奇妙な男、ジャック・ウィルソン。
服役していた重警備刑務所から出所した彼は、行動を開始する。
捨て子でありネイティブ・アメリカンであり、スタンフォード出の数学の天才である彼は、
何故テロリストのように振舞うのか?
彼が執着する発明家ニコラ・テスラのノートに書かれていたものとは?
- ジョン ケース, 佐藤耕士
- ゴーストダンサー 上 (ランダムハウス講談社 ケ 2-2)
- ジョン ケース, 佐藤耕士
- ゴーストダンサー 下 (ランダムハウス講談社 ケ 2-3)
いやー、大作です!
なんとこの「ジョン・ケース」とは作家夫婦の共著の名義であるらしいのですが(どういう分担なのか謎ですが、両方が作家ということはどちらかが調査係というわけでもなさそうですね……)、
ここ数年の冒険サスペンスジャンルの作品としては、出色の出来と言ってよいのではないでしょうか。
私としても今年ナンバーワンの小説を挙げるのなら、この作品ではないかと思います。
シエラレオネ国境付近のヘリコプター落下事故から始まって、
アフリカのブラッド・ダイヤモンドと兵器の取引に、
ダブリンの弁護士事務所、
オフショア地域であるガーンジー島、
ウクライナのお見合いツアー、
セルビアのテスラ博物館、
そしてSWIFTの所在地であるカルペパー。
これで全てではないのですが、とにかく世界中を駆けずりまわって読者を翻弄し、あれよあれよという間に世界の果てまで連れて行ってしまいます。
豊かなアイディアを物語に盛り込む手腕が素晴らしく、これでもかというエピソード満載で、いやー私自身もちょっと勉強になりましたよ!
(発明機密法ってあんななのか! ツングースカの事件のことも、隕石落下なんだと思っていたけれど、今はその仮説は有力ではないのですね……)
そして敵役である「ジャック・ウィルソン」のキャラクター造形が面白い。
着々と破滅の準備をすすめるウィルソンと、彼を追うバークの両サイドから物語を語っているので、どちらが主役というほどの量的な差はないはずなのですが、やはり「悲劇の天才」であるウィルソンのほうが、圧倒的に存在感がありますね。
こういう「非情な天才」という性格づけをされたキャラクターにしては、決してスーパーマンではない人間として共感が持てるように書かれていて、彼の「眼性偏頭痛もち」という設定はおお上手いなあ、と感心させられました。
惜しむらくは、尻すぼみ――いえ、そうではなくて、
クライマックスから結末へかけてのページが異常に少ない(エピローグも含めてほんの数ページ)ところ。
いきなりパタンと終わってしまうので、びっくりです。
これはすごくもったいないですね~。
ううーん、もったいないというよりも、不思議ですね~。
結末自体が悪いわけではないのですが、何故ここで終わってしまうのでしょう。
バークがどのような結論を出すのか、ウィルソンがどう戦うのか、
ここからが本番ではないですか!
ていうか装置が作動するの見たいし!!(そこか)
うーん……
全体から受けた印象ですが、作者さんは人物の内なる物語、
つまりエピソードを通して登場人物が変化していくという部分については、あまり興味のない人なのかなーという気がします。
だからこそウンチクと事件とで畳み掛けるように物語をすすめていくのかもしれないですね。
まあ、それでも十二分に面白いこの物語、
2007年度ハメット賞ノミネート作品であるそうです。