かなり実験的な作品なのですが、新作動画ができました。
7月下旬、北岩手の折爪岳、及びその一週間後に富士山麓で撮影したヒメボタルをなんとか動画にできないかを試行錯誤した作品です。
折爪岳で人生初のヒメボタル撮影、予習はしていったものの不慣れなためなかなか思い通りに撮れず。そのときの詳細はここ。
そこで翌週、伊豆の帰りに奮起して富士スカイラインに再度ヒメボタルを狙いに行ったのです。
このとき少し時期が遅かったのであまり期待していなかったのですが、いざ出現時間が来てみると折爪岳に負けず劣らずのホタルフィーバーで、前週の反省点を踏まえて、思う存分に光の軌跡を撮影することができました。
頑張って80枚ほど比較明合成した静止画がこんな感じ。
さて、話は動画に戻ります。
上に書いた通り、なんとか撮影したヒメボタルの光を動画にしてみたい。更にできることなら本来ならば現場でしか体感することができない点滅光の乱舞をなんとか再現したい。 そんなことから方法論の検討を始めました。
まずは試しに5D3の動画モード+最大ISOで撮ってみましたが、予想通りまったく歯が立たない。(もしかして最近流行のα7Sなら撮れる??)
次に静止画で撮った光跡をクロスフェードする方法、これだと動画というよりスライドショーっぽくなってしまいます。
そこで、採用したのは(非常に手間のかかる方法ですが)OpenCVというコンピュータービジョン(要は画像認識)に使用されるC++用オープンソースライブラリで前処理・動画フッテージ化をしてから比較明合成する方法です。(この後かなり専門的な話になるので、興味のない方は読み飛ばしてください。)
そもそもOpenCVは画像認識などに使用されるライブラリなので、アート作品に使用する例はあまり聞きませんが、なかなかいい仕事をしてくれました。
今回使用した手法は、コンピュータービジョンの中でもAdaptive Threshold、Labelling、およびDialateというアルゴリズムです。
簡単に書くと、Adaptive Thresholdで画像中の光跡のみを抽出、Labellingで軌跡に含まれる光点をひとつずつ抽出、抽出された光点をDialateで膨張させて見やすくしてから時系列に繋いで動画化…といった具合。これで軌跡一本分の動画ができる。
もっと具体的に書くと、上記のようなプログラムを組んで、まず撮影した膨大な量のヒメボタルの光を光点ごとに分解。
一枚のヒメボタル写真(20秒露光)はこんな感じですが、
それをこんな感じに光点の数だけ分解。
それを時系列でゆらぎを持たせながらクロスフェードで並べて一本の動画フッテージにするわけです。
そんな動画フッテージを100本以上作成しました。
ここまでまるまる2日PCをフル稼働(プログラムでほぼ自動化しているのでPCが勝手にやってますが、最適化していない即席プログラムなので計算にかなり時間がかかる)
更にAfterEffects上で作成した膨大な数の動画フッテージを比較明合成でスタック、薄明かり時に現地で別途ドリー撮影した背景(こちらも前後でレイヤー分解してある)と組み合わせて完成です。1シーン書き出しが約5時間ほど。
方法論の検討やらプログラムの作成時間も入れると、いつもと比べるとかなり膨大な時間を要しています。
出来上がった作品を見ると、かかった手間の割には…うーむどうだろう…もしくはもっとうまい見せ方があったのかもしれません。そもそもCGでやってしまった方が遥かに綺麗にできるのでしょう。
しかしながら今回の手順がいろいろ勉強になったのは事実で、大いに今後の表現の糧になったかと。
音楽についてですが、こちらも書けば少々長くなるので、あらためて。