水の中。 -6ページ目

水の中。

海外小説のレビューと、創作を。

コヴァッチの故郷ハーランズ・ワールド。
ファースト・ファミリーであるハーラン一族が牛耳るこの植民星で、新啓示派の僧を殺し続けるコヴァッチがいた。
ある夜、コヴァッチは酒場でシルヴィという謎の女性を助け、成り行きまかせに賞金稼ぎのデコムの世界へと飛び込んでいくのだったが――



ウォークン・フュアリーズ 上―目覚めた怒り/リチャード・モーガン
¥987
Amazon.co.jp


ウォークン・フュアリーズ 下―目覚めた怒り/リチャード・モーガン
¥987
Amazon.co.jp



★感想のかなりの部分がネタバレ! となっておりますので、結末を知りたくない未読の方はご注意を!!
ちなみにシリーズ一作目の感想は
こちら 。二作目の感想はこちら となっております。







う、うーん。


本作は、このシリーズ中もっともSFらしい広がりのある物語であったと思われます。が。
「タケシ・コヴァッチ主演のハードボイルド」という読み方で言えば、なんだかなー、モヤモヤしたまま読了したような。
私がここでハードボイルド論などを論じるのはお門違いであり、またそのつもりもないのですが、えーと、


●過去に大きな傷と悲しみを抱え
●この世の当たりまえな幸せからははみ出しちゃっている
●タフな主人公が
●なんだかんだ言いつつ市井のひとびとに手を貸してやる


みたいな! ざっくり言えばそーゆー物語であると思って読んでいた本シリーズがですよ。



●過去に大きな傷と悲しみを抱え(これはまあよかろう。イネニンでのこととかサラのこととかですよね)
●この世の当たり前な幸せからはみ出しちゃっている(これもいいか。元エンヴォイはまともな職につけないそうですよ!)
●タフな主人公が(これも合ってる。しかし回を重ねるにつれて実態がアヤしくなる「エンヴォイの特殊技能が……」という決まり文句。だいたい今回役にたってるのはエイシュンドウ製スリーヴのほうじゃないだろうか……)
●なんだかんだ言いつつ市井のひとびとに手を貸してやる(ここだ! ここが違うわ! 自分からトラブルを巻き起こしーの、手を貸してくれと頼んだクウェリストにまでケンカ売りーの、盗んだバイクで走り出しかねない中学生だわ!!)


……という物語であったわけです。
今回、過去のコヴァッチのファイルを利用した「過去の自分」、ダブルスリーヴ(この世界では二重スリーヴは重大な犯罪とのこと)された「もうひとりの若いコヴァッチ」が主人公を追いかけてくるのですが……
これはかなり面白い設定であり、実際にコヴァッチの「若い自分」への心の動きなどもとても面白く、この二人の「自分自身対決」が真の山場であったりするのですが……
この若いコヴァッチ、自分の能力に自信満々で、未来の自分の姿を情けなく思っているという、まあ確かに鼻もちならない若者ではありますよ。
しかし、この若者の罵り、言ってみれば過去からの告発に対して、我らがコヴァッチが何を言うかというと、

「そんならお前なら俺よりマシな人生おくれるものか、ためしにやってみろっつーの!!」
と壮絶な逆ギレ。
そう、残念なコヴァッチ(大)が、残念予備軍のコヴァッチ(小)に逆ギレでございますよ。

うーん……。



前作「ブロークン・エンジェル」 でも言われたように、コヴァッチとは「信じないことにこだわっている」人物であると思います。
「信じない」「信じない」と唾を吐き続けるのは、逆に言えばとても潔癖な人間であって、「心から信じられるものがあれば」むしろ信じたいという飢えた心情の吐露ではないかと。
ただなー、このへんが本作ではあまり肯定的に書かれていないというか、「すごい荒れてるなー」としか読み取れず、悪態ばかりつく、荒みまくったコヴァッチに共感ができないのです。
元からおとなしい善人でないことは明らかなのですが、それにしても今回のこれはひどい。



このすさみっぷりの直接的な原因となったのは「元恋人」であるサラの死であることが中盤になってやっと語られるわけなのですが、どうもこれにも納得がいかない。
サラがコヴァッチを捨てて他の男と結婚し、子供をもうけたことはさておき(いや……この時点でかなりコヴァッチにとって他人だと思うけど、そこらへんは個人差を汲みましょう)、サラが真の死(いわゆる再スリーヴ不可能なリアル・デスってやつですね)を迎えたのは、悲しいことですが彼女の選択した人生の結果であると思うのです。
サラはコヴァッチに助けを求めたわけではないし、コヴァッチに何一つ責任はない。



少なくとも、「サラを助けようとしなかった村人全員を皆殺し」にするような出来事ではないはずなのです。
さらにはこれに関わる宗教関係者を狩り続けて、回収したスタックにまでとんでもない仕打ちをするわけで。



復讐を続けて、いったいどうしたいのか……。



そもそもですね、それは「恋人を失った悲しみ」ではなくて、「つもりつもった数世紀分の厭世観のはけぐち」ではないのかと、そう思われてならないのです。
このあたりが非常にモヤモヤしており、エピソードを通してこのコヴァッチの問題が解決されるわけではなく、エピローグの独白にのみ「なんかちょっとスッキリしちゃった。復讐やめた! 未来は少しだけ明るいかも☆」(もちろん意訳)みたいに書かれてもさー、納得いかないと言いますか、「だったら今までの不快感をどうしてくれるんだよ!!」という気持になってしまうのですよね。



そしてですね、さすがシリーズ完結篇! このような物語であった本作の最後の一行に、なんと「信じている」みたいな言葉が出てくるのです。「信じている」。あのコヴァッチが。
ここは今までの「信じない」というコヴァッチとの対比で、ちょっと感動してしんみりする場面のはずではないかと思うのですが、それまでがそれまでであるだけに、読み手の脳としてはこの変化を受け入れられず、
「ええー、今さら急にそんなこと言われても、こっちが信じられないっつーの!」
という不信感を植え付けられました。皮肉な話です。
うーん、これがこの三部作の完結編なのか……。



極東を思わせる世界観といい、火星人の遺した軌道上防衛装置エンジェル・ファイアの設定といい、SFとしては充分に面白い物語でありましたが、正直わたしちょっとコヴァッチが嫌いになりました……。






震度5の地震が発生した田木津市で、死者3名の被害が報告された。
同じ小学校の中で、教員1名と児童2名の不可解な死。
これは震災なのか自殺なのか殺人なのか?
謎を解くために青木たち第九のメンバーが「死者の脳を覗く」MRI捜査を試みるが……

秘密(トップ・シークレット) 8 (ジェッツコミックス)/清水 玲子
¥890
Amazon.co.jp


あのー、この感想を書いたものかどうか悩んでいたのですが……。
読後しばらく経過した現在では、なんつーか正直なところですね、

事件のことぜんぜん覚えてない……!!
青木が泣いたことしか覚えてない……!! (ヒイイイイイ)

のですよ。



だってだってだってさあ!



えーと説明させていただきますと、今回明かされたところによりますとですね、第九という組織は全国区になる計画がありまして、青木たちが集められて蒔さんのもとで仕事を学んでいるのはですね、それぞれが各地の所長になるためなのですよ。
「ふーん」と思いませんか、この話。思いますよね。
べつに異動なんて珍しいことではないしー。
評価されての拡大は組織として喜ばしいことでもあるしー。
もしも当事者であったなら「わー、ご栄転じゃん☆」と喜びさえしたかもしれません。まあ、妻帯者で子供がいたりしたら、単身かなーちょっと悩むかも。恋人がいたらケッコンするか別れるか決めなきゃなー、くらいの話ですよ。



でも青木のやつ泣いてやんの!!! ←やつって……

何故に泣くかといえば、蒔さんと仕事したいからだってよ。
いやちょっとニュアンス違うなー、ええと。
蒔さんがどこでどーゆー人生歩んでようが構わないんだそうですよ青木は。
ただ、朝起きて、第九に来て、そこに蒔さんがいてくれさえすれば。
おんなじモニター見て、おんなじ目的に向かっていられさえすれば、それでいいのだそうですよ。



……ちょっと待ってください。
あのー青木が知らない子になっちゃったみたいで、わたくしちょう困惑してるんですけども。
それってさ、私がそういうこと思うとしたらさ、それは
「相手に物凄くキョーレツに憧れて崇拝しててなおかつ愛していて」
「だけど絶対に思いが叶うことがない相手で」
「だからせめてココ(仕事とか)だけは奪わないでくれ!」
という、スーパー片思いをしている場合だけですよ。



わ、わかんない……青木のことが分からない……。

違う読み方が出来ないものかと考えてみましたが、わたくしの常識の範囲ではムリでした。



まあ、実際のところ青木が泣こうがどうしようが、今後もホモ展開(なにその身もフタもない表現……)には行かないと思われますし、作者さんが意図するところもそうではないという気がします。
えー、つまりこのエピソードで言いたいところは「蒔さんて人はこんなにも青木にとって特別なんだ」くらいのことではないかと思われます。やりすぎだけど。読み取りにくいけど。 (文句か)



あまりの衝撃に、あれほどインパクトの強い第九の新人(検事あがりのいじめられっ子山本さん)のことさえ吹き飛んでしまいましたよ。おそるべし青木の涙……!


(追記)

念の為、8巻を読み直してみようと思って(そゆことは書く前にすべきなんでは?)開いてみたところ、なんと上記の「青木が泣いた」のは本編が始まる前の「特別編」での出来事でした。

おそるべし青木の(略)



追って来たのはユルールの兄・ハラバル――シュトヘルが仲間の仇と憎悪する「虎の男」。
ところが戦いの果てにシュトヘルの口から出たものは、浅ましいまでの命乞いであった。
「殺さないでくれ」の言葉の先にあるものは――?


シュトヘル 3 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)/伊藤 悠
¥620
Amazon.co.jp



いやー、圧巻の演出ですね、これはスゴイ。


上のあらすじ部分のシュトヘルVSハラバル兄の対決場面など、たとえ同じセリフまわしであったとしても、ああいった流れで見せることはなかなか出来ることではなくて、いやホントに、事情を知っている読者のくせに私としたことが意表をつかれてしまったじゃないですか! うわー! 私が兄でも思いとどまってしまうわアレは反則だわ!!←ほめてます

まあ、兄がその場で思いとどまったとしても、結局のところ処刑されるしかないシュトヘルなのですが――



しかし、皆さまお忘れかもしれませんが(私もちょっと忘れかけてた……)現代っ子・須藤くん。
彼がここで登場です。
なんだ意外に短かったなー、シュトヘルとユルール坊ちゃまの交流って……。



おそらく、「シュトヘルの無念さが時を超えて、生まれ変わり(?)の現代人・須藤を呼び寄せた」のではないかと思われますが、うううーん。
須藤が悪いわけじゃないけどさー、シュトヘルという獣のような女性があまりにも魅力的であったので、

「えー、須藤かよー。シュトヘルどこいっちゃったんだよー」

と思ってしまいます。ユルール坊ちゃまもガッカリしてますが、私もガッカリです。
いまだ物語は導入部分であるので、現代人・須藤でないと果たせない役割があるのだろうとは思いますが……



思いますが……



やっぱりシュトヘルのほうがいいー!!(駄々こねる)



……というわけで、須藤にはユルール坊ちゃまと読者の心をつかむ! というミッションが課せられたもようです。
まて次巻!!




上司・田渕の元恋人である雪乃と、片腕であるニコが付き合っている……?!
意外すぎる事実に、田渕を心配する絹恵だが――

Real Clothes 10 (クイーンズコミックス)/槇村 さとる
¥440
Amazon.co.jp


なんでまたそんなムリヤリなエピソードを……? と不思議に思っていたら、
「ケッコンしまーす」「イタリア行きまーす」と目にもとまらぬスピードでリストラされた登場人物たち(なんという力ワザ!! 素人がみてもすげえ展開上の都合)。
というわけで、チーム田渕は新人二名を迎えて新体制に! そして絹ちゃんと田渕にも恋愛フラグが立ちそうな!


……いえ、ご都合主義とかいーんですよ別に。
読者の私から見てもニコの存在などはずーっとなんとなくイラネ感がありましたし、たださー、雪乃さんまでまとめて整理しなくってもさあ……。
いまさら絹ちゃんが田渕と恋愛って、なんかなー今までも恋愛へ発展しそうな分岐は二回くらいあった気がするのですが(初対面時とかパリで倒れたときとか)、なんとなく選択されなかった方向性だったのに、再度これを持ち出されてもなー、ときめかないなー……。



もうすでに私のなかで田渕というキャラクターには「愛すべきボス」という札が貼られてしまった後であるわけで、ついでに言えば私のこれは主人公目線の感想なわけで、すっごい今さら感があるのですよねえ。



いまさら身内にときめかないよなー……



私という人間が「職場で恋愛なんて気持ち悪いわー」という思想の持主であるからかもしれませんが、これが正直な感想です。

誰かいないのか田渕の他に!! 

いやいないか。いたとしても主人公にインパクトを与えられる登場人物というと美姫サマくらいなもので、美姫サマと恋愛とか言い出したらさすがに違う話になっちゃうしなあ……。


仕事方面のエピソードでは、相変わらずやっていることが文化祭だったり(ああいう達成感じゃないだろ必要なのは)、絹ちゃんが中学校のクラス委員みたいなこと言って部下をいさめたり(いないとこで○○さんの話するのよそう! とか)、なんつーかその、アレレ感でいっぱいではあるのですが。


美姫さま率いる海外ファストファッションH&Hとの競合で「日本の女子にとっての服とは?」みたいなテーマが語られそうで、そのあたりがとても楽しみです。


他人の夢に侵入し、アイデアを盗み出す――「エクストラクト(抜き取り)」のエキスパートであるコブが持ちかけられたのは、抜き取りよりも遥かに難易度の高い「インセプション(植え付け)」。
過去の犯罪歴を消し、子供の待つ家に帰るために、コブは不可能なミッションに飛び込んで行く。
夢のまた夢の更なる夢を作り出して張り巡らせる深層意識の罠、本人のものではないアイデアを、そうと気づかせずに植え付けることが出来るのか?



Inception/Various Artists
¥1,301
Amazon.co.jp



「ダークナイト」のクリスファー・ノーラン監督作品である本作。
なんか知らんのですが、宣伝ではまるで「サイコダイブ(←なつかしいと思う夢枕獏世代……)して他人のアイデアを盗んじゃうわよ! ドリーム版☆キャッツアイよ!」的な印象を受けるのですが、そーゆー物語ではなくて、


大企業の後継者に独占をやめさせ、会社を分割させるにはどうしたら?


とゆー問題を解決すべく、当のジュニアの頭に入り込んで考え方を変えさせるというお話です。

しかし今こうして書いてみると「なんか他にも方法があるんじゃないか?」とゆー気がしないでもないですが、ミッションとコブ個人の悔恨(妻との過去)がリンクする、なかなかよい仕立ての物語。


ただ細部がちょっと雑というか説明不足で、「植えつける対象者をだます為のウソ」と「コブが用意したシナリオ」との区別がつきにくく、夢から夢へ降りていく際の禁則事項がなー、もうちょっと親切に説明しておかないと、登場人物がなんで時間に追われているんだか間に合わなければどうなるのやら分からんではないですか。
そして終わり方がなんであーゆーホラー映画的手法になるのかが分からん。

ああいうのよく見ますけど、夢から夢へという偽りばかりの本作にふさわしいラストは、スッキリハッキリした真実のハッピーエンドではないでしょうか。



というようなこまかい不満はあるにせよ、とても面白い要素のある物語(コブが忘れたい過去と対峙しなくてはならなくなる展開がいい。そういうの大好きです。)でした。
しかし内容でなく演出が複雑な本作、やはり「こーゆー物語だから、ここんとこはこういうことを言いたいんだろな」という、脳内補完に慣れていない観客には分かりにくいのかもしれません。



私の連れであったダンナにしてからが、
「面白かったけどさー、最初と最後のほうに出てくる、あのおじいさん誰?」
とか言うので、心底ビックリしました。


(そんな手前の時点で分かってないのに、いったい何を楽しめたのかむしろ謎だわ……)


あ、渡辺謙サマのこと書くの忘れていましたが、この映画に関して言えばいつもどおりのカッコイイ存在感、いつもどおりの謙サマであって、主演であるディカプリオを含めて演技が見どころになるよーな内容ではなかったですねえ……。





水の中。-56

ところで鼻炎のお話ですが、
わたくしが行った耳鼻科の若いセンセーがヤル気満々な医師で、しっかり診ていただいたのはありがたいのですが、


「鼻汁(すみませんお食事中の方……)が透明で粘性がまったくない――これはアレルギー性の鼻炎ではないですか? いわゆる花粉症のことですが」


などと言い始めるわけでございます。
花粉症。


「あー、アレルギーとかは無いです。何年か前にパッチテスト受けてますから」
慣れない鼻づまりに苦しみながら、気だるく答える私に、ここで意外にもセンセーが食い下がります。
「テスト? それは何年前のことですか?!」
仕方がないので、私も無い頭をひねってみたり。
「えー、あー……たしか5年くらい前(←おそらく違う)? かな?」
「そのあと環境の変化があったのではないですか? 仕事内容が変わったり勤務地が変わったり」
「あーまあ、ビルからビルへ移るくらいはしてますけど、とくに影響はないかと……」
「……そうですか、分かりました」



とか言いやがっ……いえ言っていたくせに、センセーの書いた処方箋にはアレルギーの薬が二種類も入っているじゃねえすかキーッ違うって言ってるのに!!! きちんと検査してもらえばヨカッタ!!

いえ、医師の主張は理解できなくもないのです。
鼻汁がにごった色になるのはさー、どうも侵入した菌に対して白血球などが頑張った残骸であるらしいのですよね。
わたくしにその症状が出ない理由を自分なりに考えてみたのですが、そういえば半年くらい前の健康診断で「白血球数すげー減少! 再検査!」とゆー結果が出ていたなーという記憶がありまして。

その後いろいろあったせいで、その再検査とゆーのをすっぽかしてしまったわけなのです。



つまりあれだ、要するにわたくしの白血球さんは足りてないんじゃないすか。細菌と戦ってくれるほど存在してないんじゃないすか。だから鼻汁もサラッサラなんじゃーないっすか。

というのが分かっていたわけですが、ここでそんな不健康な主張をしてみるのもいかがなものかなーと思われたので、だまってクスリをもらっておきました。



今現在は気候も穏やかにあたたかくなり、花粉がとびはじめている様子ですが(早くもダンナが苦しんでいます)、やはり私自身には春のそよかぜ~♪くらいにしか感じられないので、何らかのアレルギーである可能性は低いのではないかなーと思うしだいです。


というより、いいかげん再検査を受けに行けとゆー話なのですが。






水の中。-62


ここ一週間ほど鼻の奥のほうが腫れているカンジで異常な頭痛がするので、耳鼻科へ行ってみたところ、
「あー、あなたは右の鼻腔がすっごく狭い構造になっちゃってる(奥のほうの骨が曲がっている)から、少し腫れただけで鼻がふさがって、それで副鼻腔炎を起こしちゃうんだねー、これは額のあたりが痛いだろうねー」
と言われました。
自分の右鼻の奥がそんなことになっていたとは、めったに風邪をひかない人生をおくってきたので、まったく気がつきませんでしたよ……!


そんな初心者なわたくし、薬剤師さんに

「点鼻薬の使い方はおわかりですよね?」

と確認されて、
「えっ、知りません! 教えてください!」

と、ついつい前のめりになってしまいました。必死すぎ。



意外とものを知らない自分に驚いた昼下がり……(耳鼻科に朝からあんなに人がくるなんて知らなかったわ……診療開始10分で30人待ちって何事……?)。

オレゴン州ポートランドで双子の姉妹が襲われ、一人が殺された。直前に彼女たちの前に現れた老人が残したという紙きれには「実際には起きなかった悲惨な殺人事件」が記事のように綴られていた。
その文面によると、姉妹は二人とも殺され、母親は自殺したというのだ。

時限捜査上 (創元推理文庫)/ジェイムズ・F・デイヴィッド
¥798
Amazon.co.jp


時限捜査下 (創元推理文庫)/ジェイムズ・F・デイヴィッド
¥798
Amazon.co.jp



西海岸を震撼させる連続幼児殺人犯「クレイドル・ラバー」、その邪魔をする(?)青い肌の老人、事件を追うのは娘を事故で亡くした元敏腕刑事、というなかなかスゴイ設定の本作。


先まわりして現場に現れては殺人を阻止し、そして「こういう事件が起きるはずであった」という記事を残して去っていく謎の老人……そうです、お気づきかと思われますが、これは時間SFでございます。


出版社も翻訳家さんとしても「殺人事件捜査+SF風味のクロスジャンルもの」という認識であるようですが、個人的には「時間こえちゃったらもうSF以外は名乗れないんじゃね?」という気がいたします。
まあ、読み手としてはジャンルなどはどうでもいいわけですが。



元敏腕刑事である主人公はさておき、脇役たちがとても魅力的で(たいして物語にはからんでこない同僚マックとか、大食漢のシェリーとか~)、時間SFのムリヤリ感は多少あるものの、かなり読ませます。娘を交通事故で亡くし、過去を変えたいと願う主人公の葛藤にもうまく決着をつけています。ラストシーンも爽やかです。



でもさ。



だけどさー、と思うのです。
あのー、この主人公は時間旅行者と「ある重大な約束」をするのですよ。しかしですね、それについては作中では「残念なことに、彼らの物語の最終章は、この先まだ三十年ほどは書かれることはないだろう。」と終わってしまっているわけです。


待て。残念なことにって、残念なのはこっちだよ……。


作者さんは「この事件の本当の結末」については「作中では書かない」という選択をしたようですが、ええええーそんなんありか?
だいたい三十年後にこの刑事ちゃんと生きてるかどうかも分からないじゃん。
約束なんか果たせるの?
本当に果たせるの?



と、非常に心配になってしまい、ラストの主人公の幸せそーな様子にも「アンタちゃんと約束が果たせるように手配してるの? いざって時どうすんの?」とモヤモヤしてしまいました。
だって明日のことだって分からないのに、三十年後なんてもっと不確定ではありませんか。
うーん、読者としましては、この約束が(べつに主人公がダメでもその息子でもなんでもいいのですが)きっちり果たされるという、主人公の誠意あるところを読みたかった。
アレでは「ただの安請け合い」だよなあ……。


結果的にラスト間際の異変(未来を変えるせいで嵐が襲ってくるという屁理屈……)のリアリティの無さしか記憶に残らないという、ちょっと残念な物語でございました。





「水がなければ牛乳を飲めばいいのに」

「牛がなければ羊を食べればいいんだわ」

わが国の食料自給率の低下を嘆く荒川弘が放つ、スーパー農家エッセイ!

百姓貴族 (WINGS COMICS)/荒川 弘
¥714
Amazon.co.jp


作者・荒川さんはなんと父方母方ともに北海道開拓農民の血筋! という農業界のサラブレッド。いえプリンセス。ご自身も漫画家デビュー以前は、ずーっと農業に従事していたのだそうで。


いやいや、なんかもういろいろスゴイ。


私のまわりにいる友達などは、せいぜいが大学から畜産やったりしてるよーな後天的(?)農民なので、なんだかやはり純度が違う気が(例によって牛のことはすごく語られるけど「坪じゃ分からんからヘクタール言え!」なんて怒らないしな……)。


そしてすごいですね農業高校。軍隊か?!と思うほどのハード・スケジュール。
しかも学校が休みになると家の仕事が待っているなんて!!

いつ遊べば……いつグレればいいの……?



まあ生き物相手に休むヒマなんか無いわけですよねハア……。
作者さんは、こんなんでよく漫画を描く時間をつくっていたものだよなーと、感心いたしました。



ちょっと話はそれますが、以前ウェブで読んだ「西原理恵子×勝間和代対談」で、
「なんか人間関係で悩んだりしているお母さんがいるけれど、つまりそれは ヒ マ だ か ら なんじゃーないの」
「子供三人いるとクヨクヨしている時間も無いわよねえ」 (うろ覚えなのですみません超意訳)


というような会話がなされていたのですが、アレと同じようなことでしょうか。
私などは「趣味★悩むコト」みたいな、都会の軟弱もやしっ子育ちなので、こーゆータフさには憧れますねえ……。


まああれだ、生きる目的を見失ってしまったひとなどは、とりあえずなにやってるかわかんなくなるまで働けばいいんだな。それでわりきらなければやっていけない厳しさなどを体に叩き込めばいいんだよな。クヨクヨとやくたいもないことで悩んでいられるなんて贅沢なことなんだよなあ……。



うーむ。つねに忙しぶってる自分を反省させられた一冊でした。
私実はわりとヒマなんじゃーないの??? と。





それでは2009年のレビュー総括……と行きたいところですが、
なにぶんここは昨年11月より停止中でしたので、「2009年読んで面白かった自分ランキング」とさせていただきます。

ではでは、第1位にかがやいたのは!!




1位「サンドマン・スリムと天使の街」リチャード・キャドリー(川野靖子訳)

スタークは10年ぶりに地獄よりロスへと舞い戻ってきた。
ただひとつの目的は、自分を陥れ、恋人を殺した連中を抹殺すること――

サンドマン・スリムと天使の街 (ハヤカワ文庫FT)/リチャード・キャドリー
¥882
Amazon.co.jp

と書くとフツーの復讐譚ふうですが、このあらすじの「地獄」が、なんと比喩でもなんでもない「正真正銘の地獄」のことだからスゴイ。魔術師と天使と悪魔と魔物と人間とが入り乱れるアーバン・ファンタジー。
こういう世界観の物語は、漫画などではよく見かけますが、小説でここまで成功している例は初めて見ました。あのー、なんていうかこういうものって、中学生が書いたドリーム小説アイタタ風味になりがちではないですか。素材が素材だし。しかし本作はハードボイルドとしてきっちり成功していて、大変な傑作でした。いや本当にものすごく面白かった。


私が一番感心したのは、スタークが単に「気の利いたことを言いたいだけのキャラクター」ではなく、きちんと自分の頭でものを考えることができる人物であるところでしょうか。この主人公は危険を避けるとゆーことがまったく出来ない我慢値(←最近つくってみたこらえ性をはかる単位)マイナス200くらいの乱暴者で、うっかりすると血がでるまで壁にアタマを打ちつけ続けたりしそーな自滅系の自我の持ち主なのですが、そのくせ真実を見抜く目を持っていて、悪魔の脅迫にも天使の説教にも全然まったくだまされない。
その神をも畏れぬ(比喩でなく)反骨精神には、「さすがは地獄10年の下積み生活……」と思わせるだけの説得力がありましたね。続編も楽しみ
。



2位「フラグメント」ウォーレン・フェイ(漆原敦子訳)

フラグメント超進化生物の島 (ハヤカワ・ノヴェルズ)/ウォーレン・フェイ
¥1,890
Amazon.co.jp

ロストワールド系パニックSF。本作についてはレビュー を書いておりますが、ホントーに面白くて大好きです!
ヘンダース島の生き物たちの挿絵が図鑑ぽく収録されているのですが、これもっとたくさん載せてほしかったなー。
「The Future is Wild」(←数年前にあった未来予想企画モノ図鑑)とか好きな方におススメ。
いえ物語があるぶん、こちらのほうが万人が楽しめるかと思われます。


3位 「静かなる天使の叫び」R.J.エロリー(佐々田雅子訳)

静かなる天使の叫び〈上〉 (集英社文庫)/R.J. エロリー
¥740
Amazon.co.jp
静かなる天使の叫び〈下〉 (集英社文庫)/R.J. エロリー
¥740
Amazon.co.jp

連続殺人犯に翻弄される、孤独な青年の踏んだりけったり半生記。←と書くと身もフタもないけど実際こんなカンジ。
えーとですね、ミステリとしての部分は種も仕掛けもないつーか結局動機も分からなくてアレですが(犯人像は意外なのですけどね……)、ジョージア州の田舎町で育つ主人公ジョセフの貧しい少年期が丁寧に語られていて、これが物語としてとても素晴らしいのですよね。読み手を主人公の人生へと引き込む力量と、決してハッピーエンドでもアンハッピーでもない結末のよさに3位を。


4位「エルサレムから来た悪魔」アリアナ・フランクリン(吉澤康子訳)
子供たちの連続殺人とユダヤ人迫害にゆれるケンブリッジへ、不思議な巡礼が向かっていた。
サレルノの検死医アデリアは、その身分を隠して派遣され、事件の捜査をこころみるが――

エルサレムから来た悪魔 上 (創元推理文庫)/アリアナ・フランクリン
¥882
Amazon.co.jp

エルサレムから来た悪魔 下 (創元推理文庫)/アリアナ・フランクリン

¥882
Amazon.co.jp

十字軍とユダヤ差別とが入り乱れる、12世紀イングランド版・検死官。いろいろな意味でスゴイ物語(主人公アデリアは、恋をとるか仕事をとるかで悩んじゃったりするのですよスゲー……)で、こんな奇抜な設定だとゆーのにすごく分かりやすいお話です。これは私自身の好みをまったく抜きにして評価するのなら、本来は1位とすべき作品かと思われます。それくらい完成度の高い物語ですが、私が個人的にいちばん好きなのは、アデリアが仲間の死をきっかけに恋におちる後半ですね。それまでクールというより頑なであったアデリアが、恋をすることによって世界がまるで色づくかのように感じていく過程が「うわー!」でした。←その「うわー」を語るのがレビューなんじゃ……


ところで本作はシリーズ化されているようですが、うーん。
この一作できれいに決着がついているためか、それほど続きが読みたいとは思わない不思議……。




以上でございます。
えー、ちょっとばかりハンパな数ですが、この4作が2009年のベスト作品です。
漫画はなー、たくさん面白いものがありましたので省略しますが、まああえて一作を選ぶとしたら……したら……
うーん「ちはやふる」でいいのではないかなー、他におもいつかないですね。