97.1年目の成功 Part.3

お客さんをつかまえるために、受付周辺をさりげなく歩くということもやった。基本的にテラピスト達は、受付を通りロッカーを過ぎた奥のテラピールームエリアに居て、受付には出てこない。だが僕は、仕事が途切れると、ぶらっと受付に顔を出すのだ。すると、お客さんがスパメニューブックを見ているところに遭遇する。
作務衣を着た東洋人はいやがうえにも目を惹くので、目が合うと『ニコッ』と微笑んで話しかける。するとお客さんは何をする人なのか聞いてくるのでそこで自己紹介するのだ。そのときに、困っている体の問題はないか聞く。大体の人は一つや二つは体の問題を抱えているものなので、それを言ってくる。そこで、その場で簡単に診断してあげたり、軽く指圧をやって見せてあげる。すると興味を持って予約を入れてくれるのだ。
1年目のシーズンが終わって初めて後ろを振り返ることができた。よくまあなんとかここまで来れたなというのが実感だった。最初は仕事が来なくて毎日朝からすることがない状態。おまけに家賃と食費と交通費はしっかり出て行く。何よりも社会と接点がないというのは精神的につらかった。人は人に必要とされるからこそ、活力が生まれてくるものだ。人と繫がっていなかったら感動も何もない。そんな無収入の生活が何ヶ月も続いて、異国でしかも初めての分野の仕事をものにする保証も何もなかったけれど、それでも撤退することは頭の中に浮かんで来なかった。あれは何だったんだろう?やっぱり崖っぷちにいたんだろうな。自分にはここ以外行く場所がないという崖っぷち。もうやるしかなかった。もうだめだとぎりぎりな気持ちになると必ず、目に見えない力が働いて助けてくれることもわかった。世の中には頭で理解できない世界が存在しているようだ。
こうして色々なことが経験出来た本当に貴重な1年目だった。