- 時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)/R・F・ヤング他
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時間SFを集めたアンソロジー。
聞いたこともない作者さんの作品などもあり、なかなかに興味深い一冊となっております。が。
しかしなんだなー、「ロマンティック時間SF傑作選」という副題にあるように、とりあえず恋愛がらみの作品を集めてはいるのですが、これが実際にロマンティックかというと、どうよ? という気がします。
うーん。編者の方があとがきで「一般読者が求めるのは個人的な人生のやり直し」みたいなことを書いていて、確かに一理あるのですが、どちらかというと日本人的には、いえわたくし個人としては、アレですね。
「幸せな結末」よりも、タイムパラドックスによる「やり直せそうでいてやり直せない」「報われない切なさ」を求めている部分があるのかもなー、という気がいたします。
さて、せっかくですので、それぞれの作品にひとこと感想を。
「チャリティのことづて」ウィリアム・M・リー
少年が時間を越えて過去の少女と交信するタイプの時間SF。
おおー、素朴な恋愛ものですが、これはのちの数々の作品の原型っぽいお話ですね。ラストの「時をこえてのこされたメッセージ」といい、危機にさらされる少女を助けようとする展開といい。
なんか眉村卓のコドモ向けSFでそーゆーの読んだ記憶がある(あれは未来の少女を助けられないお話でしたが~)。
しかし現代の読者としての視線で見ると、コレもうちょっと伏線があればなーラストのメッセージ発見が生きてくるのになーなどと思ってしまいますねゴニョゴニョ。
「むかしをいまに」デーモン・ナイト
こ、これは……時間SFというのかどうか!
時間の流れ方の逆転した世界を描いた作品で、死んだところから始まって、どんどんどんどん若返っていく過程を描いているわけですが、最初読んでてワケワカンネエわけですよ。主人公だけが若返っていく作品ならば知っていますが、そーゆーのでなくごくあたりまえの現象として原因と結果が逆なわけで、「じゃ、じゃあ最後の一行から遡って前に読んでいけばいいのでは?!」と思いついてやってみましたが因果関係はわかるものの接続詞がちがうので読みにくいわー(←頭が悪いだけなのでは)。
非常に実験的な作品で、このムチャクチャな流れを成立させているところは秀逸ですが、物語として面白いかどうかはなー、出オチってやつだよねコレ、という作品でした。
「台詞指導」ジャック・フィニィ
役者たちが映画の撮影のために過去の扮装をして紛れ込んだのは、本当の過去の世界で――そこで一目ぼれされた女優は? というお話。
時間SFというよりも、人生の教訓のようなお話ですね。この過去の奇跡の邂逅はすっかり忘れ去られていたわけで、「愛というのはこわれやすく待ってはくれないもの」と知って、ヒロインがちょっぴり大人になるという、いいお話。
いいお話ですが、ロマンティックではないよなコレも……。
「かえりみれば」ウィルマー・H・シラス
現代の記憶を持ったまま、少女時代の体へと戻ってしまったヒロインは……? というお話。
ハラハラする冒険ですが、結末が弱いのと、あとこれもロマンティックでは全然ないよなー、恋愛からんでないしなー。
「時のいたみ」バート・K・ファイラー
過去へ戻ってきた夫の目的とは……?
老いた体で過去の若い自分と入れ替わる(同時に存在するわけではなく)、という珍しい設定のお話。なんかよく考えるとスッキリしないなこの設定は。ある朝目覚めると、すんげー老けてるという、ある種の恐怖SFではありますが。
ラストもほろにがい結末で、「ああー、あるよねー」とは思いますが、これがロマンティックかとゆーとそうではないだろ(こればっか言ってる気が)という気がします。
「時が新しかったころ」ロバート・F・ヤング
タイムマシンが実用化された時代。中生代の調査のために過去へ訪れた主人公は、なんと火星人の子供たちに出会う――というお話。
いや、これは可愛らしいほのぼのハッピー・エンドのロマンティック時間SF恋愛モノではないですか(5作目にしてやっと!)。
「時の娘」チャールズ・L・ハーネス
未来を予言して生計をたてている母親が大嫌いな主人公、その理由は「母は自分を愛していない」ところにあるのだが――というお話。
さすがの表題作、これが読み手の私としても、いちばん印象的な物語でした。真実の残酷さといい、変えられない過去といい、
「ママ、最後の予言を聞かせて!」
「おまえは彼を止められなかったわ」
というのはすんごいいい台詞ですねえ。ロマンティックというような甘さはないのですが、いちばん時間SFらしいお話でした。
「出会いのとき巡りきて」C・L・ムーア
数々の冒険をやりつくした男は刺激を求めて過去へ旅立つのだが――というお話。
この、「冒険に飽きた男」と、そのあとの「どの時代でも同じ女性と巡りあう」という展開とがいまひとつしっくりなじまないとゆーか意味がわからんので、最後の分からなさが余計に「で?」なカンジになってしまいますね……。
「インキーに詫びる」ロバート・M・グリーン・ジュニア
仲のよい少女の母親の運転する車に、可愛がっている犬をひき殺された少年は――
どれが過去で現代で未来かというより、あらゆる時代の「自分たち」が並列して存在していて……というタイプのお話。えー、過去の自分を励ましたりするところがイイお話なのかもしれませんが、ちょっと技巧的すぎて物語に入り込みにくいのです。
分かるけど意味は分かるけどさー、でもなんでそんな分かりにくい描き方?? みたいな~。
以上です。
いろいろなタイプの作品がそろっていて、たいへん興味深く読みましたが、ロマンティック時間SFとしては、うううーん該当するのは2編くらいかなーという印象でございました。