月組大劇グランドホテル』『カルーセル輪舞曲』感想③ | ★F**kin' Perfect★

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徒然なるままに、つらつらと。。。

の続き右矢印


最後に脚本について。グランドホテル形式という言葉の通り、誰もが主役でもおかしくない。

そんな中で、その役自体よりも繋がりや背景がよく練られているというか、うーんと唸らせる。

ただ、今回は短縮版で今一そのバックボーンが上手く描かれていないのが残念(まぁ一本物で

『グラホ』やられても演じる側も観る側もかなり消耗するので二本立てで良かったんですがw)

 

そんな背景も踏まえ思うこと。華やかなホテルの裏側では下級層民の憤懣が高まりつつある。

劇中で何度も聞く“1928年”“ベルリン”これはいったい何を意味するのか。翌年、世界大恐慌が起こり

世界中がパニックに。フラムシェンの憧れでもあったアメリカは真っ先に恐慌をきたすわけですが。

(その中には別のオットーさんやイヴァーノ、ロナルドもいるわけね。と思ってしまう星組脳w)

結局フラムシェンはアメリカに行かなかったわけですが、その選択が正しいのかどうか(後述)

 

世界恐慌の前年ですから景気もバブル時代の日本のように狂ったようにいいわけで。今では

考えられない“株価が16ポンドも上がった”なんてことも。その波に乗れなかったのがプライジング。

(もう少し踏ん張れば、他所の業者が倒れていく中独り勝ちってこともあったかもしれないのに

←勿論更にひどいことになる可能性もあるけれど)倒産寸前の会社の立て直しに奔走し、ベルリンには

株主への業績説明を。合併さえい上手くいけば経営危機も乗り越えられそうだったのにそれも失敗。

株主に責められるプライジング。弁護士の言を聞き、「合併は成功」と付きたくもない嘘をつき。

おまけに家庭も上手くいかない。誠実だった男はどんどん堕ちていくわけで。最後に「手を洗いたい」

と言ったのは、男爵の血と共に己のこれまで犯した罪や過ちを洗い流したかったんだろうか。

 

オットーは実はユダヤ人。当時はそこまで迫害の対象ではないと思うのですが、、、世界恐慌とくれば

次にベルリンに訪れるのはナチスの台頭。ゼンマイ仕掛けの人形に様に動いていたグランドホテルの

人たちも180度生活が変わるわけで。そうなる前にドイツを抜けることが出来たオットーは

よかったですが、勿論フランスにもナチスの魔手は忍び寄るわけで(某『リラ壁』のように)ただ、12年も

後のこと。その頃もうオットーは・・・少しの間でもフラムシェンと幸せなひと時が過ごせますように。

 

そのフラムシェン。ハリウッドに憧れる、とある理由でどうしてもお金が欲しい女の子。その理由時点で

普段からあまり後先考えていないんだろうなとも思いますが汗プライジングに一緒にアメリカに

来てくれと言われた時点でそういうことも含まれることを了承してたか(でも土壇場になって怖くなった)

全く考えていなかったのか。そこそこのお金を要求(現在の日本円にして200万)している時点で

ある程度覚悟をしていたとは思うんですが、当座を凌ぐ分しか要求していないのはやはり考えが甘い。

まぁオットーじゃないですが普通に良い子だと思いますし、考えていない部分も含め可愛いとは思うw

 

ラファエラのグルーシンスカヤへの思いも、当時は“秘めるべき想い”だったでしょうね。(純粋に

慕っているというより、そういうことと理解しているんですが)グルーシンスカヤ第一で、彼女の幸せが

自分の幸せ。でも吐露する想いはかなり独占欲強かったですよね叫びヒィって思いましたもん。

(一歩間違えばストーカー)どうか秘めたる自制心に独占欲が勝らないよう祈るばかりです。

 

最後に子供が生まれたエリック。シガーレットケースも(結果として)形見として受け取ったし、

何となく名前は男爵からとるのかなとも思ったり。ただ、その子が歩むのは激動の時代。

どうかその道に光がずっと差し続けますよう。なんせ『グランドホテル』唯一の光なんですから。

 

異色の存在ドクター。全て調和した舞台の中で一人違うスポットライトを当てられているかのよう。

と思えば、舞台になじみセットと同化していたり。皆生きることの執着しているのに対し、死に急ぐ、

とまでは言わないまでも生への執着をすっかり捨てているかのよう。オットーが“死”が怖いと

言っていましたが、死にかけのオットーも死んでしまった男爵も将来訪れるであろう自分の死すら

客観視し一つの現象としかとらえてなさそうです。ある意味、今風に言うならPTSDなのかも。

 

と、男爵とグルーシンスカヤのメインの話以外にも色々と想いを寄せて考えてしまう、それが

グランドホテル。従業員、やくざな運転手、マダムピーピー、先ほど言った伯爵夫人とジゴロも。

1度しか見れませんでしたが、それぞれのキャラクターに注視して観てみたいと思う作品でした。

 

 

個人の感想、、、は書かないので一言二言だけ。観たのはBパターンでした。

プライジングのみつるさん。ちょっと持ち味に合わなかったか(描かれ方が少ないのもありますが)

もう少しプライジングの追い詰められていく様を見てみたかったです。

 

出番が少ないながらも強烈な印象を残した運転手トシ君。歩き方とか今までにない感じ。

言い回しもつい真似したくなりました(笑)男爵のカウチに寝そべった姿がセクシーで恋の矢

 

エリックありちゃん。彼のもってる陽の空気がエリックの持つ役割によくあっていると思います。

観ていないのでなんとなくですが、あーさエリックは子供が生まれそうでもプロフェッショナルに

仕事こなしてそうですが、あり君は絶えずソワソワしてそうな(笑)新米ホテルマン&パパにぴったり。

 

ラファエラあーさ。近寄りがたい妖艶な感じ。そんな美女が「あなたはいつか私の元に、、、」

なんて言うから本当に怖い叫び彼女を盲目的に愛しているのが痛いほど伝わってきました。

 

フラムシェン海ちゃん。どちらかというとわかばちゃんの方が任にあっているのか?海ちゃんだからか

ある程度計算しながら人と付き合っている(でも計算間違いも多い)そんな印象を受けました。

 

オットーみやちゃん。観る前はこんな役を退団公演に涼風さんが?とも思っていましたが、

観てからはその認識を改め。今まで以上に舞台に対する美弥ちゃんの存在感の大きさを感じました。

あのモーガンから一転、美弥ちゃんの美の片鱗が全然見られない(笑)よぼよぼな会計士に。

役幅の広さに可能性が更に広がりましたね!例のポール技は必見です目凄すぎる!

 

グルーシンスカヤ。妙齢の旬が過ぎたダンサーを若いちゃぴちゃんが熱演。よく演じきれたなとこちらも。

ダンサーだからこそ彼女に共感する部分もあるでしょうし、長年トップとして務め上げてきたからこそ

あの役を演じることができたでしょうね(たとえ学年が上であっても就任直後じゃ難しいでしょう)

ちょっとした仕草に年を感じたり、ちゃんと男爵に相対しても(かなり)年上に見えました。

年下の男性に恋をしてしまったナンバーでは一転、とってもお茶目でした!ダンスシーンは流石。

 

男爵。若い(という設定。多分ノンさんの時はそこまで若いって強調されてなかったのでは?)といっても

貴族社会の洗練された男を演じるには若すぎる学年ですが、ちゃんとものにしているのがたまき君

クオリティーですね。恰幅の良い体にどのスーツ姿もよく似合うし、『バンディート』の時もですが

なぜか“赤いバラ”というアイテムが似合うんですよね(笑)リフトの安定感も流石でした。

一つ言わせてもらうと、どうしても借金をするタイプに見えないあせるそんな真面目さあふれる男爵でした。

 

 

どうしても時期的に就任時期が同じなので紅さんと比べてしまうのですが(優劣の問題じゃなく)

紅さんはオットーもアーサーも役柄に合わないだろうし、たまき君のオームも想像ができない。

今のところ二人ともそれぞれの長所に“合っている”公演が来ているわけですが、今後二人に

どんな役柄が来るのか。まだまだ新米トップな二人をこれからも見守っていきたいと思います。

 

ショーは続きで右矢印(続かないかもしれない)