リレー小説(バスに揺られて) | 蟻来たりでスミマセン(´ェ`*)

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ブログへのご訪問いつもありがとうございます。
この小説は、2012年4月2日に
斑田さとるサンが書いたお話に、
ぼくが続きを書いた事から始まったリレー小説です。
この度6月24日、完結しましたー。
さとるサンからここに掲載する許可も
いただけましたので載せる事にしました。
斑田さとるサン、本当にありがとうございました。
長いような短いようなリレー期間は、ちょっと交換日記も似て
くすぐったい感じでした。
面白かったです~☆

斑田さとるサンのブログ”空白の時間”はこちら~

☆が斑田さとるサン★がSUKEです。それではどうぞ~

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☆ごった返しのバスに揺られながら窓の外をぼんやりと眺めた。
傾き始めた太陽が眩しくて少し目を細める。
流れる景色を前から後ろへ見送っていると急に左肩に何かが当たった。
見ると隣の女の子が俺に寄りかかっていた。
「なっ…」
その目は閉じられていて長いまつげがよく見えた。
どうやら寝ているようだ

そして徐々に人はバスから降りていく。
気が付くと、俺の降りるはずだったバス停は過ぎていた。
相変わらず、俺の肩には女の子の頭がある。
まぁいいや。急ぎの用もないし。
そして俺は終点までバスに揺られていた。

☆「本当にごめんなさい!」
運転手にバスの中から追い出された俺たちは
バス停の前に向かい合って立っていた。
「いや、その…そんなに謝らなくても大丈夫ですよ」
先ほどから何度も頭を下げている彼女にそう言った。
可愛らしい瞳がこちらに向いた。
「でも…」
「それに俺、この辺に来てみたかったんです」

★「私も」そう言うと、彼女は、くすっと笑った。
俺も自然に笑顔になった。
ふと見ると、横に自販機がある。
「喉、渇きませんか?」
「あ、はい。」
「えっと。コーヒーでいいですか?」
「はい。」
よく見ると、誰かに似ている。遠慮がないところもそっくりだ。

☆そう考えながら自販機に小銭を入れて、ボタンを押す。
出てきた缶コーヒーを手渡してから俺は
「もしかして、前にどこかで会ったことある?」と聞いた。
「それって古いナンパですか?」
「えっ!いや、そういうわけじゃ…」
「ふふっ、冗談ですよ。なかなか気づいてくれないからいじわるしちゃったんです」

★「え?やっぱりそうか」
だが俺はまだ彼女が誰なのか、本当に思い出せずにいた。
彼女はコーヒーを飲みながら、そんな俺の顔を見、答えを待っているようだ。
さぁ、私は誰でしょう?そんな感じの、少し意地悪そうな笑顔で。
困った。誰だっけ?・・そんな時だった。
プップー。
車のクラクションが鳴った。

☆「やっと見つけた!こんな所にいたのか」
見ると、精悍な顔つきの男が車から手を振っていた。
一瞬、恋人かと疑ったが彼女の一言で彼が何者なのか分かった。
「お兄ちゃん!」
「ほら、行くよ」
「でも…」
彼女はちらりと俺を見た。
「早くアリサ!」
ありさ…?
「あ。」そして不意に中学時代の記憶が甦った。

初めて会ったのは、中学2年の春だった。
その日は朝から雨で、僕はいつもの自転車ではなく
歩いて学校に向かっていた。
その時、横を自転車で通り過ぎる女の子がいた。
大きなヘッドフォンを付けて。
まるで、その子の周りだけ雨が降っていないみたいだった。
彼女が、僕のクラスの転校生、ありさだった。

☆朝のホームルームの時は驚いた。
なにせ、先ほど見かけたあの女の子が自分のクラスに入って来たのだから。
彼女はすぐにクラスにも馴染んだし、僕と違って友達も大勢できたようだった。
だが一人でその大きなヘッドフォンに耳を傾けている姿も、よく見かけたのだった。
ある日、また朝から雨が降った。

★俺は2階の自分の部屋の窓から外の雨を見ていた。
多分一日中雨だな、
こんな日は、一日家にいようかと考えていた。
すると、外を通る彼女が目に入った。
青い傘をさしていたが、ヘッドフォンをつけている。
咄嗟に俺は自分でも不思議なくらい、
何も考えずに彼女の後をつけていた。
一体どこへ行くんだろう?

☆彼女は慣れた足取りで町を進んでいった。
俺はというと、彼女に置いていかれないように必死に歩みを進めた。
傘をさしているおかげで幸いにも彼女に見つかることはなかった。
それにしても俺は何故こんなにむきになっているのだろう…。
そうこうしている内に、彼女は目的の場所に着いたみたいだった。

★ちょうど雨がやみ、着いた所は海だった。
俺はテトラポットの間から、彼女が何をするのか見ることにした。
すると彼女はポケットから小さな瓶を出し、
そして次に携帯でどこかに電話している。
だが波の音がして、そばに行かないと聞こえなかった。
電話が終わると彼女は瓶を海に向かって思い切り投げた。

☆彼女は投げた先をじっと見つめ、そしてくるりと向きを変えた。
(こっちに来る!)急いで隠れようと慌てていると声をかけられた。
「逃げなくていいよ。気づいてたから」
そして彼女は笑った。
「分かってたら何で…」
「あなたなら良いかなって思ったんだ」
彼女の顔を見るとヘッドフォンはしていなかった。

★「何を投げたの?」
俺は単刀直入に聞いてみた。
彼女は「あれ」と投げた物を指差す。
まだ冷たく白い泡波が立つ海に近寄ると、
俺はぷかぷか浮かぶそれをみつけた。
小さな瓶に紙が入っているみたいに見える。
「紙には何が書いてあるんだ?」
そう聞くと、ふふっと笑うアリサ。
「何だと思う?」

☆「手紙とか?」
ボトルメールの定番といえば違う土地の人に宛てた手紙だろう。
「残念。違うよ」
「じゃあ…」
「名前」
「え?」俺
が次の答えを言う前にアリサが遮った。
「私の“前の”名前が書いてあるの」
「前の?どういうこと?」
「たった今、離婚したんだ」
誰が?とは聞かなかった。
聞く必要がなかった

★「そう・・なのか。」
「うん」
俺はこんな時なんて言ったらいいかわからなかった。
海の上を流れていく瓶を二人でただ見つめて。
「どこへ行くのかな?」
アリサがつぶやく。
それは瓶?
それとも。
ちらりと横のアリサの顔を見た。
いつの間にか目が真っ赤だった。

☆「大丈夫?」
“今”のアリサに呼ばれてハッとする。
「え?」
「もう行かなくちゃ…って言ったんです」
「あ、うん」
「それじゃ、またどこかで会えるといいですね…」
そう言ってゆっくりと背を向けた。
「ねえ!」
そのまま歩いて行こうとしたアリサに声をかけた。
「ヘッドフォンは…もういいの?」

★俺が言うと、アリサは振り向いた。
振り向いたその顔は、
まるで太陽がこぼれ落ちるような笑顔だった。
俺はバス、アリサは車に乗りその場所を後にした。
何もなかったかのようにまた日常は始まり
本文に関係ない物語は消し去られていく。
けれどその物語が本文にならないとは限らないんだ。

☆―『たった今、正式に離婚が成立したわ』
あの日、母は嬉しそうに電話口で言った。
だけど私は怖かった。
転校よりも名前が変わる方が。
(でもあの時に君が居てくれたから私は…)
しがらみを振り払うように“名前”を投げ棄てた。
ヘッドフォンを外してきちんと向き合った。
もう逃げない。そう思ったんだ

<END>

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