夜の帳が降り始める頃、黒い雲が空のほとんどを覆い尽くそうとしているのに、向かう方向だけがぽっかりと穴が開いたように明るい。
久しぶりのジャズ・ライヴを楽しむために向かった先は、熊谷の「space1497」。
コロナ禍になる前は、たまに来ていた店であるが、しばらくご無沙汰であった。
確かもうすぐだよなと注意深く運転をしながらここかと見つけ場所は、どこか雰囲気が違って見えたのでスルーしてしまったが、大分走ってから通り過ぎたことを確信した(笑)。
Uターンしてみると、確かに店の看板があって、やはりここだったかと自分のアホさを笑うと同時にほっと安堵もした。
とりあえず、早めに家を出てきて正解だった。
中に入ると、店のママとスタッフが優しい笑顔で迎えてくれる。
ほぼ満席状態で、後から4人家族ともうひとり、座れそうにないと見ると客が自主的に相席になり席を譲る。
アット・ホームな雰囲気だ。
本日の出演者は、ベーシストの吉川大介さんをリーダーとするカルテットで、他のメンバーは、中野阿貴さん(pf)、中村吉伸さん(ds)、後藤匠さん(as)である。
ピアノの華麗なイントロが始まった瞬間、美しい音色にびっくり。
演奏者によるのかどうかはわからないが、この店のピアノ、こんなにいい音をしていたのかと改めて驚く。
続いて、柔らかながら野太く芯のあるベースが入ってくる。
さらに、ドラムが探るように隙間を埋めてくると結構な圧のサックスがテーマを歌い始める。
どこか緊張感のある出だしから、4ビートのリズムに乗ってくると徐々にヒートアップしていくのがわかる。
曲を重ねるごとにそれは熱を帯びてきて、聴いている方も引き込まれていく。
気がつけば、無意識に脚がリズムを刻んでいた。
ドラムの中村さんだけは、初お目見えかと思っていたが、手数の多さと流れるようなドラミング、その演奏を聴いているうちにふと記憶が甦ってきた。
facebookを検索したら、やはり既にフォローしていた人であった。
しばらく前に一度だけ演奏を聴いて感動したドラマーである。
ご本人がほとんど記事をアップしていないので、失礼ながらすっかり忘れていたのだ。
それがわかってからは、主にドラムの演奏に集中して耳を、目を、傾けてしまった。
そして、ラストの「Moment’s Notice」、ここでのドラムソロが圧巻だった。
やっぱり、生演奏は格別である。
熱いジャズを久しぶりに堪能することができて、ほんとに来てよかった。
ピアニストの中野さんとは個人的に深い縁があって、セットの合間に少し話もでき、謎も解けたのでよかった(笑)。
さて、今聴いているアルバムは、ジョン・コルトレーンの『BLUE TRAIN』(1957年)である。
久しぶりにコルトレーンを聴きたくなったのは、このライヴでコルトレーンのナンバー「Moment’s Notice」が演奏されたからという単純な理由。
このアルバム、コルトレーンのアルバムの中でも傑作と言われている作品で、特に作曲の才能も評価されている。
久しぶりに聴くというか、さほど聴きこんでいたわけではないのですっかりメンバーを忘れていて、コルトレーンのワン・ホーンかと思いきや、トランペットも出てくるわ、トロンボーンも聴こえてくる。
特にペットがいいじゃんと思い、調べたらリー・モーガンだったので納得。
トロンボーンは、カーティス・フラー。
他にケニュー・ドリューのピアノ、ポール・チェンバースのベース、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムという強力な布陣。
コルトレーンの好きなメンバーを集めたらしいから悪いわけはない。
三管によるアンサンブルも楽しめる。
まあ、ジャズに疎い自分がとやかく言うのはおこがましいので、静かに彼らの熱演を楽しむことにしたい。
聴いていると、また先日のライヴが思い出されてくる。