健康志向の母のもとで育った影響もあり、家庭菜園でとれた野菜をたらふく食べていました。
夏になるとゴーヤー、キュウリ、モロヘイヤ、オクラ、トマトが毎日のように食卓でパレードをひらいていました。
文句を言う兄に対して母は、
『有機無農薬の野菜なんてなかなか食べられないわよ!』の決まり文句で一蹴していました。
それにしても量が半端じゃないんです。
例えばゴーヤーチャンプルーというと、普通のイメージでいくと、ゴーヤー:肉系=7:3ぐらいだと思いますが、我が家は9:1でした。
自分が草食動物になった気分でひたすら食べるわけです。
そんな毎日の特訓の成果もあり、わりと野菜が好きになり、ドレッシングをかけなくても食べられるという特技まで修得しました。
人間の適応力ってすごいんですね!
ただ味噌汁に野菜たっぷりは止めた方がいいと思います。
兄の言葉を借りるなら『これじゃあ味噌汁じゃなくて野菜スープだよ!』状態でした。
『野菜はゆでた方がたっぷりとれるのよ、食べなさい!』の前にいつも白旗をあげる兄でしたが。
一応僕は黙って黙々と食べていました。黙々と食べ続ければいつかはなくなります。
あ、そうか!
もしかすると僕はMなのかもしれません。
だからヒルクライムも好きなのかも。もくもくと登ればいつかは頂上に着きます。
人生とはどこで何がどう繋がるかは分からないもんです。
そんなこんなで、現在も食事には少しだけ気を遣います。
炭水化物、タンパク質、野菜系の三つはそろえないと違和感を感じます。
最近ではそれに加え根菜類、キノコ類、海草類にも注目しています。なんでも免疫力を高めるらしいのです。
とはいうものの、ペヤング特盛り、ミニクリームパン4個セット、まるごとソーセージみたいに炭水化物ばっかになっちゃうこともあるんですけどね。
まぁ、人間というなはそんなにいつも完璧超人ではないのです。理想と現実には開きがあるのが大体は普通です。
ちなみにそんなときでもあまり自分を責めるのはよくありません。『まっ、いいか~』で乗り切りましょう。
『まっ、いいか~』は日本人が生み出した最高の個人用免罪符だと僕は思います。気が向いたらいつでも発符できるのが手軽でいいんです。
こういう気の持ちようこそが何年か前に流行った『鈍感力』というものですよね。
使い方が合ってるかどうかは知りません。読んだことはないので。
そんな野菜好きの僕なので、昨日も二之瀬ヒルクライムを終え、カネスエで夜ご飯を買う際にも栄養バランスを考えました。
最初に手にしたのは鮭弁。野菜の煮物系も入っておりバランスは抜群です!しかも298円の30%引き。お得…
ところがふと横を見ると、寿司12カンぐらいのやつが570円の30%引きです。
57×3=171円引きの400円ぐらい。
気がつくと迷わずに寿司にチェンジしていました。
ああいう場面での計算の早さは自分でも感心してしまいます。
金のことになると損得を考えてしまう、悲しいものです。
金の損得といえば、こういう人間は食べ放題や飲み放題で落ち着いて食事ができません。元をとるには、ジュース一杯が100円だとして…とか余分なことばかり考えます。
愚かだとは分かりますがやめられません。
でも『まっ、いいか~』
寿司を手にした僕は、栄養バランスを考えていました。
魚でタンパク、酢飯で炭水化物、あとは野菜野菜…
野菜コーナーでサラダ用ほうれん草98円と一本12円のキュウリを2本手に取りかごに入れました。
我ながらホレボレするほど完璧なバランスです。
会計を終え、外にとめていたdefy1にまたがり帰ります。
二之瀬でタイムも更新できたのでルンルン気分で漕ぎます。
するとそのとき、
バキャキャキャキャッ!
突然何かを前輪に巻き込みました。
コロンコロンコロン…
周囲に散らばる何か。
defy1からおりてたしかめるとそれは無数に分断されたキュウリでした。
さっき買ったばかりの、これから食べるはずのキュウリでした。
どうやら右手に持っていたビニールの買い物袋を前輪に巻き込んでしまったようです。
フロントフォークとスポークによって見事な下ごしらえがほどこされたキュウリ。キムチの素がしみこみやすいように、手でばらしたような感じのやつにそっくりでした。
ミスタードーナツの店の前に散らばったそれをミスタードーナツ店内からもれてくる照明をたよりに黙々と集めました。
ミスタードーナツにいる休日を満喫するカップルとかに変な目で見られていないか気が気じゃありません。『おい、あいつキュウリ拾ってるぜ!』『やっだ~、落ち穂拾いじゃなくてキュウリ拾いじゃな~い』『ケラケラケラケラ』そんな嘲笑が脳内をかけめぐりながらも、一刻も早く立ち去ろうと必死で拾います。
嘲笑ならまだいいものの、『大丈夫ですか?』なんて声をかけられたらたまったもんじゃありません。
拾いながらおそるおそる顔をあげると、店内の客はそんな外の様子なんぞ誰も気にしていませんでした。
今から店に入ろうとする家族連れですらスルーです。
ただの自意識過剰君でした。
二之瀬で好タイムを出して喜んでいたかと思えば、わけのわからんことをやってしまう。それが僕です。
キュウリはその後、我が家のごみ箱で短い生涯を終えました。
あとがき
兄からもらった劇団ひとりの本『そのノブは心の扉』に影響を受けて書いてみました。
自分の弱い部分もあけっぴろげにして、ユーモラスに、ときにはおおげさすぎるほどにえがかれていたそれは本当に面白く、たいていの本は読破せずに飽きてしまう僕が数日で読み終えてしまいました。
他にはなかなかない感じのタレントエッセイ本です。是非みなさんも読んでみてください。
まぁ、タレントエッセイ本なんてほとんどよんだことないんですけどね。
まっ、いいか~