100.下りた永住権 Part.2
楽団に好きな曲を弾かせて楽しむ浜辺(前回よりの続き)
選択肢は二つ。このままメキシコに住み続けるか日本に戻るか。このまま住み続ければ、再びここで所帯を持つ可能性が高まり仕事もさらに磐石になっていきメキシコ社会にどんどん根を張り、やがて永住する方向で進むだろう。日本に帰るとなるとまた一からやり直しだ。
それは大変な選択だった。仕事もあり友人も彼女もいて基盤は完全にメキシコにある。日本にも友人はいるものの、もう何年もその社会から離れて生活している。もとは日本に住んでいた日本人であっても、10年振りに帰国するということは、外国人が日本に行き社会に溶け込むことからスタートするのと同じようなものだ。
昨年永住権を申請したあたりから何となく思い始めたこのことは、永住権が実際下りて、シーズンが終わったころにはいよいよ決断を下す頃に差し掛かっていた。
「よし。日本へ帰ろう」
これが考え抜いた末に出した結論だった。正直、約10年に渡るメキシコ社会での生活にこの頃は少し物足りなさ感じており、また最近身の危険を感じる嫌なトラブルに遭遇したこともあり、一旦日本へ帰国してそこに身を置いて今後についてじっくり考えてみたかった。同時にこのままメキシコという土地へ飲み込まれてしまうことへの抵抗もあった。日本にいる両親のことも考えた。
色々考えた末、一旦ここでの生活を清算して、日本へ戻ってゼロから考えてみることにした。