島の名前は「宝島」。
物語の話ではなく実際に存在すると知ったのは島旅を趣味とし始めた頃。
詩的な名前を持つこの島への憧憬は持ち続けていたものの、そのアクセスの不便さもあってなかなか行かれずにいた。
しかしながら、SNS全盛の世の中ゆえ秘境はいつまでも秘境ではないことを数多く思い知っている、そうならないうちにこの島の探索をしようと思い鹿児島へ向かった。
宝島を擁するトカラ列島へは週2便の鹿児島港発のフェリーで一晩。宝島はその最南端にあり13時間の旅。関東在住だと小笠原に渡るより遥かに労力と時間が要る。
途中、多くの個性豊かな島々に寄航していく。いずれの島もそれぞれ面白そう。
諸説はあるものの、トカラ列島は悪石島と子宝島の間にトカラギャップと呼ばれる生態系の境界線が存在するらしい。
大雑把に言うと悪石島までは本州の海、子宝島と宝島は南西諸島の海ということになる。
そして出発から13時間後、目的地の宝島に到着。
湾内の風景。
悪石島までとは全く異なる南西諸島の海の色。
ほんの2時間弱で温帯から亜熱帯への遷移を体験できる。
この島、トカラでは珍しく売店があるので食料品に困ることは無い。島の人々はこの上なく親切で迷っていたりすると向こうから声をかけてくれる、なにかとお世話になった。
島内を歩くが、起伏が多い。
トカラの島々は子宝島を除くとほぼ断崖に囲まれている。海へのエントリーの自由はかなり制限されそう。
一周できる道はあるが、村落を離れるとGWだというのにほとんど人に合う事はない。
最南端にある灯台からの風景。
写真では表現が難しいが、海が不思議な色をしている。沖縄でも本州でもない深い蒼。
今年初めに中国沖で起こった石油タンカー事故による重油漂着が深刻であることを聞いていたので心配していたが、ボランティアの方々の努力でほぼ回収されたらしく、それらしい漂着は今回歩いた限りでは見ることはなかった。
海岸には回収された重油を収めたドラム缶が並んでいた。敬意。
さて本題。
トカラに関する情報についてはWeb上でそれなりにあるが、いずれも陸上のものがほとんど。
海に関しては釣りか外海のクルーズダイビングの情報しかなく、生態系の境界に位置する島の周りの海中にどんな風景が広がっているのかを実際に見てみたいというのが今回の旅の主目的。
まずは宝島で最もフォトジェニックな宝島港。
沖縄でもあまり見ることの無い極度に澄んだ蒼色をしている。残念ながらその透明感は写真では表現しきれない。
手始めにここから素潜ってみる。
白砂の海底が続く。生物はあまりいないが、湾内で波もないのでひたすら気持ちが良い。
沖に行くと少々岩が増えてくる。湾内は浅く高々-6~7mといったところ。隠れるところが少ないのか、やはりあまり生物はいない。
元々断崖が多い島であることに加えて、残念ながら滞在中ずっと波が高くエントリーできる場所が限られていた。
入れそうなところからリーフ外に出て周辺を何箇所か探索してみた。流れは幸いあまりなかった。
透明度が非常に高い不思議な海の色。本州とも南西諸島とも異なる。
リーフエッジが切れ込む地形は南西諸島と同様なのだが、生きた珊瑚はさほど発達しておらず(もしくは台風や荒波で失われた?)、幾分か本州の海の面影を残している。かなり沖まで-15mほどの比較的浅い海が続く。
そこに巣食う魚も南洋のカラフルなものはあまり多くない。釣り人が多く来るくらいなので大物は多いのだが。
ただ、透明度の高さや類を見ない水の色や手付かず感は沖縄でもあまり見ないほど。また、人を見たことがないのか魚もあまり逃げない。
当初の予定ではフェリー2周りの期間滞在、もしくは他の島にアイランドホッピングする予定だったのだが、予報が荒れる方向に変わってしまい安全を見て1周り、つまり二泊三日で鹿児島に戻ることにした。
ということで、残念ながら島の各所で思う存分海の中を探索することは叶わなかった。
機会があれば他の島も含めて再訪したいと思います。