学校からの帰り道、自分そっくりの男の子を見つけて、追いかけた「ぼく」は、夢の世界に閉じ込められてしまう。
次から次へと夢の世界を渡り続けていく「ぼく」が出会う、夢の世界は、夢をみている人物によって、様々な形をしていて――
星新一が描く異色のファンタジー。
- 星新一と言えば、クールな作風で今読んでも色あせない、ショートショートの第一人者。
私も子供時代に随分たくさん読んだものですが、エッセイ以外にこのような著作があるとは、まったく知りませんでした。
本作は、主人公である男の子の、ちょっとふんわりとした(正直なところ、最初はちょっと入りにくい)一人称で語られていくのですが、ひとつめ、ふたつめ、と夢の世界を渡り続けていくうちに、私もすっかり引きこまれてしまいました。
語り口はやわらかいものの、作風は読者の知る星新一そのもの。
不思議なことがいくら起こっても、それは読者を甘やかすための夢ではないのです。
「ぼく」という主人公の、客観的で、とても公平な視線によって、夢に出てくる人々と、その現実の姿が語られていきます。
表紙の可愛らしさに「子供の夏休み向けか?」と思わされるのですが、 - これは、例えば小学生くらいの子供が読んでも、楽しいとは思えない物語なのでは……。
すでに大人となった私が読んでみると、非常に考えさせられるテーマを扱っているな、と感じさせられる佳作ですが、子供のころに読んでいたとしたら、「盛り上がらない話だな~」で終わっていたのかも。
というわけで、星新一のショートショートを読んで育った、大人の方に、オススメします。
巻末の眉村卓の語る「星新一像」も意外なことばかりで、面白い。
……こんな人だったんだなあ、星新一って!
作品に対する自負心や、常識を重んじるくせに腹黒い(……)、というあたり、とても好感を覚えます。
(評価★★★)









