司馬遼太郎氏の作品に、ずっと憧れていたモンゴルの地を訪れて広大な草原や遊牧民、更には降るような星空に感銘を受けたことを描いた随筆があった。
社会主義国だった当時はソ連経由で北側からかなりの遠回りをして時間と手間をかけなければ行けない場所だったらしく、この国の南の果てにある南ゴビは遠い桃源郷のような描かれ方をしていた。
そして今年、自身も長年憧れていながらずっと躊躇していた地を思いきって旅してきました。
現在では首都ウランバートルまで行くのであれば、たったの5時間ちょっとで行けるし航空券もさほど高くない。
しかしながら、一旦ウランバートルの外へ出て自由に旅をするとなるといろいろな障壁のために格段に難易度が高くなってしまう。
例えば
・国内線は予約が厄介で頻繁にキャンセルされる上、荷物の重量制限がきつくて撮影機材持参だと諦めざるを得ない。
・国際免許は通用せず、自力でのレンタカー旅ができない。
・舗装されている道路は限られた幹線のみ。それを外れると草原を貫く標識もない悪路(というより轍)しかなく、その悪路も時々刻々崩壊などでルートが変わり、状況に精通した現地の人でなければ運転不可。
・そのため広大な国土と悪路が相俟って膨大な移動時間がかかってしまう。
・とにかく店や食堂や宿など全く英語がダメで、モンゴル語(年配者ならロシア語)しか通じない。
・モンゴルに限ったことではないが、アウトドアでの(特に夜間の)撮影はどんな危険があるか情報がない。
このような状況の国なので、自身の旅行スタイルと相反してしまう上に割高になってしまうが、現地のガイドとドライバーをお願いした上で旅をすることに。
旅行時期は、観光客でごった返すハイシーズンの7,8月、更には雪で閉ざされてしまう10月以降を避け、その間を縫って9月。
更には氏が感嘆したという満天の星空を満喫すべく月の細い時期としました。
この時期選択は大正解で、オフシーズンの静かな南ゴビを旅しながら(観光向けでない)本物の遊牧民を訪問したり、砂漠の真ん中で星を撮影したり、平原で道に迷ったり、いろいろレアな体験ができました。
ゴビの砂のおかげで、帰国した今でもレンズを廻すとジャリジャリ音がして心臓に悪く、おまけにCanon純正タイマーリモコン(結構高い…)がひとつお亡くなりになりました。
以降写真の整理がつき次第何回かに分けて旅行記でも記すことにしようかと思います。