101.帰国を彼女に伝える
メキシコシティの不良中年二人組み Que onda buey?彼女と付き合いだしてから真っ先に伝えたことは、いずれ自分は日本に帰ることになるだろうということだった。そして自分はいずれ日本人と結婚することを考えているとも話した。だから、彼女にはそのつもりでいてくれるように3年間ことあるごとに言い続けてきた。
自分は一度海外での結婚生活に失敗している。だから、既に19歳と10歳の子供が二人いて6歳年の離れている外国人女性との結婚には正直自信がなかった。また、結婚とは限定されていく人生を受け入れるということだと思うが、新しい土地に移住したばかりでまだ不安定なこのときは、将来を決する覚悟はなかったのだ。だから、余計な期待を持たせないようにするのが相手のためでもあると考えていた。
周りから、「身勝手だ」、「相手のことを本当は愛していないんだ」といろいろなことを言われた。自分ではそうではないと思っていても、自信は揺らぐこともあり、気持ちに確信が持てない自分が嫌だった。あれから何年も経った今、自分の本当の気持ちが分かる。自分に嘘をついていなかったことが分かり、初めて自分を受け入れることが出来た。
僕から帰国の話を告げられた彼女は最初は取り乱した。しばらくは怒る泣くの繰り返しだった。彼女の心の痛みは十分理解してやれたが、どうすることも出来なかった。最初から分かっていたこととは言え、いざそのときが来ると感情には勝てない。怒る泣くを幾日も繰り返した彼女は、やがて今度は潮が引いたかのように無口になっていった。
そんな無口な日が何日間か続いたある日の朝、僕のところにやってきた彼女は笑顔を見せ、「あなたとの残された日々を思いっきり悔いなく過ごしたい」と言ってきた。この言葉に、今度は僕のほうが胸が張り裂けんばかりの気持ちにさせられた。