細長の花器にすんなり猫柳 松尾清隆
(俳句界2月号 作品10句「二月」より)
「細長の花器」から陶器の一輪挿しのような縦に細長い花瓶を想像した。
調べてみると、細長花器には横型のものも存在するらしい。そう言われてみれば、生花の器として目にすることも多い。
掲句の「細長の花器」とは縦型なのか、それとも横型なのだろうか。
「すんなり」収まっているのだから、恐らく縦型の細長花器なのだろうと思う。
そちらの方が自然体の猫柳の姿のように感じる。
生花には詳しくないが猫柳は枝ものなので、生けるのは花器が縦長でも横長でもなかなかに難しそうだと感じる。
いくつも重そうな穂をつける猫柳のバランスを取る。
うまくいかないだろうと覚悟していたことが意外とすんなり上手くいったときの驚きに似た喜びは、春の訪れの気分に似ている。
静かに前を向いている、やさしい希望の光を感じる句であると鑑賞した。
また「猫柳」という季語からはどうしても動物の猫を連想してしまう。
猫柳がすんなりと生けられている様子を詠んでいるのだが、猫が大人しく言うことを聞いてくれているような気持にもなってくる。
猫好きとしては、ちょっと澄ましたような猫の表情も浮かんできて思わず笑みが浮かぶ。
(わが家の猫の定位置。わたしの膝の上にすんなり収まっています)
笠原小百合 記