倍首相が自信満々に言ったことはこれまで東電が汚染水に関して発表してきた事実とも完全に異なる。
安倍首相が言及した福島第一原発の専用港内の「0.3平方キロメートル」は、確かに堤防や水中カーテンで仕切られている。
様々なルートから外洋に出ようとする汚染水をこうした堤防などがどこまでを「完全にブロック」できているものかあやしいものだが、いろいろな議論があるのでここでは問わないことにする。ちなみに新聞報道などを見る限り、東電も「港湾内と外洋を水が行き来していること」を認めているという。
最近、問題になった地上タンクから漏れた高濃度の汚染水も、もしも流れ出た先がこの「0.3平方キロメートル」ならば、水はひとまず港内にとどまっているように思えるので首相の発言にも多少は根拠があるように聞こえそうだ。
ところが実際には、汚染水が流れ出た先は「0.3平方キロメートルの港内」ではない。
その外の海なのだ。
タンクからの汚染水漏れに関する東電のこれまでの会見によると、地上タンクからの排水路の側面に水の流れた跡があり、そこから高濃度の放射線が観測されていて、そこから水が流れた可能性があることを東電も認めている。
その排水路がつながっている先は「0.3平方キロメートルの港内」ではない。
外の海と直接つながっているのだ。
この点で安倍首相の説明は間違っている。
さらに「完全にブロック」がありえないことは傍証からも明らかだ。
いろいろな調査で福島沖の海底には40カ所の放射能のホットスポットが見つかっている。
「0.3平方キロメートルの港内」ではこれまで1キロあたりのセシウムが74万ベクレルというアイナメが見つかっているが、その港の外の20キロ先で捕れたアイナメからも2万5800ベクレルが検出されている。