ワインじゃないお前は酢 -125ページ目

よく行く飯屋

近所にある、駅前のラーメン屋という言葉がいちいち忙しいラーメン屋へ行く。

忙しい人間が入るには丁度良い、働き者の店主が鍋を振るう店。


この店のチャーハンは美味しい。

リズミカルに鍋を振るい、リズミカルに餃子の皮へあんを包み、リズミカルに茹でた麺を冷やして冷やし中華を作る。

とにかく乱れない感じだけれども、真面目過ぎず人が豊かで愛嬌のある料理人。

幾ら料理が美味くても、店の雰囲気がダメなら料理はもっとダメとケチを付ける性質なので、この店は嬉しい。


餃子2人前にご飯と冷やし中華を頼み、レモンサワーを飲んで待つ。

朝から何も食べずに夜まで入り、空腹の境地。


出されたものを美味しくゆっくり食べたいのはやまやまだが、出されて美味しいものをちまちま食べられず、熱いものは熱い内に、冷たいものは冷たい内に頂く。

食べ終えてレモンサワーを飲んでテレビを眺める。


よほど前に来たときに大食いをしたのか「今日は腹いっぱいになったかい」と主人に訊かれる。

少し恥ずかしくなって「どうもご馳走様でした」と一礼。いつも忙しそうに厨房を動き回っているが見られているらしい。


少し他愛の無い話をしてから帰る。

自転車で遊んでいることを少し話したので、「ガンバッテネー」と励まされる。

結構うれしい。

海と山 4

9時を過ぎた頃に起床。

眠いことよりも腹が減って起きる。

友人は既にテレビ前に座りニュースを観て、黙っている。


朝の挨拶と、テレビを横顔でちらと見ながら「朝飯どうする」の質問。

「何が食べたい」

「ごはんですろう」

「そうか」とうなずいて貰い、簡単に支度をして、海沿いの道を自転車で漕ぐこと数分の場所にある定食屋へ入る。


友人はこの店がカツ丼や安い簡単な定食が出ることを知って来たのだが、

「今時期はコチが美味しいよ」とおばちゃんに勧められるがまま、二人揃ってコチ定食を注文。


後よりうしろの席に親子連れのにぎやかなのが訪れて、その人らが賑やかなのと大判捨ての注文で厨房の中まで静かな店内が急に活気付く。

そちらを眺めて、子供の頃、両親に連れられて行った名古屋の旅館を思い出す。

「親に連れられて昔名古屋に行ったんだわ」

「ふーん、そう」

「バブル期でさぁ、泊まる旅館、泊まる旅館ごちそうでさぁ」

「バブルってすごいよね」

「でもね一番の思い出があってね」

「何?」

「名古屋に着いた初日にものもらいをもらいましてな」

「がっはっは」

「大変なものですわ、ものもらって名古屋着いて初めてやることが眼科探し」

「すぐ見つかったの」

「見つかったよ、効くね眼科にもらった薬は。すぐ治った」

「良かったじゃない」

「そうそう、その時さモンキーパークってところに行ったんだわ」

「名古屋に行ってまで猿なの」

「そう。それで夏場に行ってそこの温度計を見たら36度ってかいてある上に炎天下。園内のどこも日陰が見当たらなくて、家族総出で死に掛けた」

「がっはっは」

そう馬鹿な話をしているとコチ料理がテーブルに並んでいく。

刺身に煮付け、骨は粗汁で一匹を丸々余すところ無く調理されて、椅子に座る二人「おお」と感激が口からもれる。

先ずは刺身に始まり、煮付けと進む。コチの身は程よい弾力があって美味しい。脂もほどほど。


予想外の朝メニューで一瞬、友人の顔は適当に済ませようと引きつっていたが結局のところ美味しく頂き、食べ終える頃には昼寝の猫みたいな顔をして呆ける。

海と山 3

遊びに行った先に住んでいる男、この人は山男で、趣味や嗜好では無くて生業にする偉い人。

おそらくこの人の仕事が自分の周りをみても一番、男の仕事をやっている人と思う。

この日、昼間は絶好調の天気の下で働いてきたらしい。

大変失礼ながらも、到着前に少し寝かせて、起こす、迎えさせる、宅へ邪魔をする。


宅は、2階一戸建て、坪は幾つなのか昭和時代の中流階級の満足さで一人で使うには不便どころか、寝るにも食うにも寂しい間が広がり、ついついお節介に「彼女はつくらないのかね」と尋ねる。


自転車で来て、汗が汗を這って、塩を噴いて、臭いがすさまじいので客間へ通される前に、浴室へ通されて一服。

体が汚れ過ぎて石鹸の滑り悪く、随分と手間が掛かる。


風呂から上がり、2階へ続く最近は滅多に見ない急な階段を上り、客間兼寝室兼娯楽室へ入る。つまりがここは生活の基盤となる場所でテレビが光り、扇風機が回る。


「明日になったらいっちょ飲みますか」と相談して、もう話した満足と無言でそれぞれテレビを眺め、しばらくして就寝。


次の日、朝に大分入った頃、起きる。曇り。