前回、資産は負債で、プラスはマイナスによって成り立つと説明しました。
では、逆の場合を考えてみましょう。

1.あなたが預金を引き出す
2.会社が借金を返済する
3.負債を抱えて破綻する

1の場合、銀行から預金を引き出すというのは、銀行の負債である預金を解消する代わりに銀行の資産である現金をもらう事になります。
(「~預金は借金?~」より)
あなたの資産である「預金」と銀行の資産である「現金」と負債である「預金」が、あなたの資産「現金」だけになります。

2の場合、銀行から借りたお金を返した時、会社の「現金」(利益でもいいかな)と「借金」が消え、銀行の「貸出」が「現金」に変わります。

3の場合、借り手の負債が消える代わりに貸し手の資産も消えます。

国家全体の視点で見るなら、どれもこれも誰かの資産によって誰かの負債を打ち消しています。
負債のみが消えるというのは絶対にあり得ません。
「借り手」がいるのなら「貸し手」も必ずいるのです。

ここで「~日本の資産と負債~」を思い出して下さい。
「家計」の純資産は1000兆円のプラスでした。
ならば、1000兆円のマイナスは誰が引き受けていますか?
それは「政府」が500兆円、「会社(非金融法人企業)」が300兆円、「諸外国(対外純資産)」が250兆円ずつマイナスです。
もし、それぞれがマイナスを解消しようとするなら、確実に家計のプラスが減ります。

(政治の話)
よく、「政府の借金が問題だ!」と言う人がいますが、政府のマイナスによって他のプラスが成り立ちます。
高い経済成長率が発表された中国ですが、これも奇跡でもなんでもありません。
世界同時不況では輸出は期待できません。
そこで中国政府は「50兆円」規模の景気対策を打ちました。
この50兆円、増税をして持ってきた訳ではありません。
(日本に例えると、1人50万円の増税です。色々と終わります)
通貨発行か国債発行かどちらかは知りませんが、政府のマイナスを増やす事で他のプラスを出したのです。
(中央銀行と政府は普通一体なので、通貨発行も国債発行も負債の増加という意味では同じになります)

「マイナスを減らせばプラスも減り、マイナスを増やせばプラスも増える」
理屈自体はとても単純な国家経済論 その6でした。
「~金は天下の回り物~」
「~日本の稼ぎ~」
「~風が吹けば桶屋が儲かる~」
「~預金は借金?~」
「~日本の資産と負債~」

これらは全て、このエントリーを説明するために必要でした。
まだ見ていない、という方は是非順番に見ていって下さい。
1つ1000文字以内ですからすぐ読み終わりますよ。

まずは考えやすいように、簡単なモデルを作ります。

0.中央銀行、銀行、会社、政府、家計(あなた)、海外の6つを覚えて下さい。
ちなみに最初、誰もがお金を持っていません。

1.中央銀行「日本銀行」が円を100兆円発行しました。
中央銀行の資産「現金100兆円」と負債「現金100兆円」
2.中央銀行は現金を銀行に貸しました。
中央銀行の資産「貸出100兆円」、銀行の資産「現金100兆円」と負債「借金100兆円」

3.会社は銀行からお金を借りました。
銀行の資産「貸出100兆円」、会社の資産「現金100兆円」と負債「借金100兆円」

何もなかった状態から、国内資産の合計が300兆円、負債の合計が300兆円となりました。
(この後の『』内は飛ばして結構です)
『中央銀行は銀行や政府にお金を貸して
銀行は会社や家計、政府や海外にお金を貸して利息をもらい、家計に給料を支払い
会社は家計や政府、海外にモノを売ることでお金を手に入れ、家計や政府、海外に給料や税金、材料の代金という形でお金を出し
家計は給料を手にして物を買い預金したり税金を出し
政府は税金や国債(借金)を財源に予算を実行し
海外は日本国内に物を売ったり買ったり、お金を借りたり貸したり』
色々としていった結果、「~日本の資産と負債~」のような状態になりました。

ここで考えてみて下さい。
「誰か」が借金をして全額使いました。
「~風が吹けば桶屋が儲かる~」ので、国内で使われる限り、国内からお金は絶対に消えません。
この時、「誰か」の負債(純負債)が増え、代わりに「他の誰か」の資産(純資産)が増えます。
もし、誰も彼も負債(純負債)を増やさないなら資産(純資産)は絶対に増えません。
負債が増えずに資産が増えたならば、それは「誰か」の資産を取ってきただけです。
経常収支の黒字もそれは外国の赤字によるものです。

「誰かのプラスは誰かのマイナスによってのみ成り立つ」
非情な国家経済論 その5でした。
明日は「裏」を考えます。
<リザレクション
ふっか~~~~つ!
睡眠は大切です。

今日は日本の資産と負債についてです。
なお、今から使用するデータは日本銀行ホームページ内の統計→資金循環→2009年7~9月期速報(2009年12月17日公開)を参照しています。

単位は兆円、では早速

政府の資産は462.6、政府の負債は980.2。
純資産は-517.6。

金融機関の資産は2718.6、金融機関の負債は2719.7。
純資産は-1.1。

非金融法人企業の資産は799.9、非金融法人企業の負債は1130.7。
純資産は-330.8。

家計の資産は1439.5、家計の負債は374.0。
純資産は1065.5。

民間非営利団体の資産は55.1、民間非営利団体の負債は19.1。
純資産は36.0。

日本国内の資産合計は5475.7、負債合計は5223.7。
純資産合計は252.0となります。

用語解説
「純資産」はそのまま資産-負債の値です。
「政府」には中央政府の他に都道府県や市町村も含まれます。
「非金融法人企業」とは銀行以外の普通の会社の事です。

さて、「~誰かの資産は誰かの負債~」では「資産と負債は等価である」と書きましたが、国内の純資産は+250兆円とプラスです。
自然にお金は生まれない以上、この純資産は誰の純負債でしょうか?
ここで、もう1つのデータを。

対外資産は548.4、対外負債は300.8。
対外純資産は247.6。

対外資産とは日本の諸外国に対する資産、つまり諸外国の「日本に対する」「負債」であり、対外負債とは逆に諸外国の「日本に対する」「資産」です。
日本国内の純資産に外国の(日本に対する)純負債を足すと、日本の国家全体の資産と負債が等価になります。
外国のマイナスによって日本(国内)はプラスになるのです。

今回は単なる数字の羅列で、これだけでは特に意味がありません。
次回、「~負債によって資産が増える~」に続く事で、データでしかなかった数字に意味を持たせます。