(2021/7/10)


 アナザーエナジー展。キャリアの長い女性アーティストばかりということですごく期待していたが、意外と地味な作品も多く、思ったほどではなかった。とはいえ、面白い作品も結構あり満足だった。

 知らない作家が多かった。出身国は様々。欧米より、アジアや南米などが多い。

 

 アナザーエナジー展の16人のアーティストのうち、自分が知っていたのはミリアム・カーンと三島喜美代だけ。16人ともベテランであるが、第一線で活躍してきた作家より、地道に活動しながらあまり知られていなかった(そして近年再評価されている)作家が多いのではないか。
 それを象徴するのがフィリダ・バーロウ。教師の仕事と子育てをしながらアーティストを続けてきたが、65歳を過ぎて急に美術業界で発見され、73歳でベネツィアビエンナーレ英国代表となった。

 

 

 展覧会中盤はミニマルアートっぽいものなど自分が好きでない感じのものが続いた。106歳で今回最年長(89歳で初めて作品が売れて、それ以降評価が高まっている)のカルメン・ヘレラなど。

 

 アンナ・ボボギアンのダイナミックなインスタレーションは面白かった。

 

 

 

 ミリアム・カーン以降、展覧会後半は具象絵画が多い。細密描写でピンクや青の色彩が印象的なインドのアルピタ・シン。

 最後は三島喜美代のダイナミックなインスタレーションで終わる。この後半部分が面白かった。

 

 

 

 


 特に面白いと思ったのはミリアム・カーン、三島喜美代など。



 ミリアム・カーン。1949年生まれスイスの画家。
 鮮やかな色彩の絵画。
 色が美しく、高さ・大きさをそろえずに絵を並べていてインスタレーションとして美しい。


 「美しいブルー」。透明感があり美しい青。そこに手の跡が見える。絵の向こう側からしがみついて絵の下に消えていこうとしている人の痕跡、のように見えた。
 あとで解説を読むと、これはシリアなどからの難民の問題に反応した作品であった。難民たちはゴムボートに大勢で乗りギリシャやイタリアを目指す。たどり着けず海に沈んでいく人も多い。この絵の向こうの人はそんな、海の底に沈んで行こうとしている人だろう。
 一見美しい絵が、実は重いテーマを持っている。


 


 「無題」。これも難民だろうか。縦長の大きな絵に、人物が描かれている。家族づれだったり一人だったり。顔の特徴はわからないしみな服を着ていないようだ。が、ブルカを被っている風な人もいる。


 


 「人としての私」。裸の二人、一方がもう一人を殴っている。
 シンプルな構図、暴力の瞬間。体を見ると、力強く殴っているのが女で、殴られてよろめいているのが男。カーンの絵では往々にして、顔は簡単な線で描かれていて男なのか女なのかもわからない。



 「描かれた」。これも顔ではわからないが、体を見ると二人の女性のようだ。


 「風景の中で」。宇宙人のような二人。
 大きな絵でも、時には線描で体を描いている。ここで描くのをやめて完成とするのがすごい。

 


 不穏な感じのある絵。
 カーンは一つの絵に数時間以上はかけないという。最大限に集中して描けるのが数時間だから。

 大きさの異なる絵が並んでいるが、高さは絵ごとにばらばら。人の顔の位置を鑑賞者の目線に合わせているようだ。


 小さい絵。なぜこの色にしたのだろうという色使い。
 人と並列して動物の顔もある。

 



 描かれているのは人の体、動物、木、建物など。それらを単純化して描く。

 


 抽象的な絵もある。と思ったらタイトルは「女性戦士の墓」。

 

 

 ミリアム・カーンはほとんど知らなかったが、面白い画家だと思った。

 

 そのあと、近くのギャラリーでもミリアム・カーンの個展を見た。

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