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つづき

 

(2021/7/10)

 アナザーエナジー展の16人のアーティストのうち、自分が知っていたのはミリアム・カーンと三島喜美代だけ。16人ともベテランであるが、第一線で活躍してきた作家より、地道に活動しながらあまり知られていなかった(そして近年再評価されている)作家が多いのではないか。
 それを象徴するのがフィリダ・バーロウ。

 数年前のヴェネツィア・ビエンナーレでイギリス代表が名前を聞いたこともない女性アーティストで(しかし写真を見ると巨大な作品を作っていて面白そうで)驚いた。それがフィリダ・バーロウだった。
 調べてみるとフィリダ・バーロウは珍しいキャリアを持っている。バーロウは渡り作品を作り続けてきたが注目されなかった。(売れることもなく取っておくこともできず、2010年以前の作品は展覧会が終わると壊された)。五人の子供を育て、40年勤め上げた美術学校の教師の職を引退した後、急に美術業界に発見された。そして各地の美術館に呼ばれるようになり、ついに73歳でベネツィアビエンナーレの英国代表となる。
 ここ数十年、今まで無視されてきた年長の女性の作品を再評価するムードが美術界にあるという。(そういえば、2010年にポンピドゥセンターを訪れた時の常設展は丸ごと女性アーティスト特集だった。)


 部屋いっぱい、天井まで届く構築物。玉の材質はセメントだろうか。ボールにはペイントしてある。赤い角材を組んだ上にカラフルなシートやボールを乗せている。身近で安い素材。
 入り口側が正面になっており、こちらに向かってスロープになっている。奥まで回り込むことができる。
木材による脚は細く、そこに天井に届くほど積み上げており、地震がきたら崩壊するのではと不安になる。

 


 廃材を積み上げたような作品は、バーロウが子供時代、大戦で廃墟になったロンドンで過ごしたことが影響していると言われている。
来日できずzoomで作者が指示したという。

 そんなに面白いものではないが、大きくてエネルギーがある。

 


 ロビン・ホワイト。ニュージーランドのアーティスト。
 巨大な布みたいなものが床から天井に届く高さまでかかった、ダイナミックなインスタレーション。24mもあり途中は折りたたまれている。
 トンガの女性たちと一緒に製作されたもので、ンガトゥという、トンガの伝統的技法で作られている。
 船、鳩、オリーブといったモチーフの絵。各列2種類の似た絵が交互に描かれていて、それが24mにわたり伸びている。トンガのローカルな手法で作られているが解説によればイスラエルの通りに言及している。


 「夏草」。縦長の紙に描かれた油彩を横に並べた大きな絵。
 1943年、ニュージーランドに収容されていた日本人捕虜が、軍の作業に動員されることに反対して収容所側と対立し、蜂起を疑われてニュージーランド軍に銃撃され死傷者が出た(フェザーストン事件)。
 その舞台となった場所の風景を描く。鳥のいる風景。机、椅子、くいなどたぶんそこに残されたものが描かれている。ものによって影の方向が異なる、ちょっと不思議な風景。絵の中に日本語で詩が書かれている。

 

 

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